カーオブザイヤーの先走り                                   岡森利幸   2008/11/12

                                                                    R1-2008/11/30

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/11/12 経済面

自動車専門誌の編集者らで作る「日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会」は(今月の)11日、「08〜09日本カー・オブ・ザ・イヤー」にトヨタ自動車の超小型車「iQ」を選んだ。「iQ」は20日に発売予定。

「iQ」は、まったく販売実績のない車だ。まだ発売もしていない車種を「日本カー・オブ・ザ・イヤー」にするのは、あまりに先走りすぎた選定だ。このタイミングで「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を発表するのは、前評判を高めるための「メーカーの宣伝行為」くさい。「日本カー・オブ・ザ・イヤー」という賞をもらうことで、新車の売れ行きを伸ばそうとするメーカーの魂胆が見え見えである。しかも、「09」とは来年のことだ。来年の「カー・オブ・ザ・イヤー」をどうして、今年に選ぶのだろうか。

タイトルや賞は、結果として与えるべきであるのに、これでは、まるで、映画の「予告編」と同じではないか。あるいは、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」とは、タイトルや賞に関係なく、自動車専門誌の編集者らという「身内」での人気投票で一位になったというだけことか。

自動車専門誌の編集者という人々は、車のことをよく知っている専門家であるけれど、自動車メーカーから情報を提供してもらい、真っ先に車の試乗もさせてもらうなど、メーカーに「恩」を受けている人たちだ。だから彼らは、メーカーの宣伝文句を受け売りし、いいところばかりを強調し、欠点にはほとんど触れないものである。それどころか、自動車専門誌をよく読むと、彼らは、車の短所も長所として書き立て、変なデザインも「他に例がないユニークな個性」などとして紹介するのが常なのだ。そんな人々が、勝手に「日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会」を組織し、発売もしていない車をカー・オブ・ザ・イヤーなどと祭り上げるのは、とても公正とは思えない。

彼らは、車の製品仕様書に書かれた数値と外観をながめながら、少しばかりの距離を試乗して、車を判断しているのだろうと、私は想像している。今回の「iQ」は発売もしていない車だから、街中でじっくりと乗り回したわけでもないだろう。メーカーが提供した完全整備の車を、自動車メーカーがもつ試験コースで走らせたぐらいだろう。それだけで車の総合的な評価をするのは、ほとんど無理だろう。私は、少なくとも半年間乗って評価する必要があると思う。すぐ壊れるような耐久性のない車もあるかもしれないし、メーカーが示す燃費よりもずっと悪い数値しか出てこないケースもありうる。短期間の試乗では、耐久性や実用上の問題を見つけられない。雨の日も風の日も乗って走らないと、真価は分からないものだ。あるいは、衝突したときに問題が発覚すること(特に小さい車で)もある。

確かに、新しい車は設計が新しい分だけ、賞を得るには一番有利な立場にある。前モデルや発売済みの他車の車より、改良されているところも多いだろう。だからといって、まだ一般の評価が定まらないような、前評判だけの車に賞のたぐいを与えるのは、おかしい。

自動車メーカーの「間接的な広報部員」のような人たちに「カー・オブ・ザ・イヤー」を選ばせるのは、しかたないとして、「カー・オブ・ザ・イヤー」の権威を高めるためにも、ユーザーの声も反映させた総括的な評価情報(売れ行き状況もそのひとつの指針)を考慮して決めるべきだろう。そのためには、発売から半年以上すぎた車の中から選ぶという条件をつければいいことだ。

 

 

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