でっち上げられた窃盗                                      岡森利幸   2008/12/19

                                                                    R1-2008/12/20

以下は、テレビのニュース番組からの引用・要約。

テレビ朝日・スーパーモーニング2008/12/19

数年前「置き引き」で実刑判決を受け、服役したAさん。

地方の公務員だったAさんは、この日、東京での用事を済ませ、帰るところだった。新宿駅で、特急あずさの発車待ちをしていたとき、仲間と離れて一人喫煙車両の空席に座ってタバコを吸っていたAさんに、22〜23歳の若い男がうしろから、財布を突きつけ、

「おまえ、この財布を置き引きしたろ? 知らんだと? ふざけんな」と、言いがかりをつけてきた。もう一人、同じくらい年齢の女が現れて、口をそろえて、「()ったろう?」と迫ってきた。Aさんは何のことかよく分からず、彼らと押し問答してもラチがあかないので、駅事務所で話をしようと言うと、なぜか「被害者」の二人は、Aさんの手をつかみ、押しとどめた。そして、若い女が携帯電話をAさんに電話に出るよう促した。Aさんが電話に出ると、「知らんだと? ふざけるな。おまえがやったという証人が何人もいるんだ。警察に行けば面倒なことになるぞ。しょっぴかれたくなかったら、さっさと落とし前をつけろ」と、やくざ口調の男が怒鳴りたててきた。

それでも、Aさんは駅事務所へ二人を引っ張るように連れて行き、駅員に事情を説明したが、駅員は「単純な窃盗事件」として警察に連絡したらしく、結局Aさんが警察に連れて行かれ、ほんとうに犯人にされてしまった。

裁判では、財布に付いたはずの指紋などの物的証拠は何もなく、ただ「複数の証人」によって、Aさんは有罪判決を受けた。

警察は、被疑者の言い分などに聞く耳を持たないようだ。この事件では、警察も、検察も、弁護士も、裁判官も、何をやっていたのかネ。(ため息を吐く)

かれらは状況をまったく把握していないのだ。把握するための想像力にも欠けている。こういうことが現実にあったことを、私は残念に思うし、Aさんに同情してしまう。特に警察は、「自分はやっていない」と言い張る被疑者に対して、やたらと厳しい扱い(いわゆる、犯人扱い)をするものだから、悲惨である。やくざ口調の男の言ったとおり、ほんとうに面倒なことになった。被疑者が警察の思い通りに口を割らないとなると、拘留や拘置は最大限まで延長されるのが常なのだ。テレビ映像の中で、Aさんは今でも、何かの間違いだろうと、涙ながらに悔しい気持ちを語っていた。一方で、若い男女は、犯人逮捕に功績があったとして警察から表彰あるいは褒賞されたのではないか、と私は想像している。

 

状況を考えてみると、先ず、おかしいのは「置き引き」されたはずの財布を若い男が持っていてAさんに突きつけたことだ。「置き引き」されたのならば、Aさんが持っていなければならないだろう。

若い男女は、Aさんが置き引きしたのを目撃したのなら、なぜその場で声を上げたり、追いかけたりしなかったのか。Aさんはずっとタバコを吸っていたのだから、逃げも隠れもしていなかったのだ。

携帯電話で、やくざ風の口をきく男が出てきたが、何者なのだ? (警察が掲載電話の着信履歴を調べれば、一発で分かることなのに、Aさんの証言の裏付けも取っていなかったと見える) 彼は電話の向こうにいるのに、どうして見ていたかのようなことを言うのだ?

「被害者」たちが駅事務所へ行くのを渋ったのも、公の場に出ては不都合があったから、と考えるべきだ。

これらの疑問・矛盾点から、「被害者」たちはグルになってAさんに言いがかりをつけ、「示談金」を脅し取ろうとした、と考えるのがもっとも正しい。Aさんは脅迫のターゲットにされたのだ。さらに推理すれば、携帯電話に出たやくざ風の男が首謀者だろう。警察は、こういう手口を知らなかったのだろうか。

男女がペアになり、被害者を装って、金をゆすり取ろうとする手口なら、いくらでも事例があるだろう。今年の10月に大阪では、男女が痴漢をでっち上げたのがばれて有罪になっているのだ。

「被害者」たちは新宿駅やその周辺で、同じようなことを繰り返していたはずだ。金を脅し取られた本当の被害者たちは駅や警察に被害届けを出していなかったと私は考える。取り締まる側が、同じような事例が発生していることを知っていれば、駅や警察での対応が違っていたろう。複数の証言があったとしても、すぐに「こいつらはグルだな」という勘が働いたはずだ。

警察や裁判所でAさんのような目に合うなら、私でも、ゆすりの単純な手口が見抜けないような一部のぼんくらな警察に説明するのをあきらめて、その場で「示談金」を払ってしまいそうだ。複数の証言者がいては、絶対的に不利だ。あとで被害届けを出すにしても……。つまり、ターゲットに「警察に行けば、犯人にされてしまうかもしれない」という恐怖を抱かせるのが、この犯罪のミソであり、付け目なのだ。Aさんのようなことがあると、この種の犯罪は絶対になくならない。

 

 

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