ハマスのロケット弾攻撃                                    岡森利幸   2009/2/15

                                                                    R2-2009/3/28

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/9/24 国際

イランの反体制派組織・イラン国民抵抗評議会は、「イラン現政権は、長距離弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の開発を進めている」と指摘。さらに北朝鮮の専門家が支援していると明らかにした。

毎日新聞夕刊2008/11/19 総合

閉ざされた日常、パレスチナ自治区ガザ。

イチゴが境界封鎖のため輸出が一切できなくなった。漁業も大打撃を受けている。「オスロ合意」ではガザの漁船は37キロ沖合いまで出漁できるが、実際はイスラエル海軍が10キロ前後までしか認めない。ハマスが勢力を誇るガザへの圧力の一環だ。

毎日新聞朝刊2008/12/28 一面/国際

12/27イスラエル軍、ガザ全域を空爆、155人死亡。

ハマスは反撃、直ちに報復を宣言。

毎日新聞朝刊2008/12/29 総合・クローズアップ

ガザ市周辺からロケット弾が45秒ほどで着弾、射程30キロ。

毎日新聞朝刊2009/1/5 一面

イスラエル軍がガザに地上侵攻。軍事作戦は新たな段階に入った。

イスラエルは半年前からガザ攻撃の準備に着手。前月27日から9日連続の空爆でロケット弾発射拠点、武器密輸トンネルなどを破壊し、ハマス幹部らを殺害した。

毎日新聞朝刊2009/1/9 一面

レバノン南部からイスラエルに向けてカチューシャ・ロケットが3発発射された。イスラエル軍は報復として発射地点付近に砲弾3発を打ち込んだ。レバノン治安当局によると、パレスチナ系武装勢力による攻撃との見方が強い。

イスラエルは、1991年1〜2月のペルシャ湾岸戦争のとき、その戦争の当事国でもなかったけれど、イラクから挑発されたかのように、スカッド・ミサイルを数十発打ち込まれた。このときは、イスラエルとしては珍しく反撃もせず、じっと耐え忍んだ。アメリカ軍が急きょ備え付けた迎撃ミサイル・パトリオットで、そのいくつかは撃破したといわれているが、それはアメリカ軍の手前味噌的な戦果報告であって、ほとんどのスカッド・ミサイルは、パトリオットの防御システムをすり抜けたというのが実情だったとされる。今でも、発射されたミサイルやロケット弾に対しては、有効な迎撃手段がなく、気休め程度の防衛システム(ただし、全体で兆円単位の金を必要とする、恐ろしく高価なもの、ミサイルより恐ろしい?)があるだけだ。

最近では、中東の大国イランが、イスラエルに的を絞って射程数千キロの本格的なミサイルを配備していることが報道されている。核弾頭を搭載することも可能なものだ。一説によると、外貨を稼ぐためなら何でもする北朝鮮がミサイル技術を供与したというのだ。イランはイスラエルを徹底的にけぎらいしており(イスラエルの存在すらも認めていない)、国際的なスポーツの大会でも、イラン選手はイスラエル選手と競技しようとしないほどだ。

隣国のレバノンでも、シーア派武装組織ヒズボラやパレスチナ系の武装勢力がイスラエルに銃口を向けている。つまり、イスラエルはかなり危険な状況に立たされている。

そして問題のガザ地区から、イスラエル領内にロケット弾が常時打ち込まれている。ガザ地区を実効支配するパレスチナのハマスが主導してやっていることだ。このロケット弾は、人手で運べるほどの大きさのものがほとんどで、ミサイルのような誘導弾ではなく、簡単な発射器具に立てかけられ、その方角と角度によって大まかな着弾地点が定められるものだ。どこに命中するかはロケットの「きまぐれ」に任せるものだから、たまたま人家に当たって損害を与えている。何十発も打ち込んでも、その破壊力は「知れたもの」とされる。今回のイスラエル機による空爆の殺傷者数(死者は1300人を超えた)や建物の破壊など物的な損害規模(パレスチナ側の推計、1/16の報道では、17億ドル)とは比較にならない。しかし、どこに着弾するかわからないことが、イスラエル側の不安を募らせているという。一種のいやがらせ攻撃だろう。その心理的効果は絶大で、イスラエルをいらだたせてきたのだ。

イスラエルが採った作戦の第一は、ガザ地区の経済封鎖だ。ハマスを直接たたくのではなく、ハマスを支援する経済的な基礎を弱体化しようとするものだ。経済的な基礎とは、一般の市民そのものだ。経済封鎖は、市民生活を困窮させるもので、人道的に疑問符が付く。一般のガザ市民を巻き込んだ作戦であり、非戦闘員をも攻撃の対象にするという戦略だ。なりふりかまわぬイスラエルの焦りが感じられる。イスラエルは、人口約600万人の小国(国土の面積は、21000平方kmというから、日本の約1/18)ながら、最新の軍事技術を常に導入している軍事大国だ。そのイスラエルが、人口135万人のガザ地区の住民(ガザ市には約35万人)に対して本格的な軍事行動を仕掛けてきたのだから、弱い者いじめしている構図だ。それでも、イスラエルにとっては「正当な」戦略なのだろう。

ロケット弾などの武器弾薬の多くがエジプトからハマスに供給されているとイスラエルは見ている。イスラエルは、ガザとエジプトとの国境を封鎖し、高い壁を構築した。生活物資の供給も制限されることになり、住民は、たまらず、壁を潜り抜ける秘密の地下トンネルを何本も掘ったのだが、それもイスラエルの軍事行動の標的にされ、破壊された。ガザ地区住民にとっては物流が止まっては死活問題だから、破壊されては掘るということが繰り返されそうだ。

今回の軍事行動は、やられたらやり返すというイスラエルが得意にしている報復的行動(パブロフの犬のごとく習性になっている)の一つだが、報復が報復を呼ぶ連鎖をさらに強めたというべきだ。1月18日の停戦までの作戦は、イスラエル側にとってそれなりの戦果が上がったのかもしれないが、無関係な人々まで巻き込んだ一方的な戦闘だったことは否定できないだろう。報復では、勝利をもたらさず、破壊行為でしかない。決して妥協しないイスラエルの態度が、宗派の相違以上に、パレスチナ住民だけでなく、近隣のアラブ諸国に嫌われる一番の要因だろう。

 

 

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        軍事行動の支援も国際協力の一つ