ぼったくりのホストクラブで逮捕された女性客            岡森利幸   2008/11/14

                                                                    R1-2008/11/15

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/11/13 社会面

神戸地裁が、ホストクラブで無銭飲食をし、詐欺罪に問われた愛知県犬山市の無職女性(36)に無罪判決。

岡田信裁判長は「支払う意思があるように装い注文するという、だます行為があったかについて合理的な疑いがある」と述べた。

判決によると、女性は今年3月16日午前、神戸市中央区のホストクラブでシャンパン計11本(20万円相当)の提供を受けた、代金を支払えず、店の通報を受けた警察に現行犯逮捕された。

公判では追加注文10本分の代金の支払い意思の有無が争点になった。岡田裁判長は女性が逮捕時に呼気1リットル当たりのアルコール濃度が0.51ミリグラムと高濃度だったことを挙げ、「店側が飲酒酩酊(めいてい)状態にある被告に意思確認が不十分なまま提供した可能性が否定できない」と(支払う意思がないまま注文したという検察の主張を)退けた。

警察も検察も、どうして、こんな女性を逮捕し、懲役2年を求刑したのだろうか。

無銭飲食で、詐欺罪を適用したせいだろうが、彼らの感覚がひどくずれている、と私は思う。この女性は、20万円の代金を店に請求されたのだ。こんな店は、一般的に、「ぼったくり」の店というのだ。警察は、こんな店を取り締まるどころか、ぼったくりを助長するようなことをしていいのだろうか。

シャンパン11本を一人の女性が飲めるわけはない。その大半を飲んだのは、ホストたちだろう。この女性はシャンパン1本分については支払った。しかし、追加のシャンパン10本については払えないとごねだしたのだろう。

おそらく、こんな会話があったのだろう。

――彼女は、ホストたちとの間で総理大臣の駄目っぷりなどに話が弾んで、つい長居をした。ようやく帰る時間になって、気分よく勘定を頼んだ。すると、その紙切れに書かれた数字を見て目を吊り上げた。

「えー、20万円? シャンパン11本とは何よ。わたし、こんなに飲んでないわ」

「ホストたちにおごった分が含まれます」

「そんなー、だれがそんなに飲んでいいと言ったのよ。シャンパン11本も、飲みすぎよ」

「いっしょに飲んだのだから、飲ませたのは、客のあなたということになります」

「そんなに飲むとは思っていないわよ。注文したシャンパン1本分は払いますが、追加の10本分は払えないわ。20万ものお金、もってないし……」

「お客さん、払わないと、無銭飲食になりますよ」

「無銭飲食でいいわよ。警察でもどこでも突き出してちょうだい」

 

それは明らかに高すぎる料金だから、おそらく彼女は、警察が、それは確かに不当な料金だとうなづき、店を指導するなどして、彼女に味方してくれるもの、と思っていたことだろう。まさか、警察がホストクラブの肩を持って、飲み代20万円を払えとは言わないだろうと……。通報した店も、シャンパン11本で20万円を請求したことを、臆面(おくめん)もなく、警察によく話せたものだ。

しかし、警察は、店の言い分を丸のみし、警察官にもくってかかるほど(?)酩酊した彼女の言い分を聞こうともせず、彼女を「酔っ払い」扱いして逮捕したのだ。その後、無罪判決が出るまで、彼女は狭い部屋に留置され、さらに長期間拘置されていたのだろうから、ぼったくられる以上に悲惨な目にあったことが想像される。

私は、まともな判決を下した裁判長を賞賛したい。それに引き換え、警察・検察は、ぼったくりを黙認し、その被害者を「詐欺」呼ばわりしたのだから、大いに反省してほしい。だましたのは店の方だろう。

 

 

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