小学校の運動会で写真を撮っていた不審者                   岡森利幸   2008/6/5

                                                                    R1-2008/6/21

以下は、新聞記事の引用・要約。

報知新聞2008/6/4

変態元教師、執行猶予中に小学校運動会で写真撮りまくり

東京都世田谷区の区立小学校に無断で侵入したとして、警視庁北沢署は3日までに、建造物侵入の現行犯で、元小学校教諭・渡辺敏郎容疑者(35)を逮捕した。渡辺容疑者は、交通事故死した児童らの生前の写真を自らのホームページ「クラブきっず」に無断転載したとして児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ頒布)容疑などで逮捕され、昨年7月に執行猶予付きの有罪判決を受け、5年間の保護観察中だった。

あの変態教諭が活動再開していた。調べによると、渡辺容疑者は、1日午後2時ごろ、運動会を開いていた小学校に侵入。一眼レフのカメラで児童を執拗(しつよう)に撮りまくっていたという。

この小学校では、保護者にはリボンを配布し、部外者の侵入を防止していたが、受け付けをすり抜けて、入り込んだようだ。写真の撮り方を不審に思った保護者が、リボンをつけていないことを確認し、学校職員と取り押さえ、110番した。

「子供が好きだった」「子供の写真を撮るのが目的だった」と供述しているという。同署によると、押収したカメラに収められていた画像は、この運動会のものだけだったといい、ショルダーバッグの中に所持していたパソコンの中身を解析中という。

その男は運動会で、子供たちの写真を一眼レフのカメラでバシバシ撮っていたという。児童の保護者である印のリボンをつけていなかったことで児童のお母さんたちに見咎められ、学校関係者もかけつけて、つかまえられてしまった。結局警察に突き出され、建造物侵入の現行犯として逮捕されてしまったのだ。逮捕してみたら、その筋では『札付き』の元教師だったのだ。しかし、運動会を見に来て児童の写真を撮っていただけの男をとがめたのは、やりすぎではないかと私は考えるのだ。

写真のマニアならば、運動会の子供たちの姿は、いい被写体だろう。シャッターチャンスがいくつもありそうだ。父母でなくても、写真を撮りたいと思うことだろう。この男も、「運動会の写真を撮るぐらいなら、校内に入ってもいいだろう」という軽い気持ちでいたのだろう。しかし、受付をすり抜けて会場(校庭)に入ったのが、まずかった。この男は元教師で、部外者を排除しようとする学校側の事情が分かっていて、自分は児童の保護者でないから、すんなりとは入れてもらえないと考えて、写真を撮るためには、受付をすり抜ける行動をとったのかもしれない。そして写真を撮るのに夢中で周囲の視線には気づかなかったのだろう。

こんな学校側の対応も、2001年6月に大阪府池田市で起きた池田小学校事件の過剰反応の一つなんだろう。今でも、日本中の小学校が不審者の影におびえて、ぴりぴりしているのだ。私の見かけた小学校でも、その塀には鉄条網を張り巡らし、出入り口の通用門は開けっ放しだったものが、しっかり鍵をかけられ、玄関の門には頑丈な鉄製のスライド式ドアで、登下校時を除き、ほとんどの時間、閉められたままだ。

子供をかわいがるのは、一般的な特質だろう。しかし、中には、これが高じて、子供を性的な対象にしてしまう人もいる。Pedophiliaという児童性愛者などと訳される人々は、世界的に問題視されている。子供の性的写真を見て喜ぶぐらいの「ひそかな楽しみ」なら、個人の趣味の範囲という主張もあるかもしれないが、何も知らなかった子供の画像などが流布して、結局その本人や家族を辱めることになることが一番の問題点であり、児童ポルノの書籍や画像を販売することだけでなく、所持することも規制する方向に動いている。同性愛に対しては容認傾向があるが、子供を性的な対象にするなど社会的に容認されず(理解されない?)、取り締まりが厳しくなっている

この男の場合にも、それに近いようなところがある。しかし、運動会の写真は撮るぐらいは、趣味の範囲内にあると思うし、私にはそれが公序良俗に反するような画像であるとは思えない。運動会のひとコマを写真に取られて困ることがあるのだろうか。建造物侵入で捕まえる必要があったのだろうか。

自分や家族の写真をインターネットに勝手に掲載されたらいやだ、などと考えるのは、気にしすぎではないか。世の中には、恥ずかしいような写真や、目を覆いたくなるような写真も確かにあるのだが……。池田小学校事件の前なら、「写真を撮りたいのなら、どうぞ撮ってください」と、校庭を開放して無条件に部外者を受け入れていたと思う。以前の小学校の運動会は、地域の住民と一体となったレクリエーションだったから、リボンをつけたりして「部外者」を見分けるような差別はしなかったし、「部外者」は、来賓として扱われたのだ。

今後は、「リボン制度」が不審者の摘発に効果的だとして、全国的に普及しそうだし、運動会の写真を撮ることも、制限されそうだ。保護者でなく、プロの写真家でもない一般の写真愛好家などは、不審者の部類として受付で門前払いになりそうだ。特に、望遠レンズなどを所持している中年のおじさんたちは、疑いの目でじっと見られ、氏名・住所・連絡先まで帳票に書かされ、身分証明書の提示まで求められそうだ。「そんなもの、持ち合わせていない」などと拒否したら、もちろん警察に通報されてしまう。そのうち、所持品検査までされ、バッグの中まで見られたりして……まるで飛行機の搭乗手続きのように。

 

 

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