犬の気管にビニールを詰めた獣医                                岡森利幸   2008/11/19

                                                                    R1-2008/11/20

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/11/15 社会面

東京地裁は、犬の気管にビニールを詰め、死なせたとして獣医師に115万円の賠償を命じた。裁判長「極めて悪質、言語道断の行為だ」

06年7月、東京都八王子市の女性が、多摩センター動物病院(多摩市)の島吉英伸院長(41)に検査入院を勧められて飼い犬のミニチュアダックスフンドを預けたところ、約3時間後に死んだと連絡を受けた。彼女は病院の説明に納得できず、他の病院に行ったところ、その獣医師による解剖で気管内からビニール袋が見つかった。

島吉院長は別の民事裁判でも、「体内に異物があり手術しないと死ぬ」とうそを言い、ずさんな手術をしたことが認められて、今年5月に国から業務停止3年の処分を受けている。女性の代理人の弁護士は「被害者は200人以上把握している。獣医師免許はく奪を求めたい」と話している。

世の中がすさんでくると、こういう人が増えてくるのだろう。でも、裁判長に「言語道断」と言わしめた悪質さが、すぐに理解できない人がいるかもしれない。獣医が、医療過誤のたぐいで、たかが一匹の犬を死なせたぐらいで、おおげさすぎる、と思う人もいるかもしれない。そのわけは、獣医がなぜ犬を死なせたのだろうと考えると、理解できるだろう。

入院中に『患者』を死なせてしまっては、その飼い主に恨まれるだけであり、治療費も多くは取れないから、得することは何もない。気管にビニールを詰めることに意味があったと考えるべきで、それは、ずばり、犬を弱らせて高額な治療方法を飼い主にふっかけるためだったと考えられるのだ。息も()()えな犬の容態を飼い主に見せて、「ほら、見たとおり、ワンちゃんがだんだん弱ってきている。早く手術しないと死ぬよ」などと、飼い主をおどして、しなくてもいい手術をして治療費を巻き上げようとしたのだろう。

つまり、獣医として、本来、病気や怪我(けが)の治療をするどころか、詐欺的な手法で、動物を弱らせることによって、治療費を多くとることを画策した疑いが強いのだ。それは「犯行」といってもいい行為だ。犬を殺したことより、その手段と目的の方がよほど悪質なのだ。

弁護士によると、この医院で、そんな被害にあった人が200人以上いるというのだから、すさまじい。おそらく、被害者たちが警察に訴えても、めんどくさそうな口調で「人が死んだわけではない」などと言われ、警察にぜんぜん取り合ってもらえなかったので、民事で裁判所に訴えるしかなかったのだろう。警察の動きのにぶさに悔しい思いをこらえながら……。その間、獣医は味をしめて不当な診療を繰り返したから、どんどん被害者が増えていたわけだ。獣医に事情を聞くなど、警察の捜査が少しでも入れば、それ以降は、その獣医は『自重する』だろうから、被害の拡大が防げたはずだ。(あるいは、警察としては、『犯人が自重』してしまっては検挙しにくくなるから、泳がせていたのだろう。なにしろ彼らは検挙率の数値にこだわっているのだ。――皮肉を込めて)

彼としては犬を弱らせる目的のために気管にビニールを詰めたのに、おそらく手加減を誤って、殺してしまったのだから、島吉院長の、獣医としての技量も知れたものだろう。院長として医院の経営のためにも金がほしかったのだろうが、そんなあざとい方策を考えるのでなく、獣医としての腕を磨くのが本道だろう。そうすれば、評判が高まり、遠方からの客も集まるから、お金は、黙っていても、入ってくるものなのだ。

 

 

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