泥酔して国際記者会見に臨んだ大臣                           岡森利幸   2009/2/19

                                                                    R2-2009/3/24

以下は、新聞記事の引用・要約。

朝日新聞朝刊2009/2/18 神奈川面

2009年2月14日にイタリア・ローマで開かれた先進7カ国財務省・中央銀行総裁会議『G7サミット』終了後の記者会見での)中川財務相の「もうろう会見」に、松沢成文知事が痛烈批判。

「百年に1度の体たらくな大臣。極めて国益に反する行為だ」

毎日新聞朝刊2009/2/18 総合

G7昼食会を1時ごろ抜け出し、同行記者と会食、ワインが出た。ホテルの1階のイタリアレストラン「ドニー」に移動、財務相の玉木林太郎国際局長や日本から取材で同行した女性記者、イタリア人通訳などと数人で会食。レストランの支配人によると、中川氏らは午後2時ごろビュッフェ形式のサラダとパスタとともに赤のワインを注文。

中川氏が昨年9月の財務相就任以来、G7などの海外出張では同行の女性記者を集めて飲食を行なうことが恒例化していた。午後2時50分、同ホテルでロシアのグドリン財務相と会談。麻生太郎首相を「麻生大臣」と言い違えるほど、言動に不安定さも見られた。その後部屋に戻り、30分ほど財務省幹部らと打ち合わせをした。午後3時45分からの内外記者会見の前にはすでにろれつが回らない状態だった。

政府・与党から、「あんな状態の中川氏になぜ会見させたのか」という財務省の対応を疑問視する声も出ているが、「世界が注目する会合であり、会見の時間も設定されていた。欠席させればよかったというのは後知恵で、できる状態ではなかった」(幹部)と財務省は説明している。

百年に1度の体たらく」という言い方には、私は笑ってしまった。私的な時と場所であれば、いくら羽目をはずしてもいいのだが……。

その大臣は、記者たちの質問の言葉を理解できず、聞き返したり、ちぐはぐな返答をしたりした。ろれつの回らない言葉を途切れ途切れに発声し、話す内容は意味をなさなかった。水を飲もうとして自分のコップではなく、話している最中の白川日銀総裁の前に置かれたコップに手を伸ばす――。世界のメディアの前で醜態をさらした。

そのときの映像を見ると、隣に座って大臣の異変に一番先に気づいたはずの白川日本銀行総裁も、おろおろしているばかりで、何もしていなかった。記者から自分への質問に答えるのに精一杯だったのだろうか。この人の対応もほめられたものではない。質問にも答えられない「よっぱらい」を押しのけて、自分が会見を取り仕切るような積極性を見せてほしかった。

本人は完全に酩酊し、自分が記者会見に応じられる状態でないことも判断できなくなっていたようだ。そんな状態ならば、会見の席を設けた主催者なりが、途中でもいいから、すぐに退席させるべきではなかったか。だれも、臨機応変の対応をしていないのだ。大臣の酩酊状態を知りながら、側近の者たちのだれ一人、会見の出席を止めようとしなかったことが、一番情けない。彼らは、同じ車に乗り込んで、酒に酔ったドライバーに運転を任せたまま、自宅まで送ってもらおうと、後ろの席にふんぞり返って座っていたようなものだ。

当日、中川昭一氏は、午前中のG7会議を終え、G7の昼食会(ワインが出されていた)を途中の1時ごろ抜け出した。そして、ホテル1階のイタリアン・レストランに行き、財務省の玉木林太郎国際局長が呼び入れたとされる、日本から同行の女性記者たち数人と歓談したときにも、中川氏自らが注文した赤ワインが出されたというから、このときのアルコールが一番効いたのだと私は思う。その後のロシアのクドリン財務相との会談のとき、麻生太郎首相を「麻生太郎大臣」と言い間違えるなど、言動が怪しかったというではないか。

酩酊した要因として、@日本とイタリアの時差、A風邪薬の服用、B外国語が飛び交う国際会議の出席や外国要人との会談による疲れと、それらが終ったことの気の緩み、そしてCワインなどの飲酒、が考えられる。いくつかの要因が重なっていたことは確かだろう。締めくくりというべき内外の記者会見は、それらのスケジュールの中では重要度が低いと、軽く考えたのかもしれない。それなら、あえて出席しなくてもよかっただろう。

問題の記者会見直前に、財務省幹部らと30分打ち合わせしたとき、すでに中川氏はろれつが回らない状態だったいう。まともに受け答えできなくなっていたことは、幹部たちには、分かっていたのではないか。どんな記者会見になるか、想像もできなかったのだろうか。

日本を代表する国際的な場での醜態は、中川昭一氏個人の問題ではないだろう。組織の問題になるのだ。このとき、記者会見を取りやめることを進言もせず、記者の質問にまともに答えられない状態を放置したままにしたのだから、財務省幹部らの責任は重い。中川昭一氏の酒癖の悪さは、以前からたびたび散見されていたことなのに……。酩酊した原因が何であれ、財務省幹部らは、のこのことイタリアまで付いて行きながら、助言の一つもしなかったのか。

彼らはスケジュールを守ることに執心していたようだが、それだけが彼らの職務ではないだろう。あらかじめ決められたスケジュールを守るだけなら、ロボットの方が着実にこなすだろう。私が総理大臣なら、大臣を辞任させるよりも前に、大臣をぜんぜん補佐しなかった、ていたらくな財務省幹部らの随行職員を職務怠慢と管理能力欠如により降格させよう。「できる状態ではなかった」などと言い訳するのは、指導力不足だろう。彼らには、酒を飲んだら事故を起こすという、常識的な予測もできなかったのだ。どこでもいいから、さっさと天下ってほしい。そんな彼らを受け入れる団体があればの話だが……。

 

 

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