ウナギの産地に惑わされる人々                             岡森利幸   2008/7/24

                                                                    R1-2008/9/23

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/7/3一面・総合面

ウナギ偽装、兵庫・徳島県警が「神港」社長らを聴取する。

つかめない本当の産地、背景に中国産ウナギの品質向上もあるとみられる。

「今は業者でも国産と外国産を見分けられる人は少ない」

毎日新聞朝刊2008/7/22社会面

台湾産のウナギ、日本向け出荷ピーク。

日本では幼魚を台湾などへ輸出し、現地で育てて逆輸入する「里帰りウナギ」が問題になった。日本で育ちの悪い幼魚でも自然に近い台湾の露地池でうまく育つ。逆輸入の際に日本側業者によって国産と偽装された。

あなたは、前者の記事の中に「つかめない本当の産地」と、さりげなくダジャレが入れられていることに気づいただろうか。しゃれっ気があっていい。後者の記事で、私は、台湾産のウナギが食べたくなった。幼魚の育ちの悪い環境で、配合された飼料で養殖されたようなウナギなど食べる気がしない。

 

私は、見分けられないほど同じなら、見分ける必要はないと考える。しかし、国産とラベルがつけば、何がどうであれ、高値で取引されることに、一番の問題があるのだ。偽装した業者たちも、「もの」は同じなのに、販売価格が2倍ほど違うことに、疑問を感じたのではないか。

大体、輸入される食品は、公的な機関(税関)により、きっちり厳密な検査を経て市場に入るが、国内の食品の場合は、かなりルーズなのだ。何かが検出されても、風評が出ると生産者が困るからなどといって、具体的な情報は消費者に伝えられない。

日本で取れるウナギも、中国で取れるウナギも、もともとはマリアナ海溝(マリアナ諸島西方海域)付近で産卵されたものが孵化したあと、稚魚の群れが潮の流れに乗ってそれぞれの陸地にたどり着いたとき、捕獲されたものだ。ウナギの種類としては同一のものだろう。種類(素性)が同じであれば、あとは環境の違いで、栄養に恵まれたり、太ったりやせたりするものだろう。養殖のための技術など、すぐに国際的に広まってしまうものだから、品質の差などなくなってしまうのは当然だ。

ウナギの種類が同じであれば、見た目の大きさや色艶でしか、違いが分からないものだろう。日本では、××県産というブランドの知名度とともに、見た目が特に重要であり、見た目の品質で等級が決まる。型の不揃いがあったら、選別され、「規格外」の大きさのものは、ポイポイと産業廃棄物にされる。それがコストの高くなる一因にもなっている。中国産(または台湾産)でも、最近はそれに習って型を揃えてきている。それで日本の業者は、中国産の品質が向上したと見るのだ。

「値段が高ければ、品質がいい」というのも信仰のようなものだろう。「国産のウナギはうまい」というのも、あやしい風評のようなものであって、私は信じていない。産地よりも料理法によって大きく差がつくものだろう。それがうまいと感じられると仮定すれば、日本人の舌は、何が混ざっているのか分からないような配合飼料(ほとんど輸入品)で育てられた養殖ウナギの味にすっかり慣らされてしまっているのかもしれない。

 

 

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