生活保護者と後発薬                                                    岡森利幸   2008/5/6

                                                                    R2-2008/6/26

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/4/27一面

厚労省は41日付で、生活保護患者は安価な薬(後発薬、ジェネリックともいう)を使うようにと、都道府県などに通知していた。

従わない場合は、保護の一時停止や廃止を検討すること。

厚生労働省は、生活保護のための歳出と、医療費の高騰に伴う健康保険の支出に頭を痛めているようだ。そこで一計を案じたのだが、あからさまな「貧乏人は麦を食え」的な発想では、人々の反感を買ってしまう。従わない場合は保護の一時停止や廃止するとは、権力を振り回すような強引さがある。厚労省は彼らの生活を保護する立場を利して、後発薬を押し付けようとした。横暴すぎるやり方であり、これでは説得力もないし、弱者をしいたげるだけだろう。結局、通知が一般に知られるようになって多くの反発を招き、厚労省は、その処法をすぐに引っ込めた。

後発薬を使うこと自体は合理的な方策であり、効能が同じならば、先発の高い薬を使うより、後発の安い薬を使う方が、購入する側の負担も軽くすむ。厚労省が医療費抑制のために後発薬を使うように推進しているのは的を射ている。ただし、生活保護者は全額公費負担のため、自身の負担はないから、後発薬を選ぶ動機が起きにくいという。保護の一時停止や廃止は、その動機付けに有効だと厚労省は考えたのだ。一種の脅しだろう。

私自身は、もう8年ほど2カ月に一度通院し、医者に薬を処方してもらっている。最初のころ医療費の患者負担が1割だったのが、いつの間にか3割になり、特に薬代の高さが無視できないものになった。そんな時、後発薬の存在を知り、医者に頼んで後発薬に切り替えてもらったことがある。後発薬とは、開発した製薬会社の特許権が切れたのを受けて、他の会社が成分・製法などをマネして作った薬なのだ。医者などは、「微妙な違いがあるかもしれませんよ」と気になることを言っていたが、基本的には同じなのだ。見た目でも、薬の形・色や、包装の仕方までそっくりなのだ。まるでニセ薬のようだが、もちろん販売が承諾・認可されているものだ。「後発薬」とか「ジェネリック」とか、ほとんど意味の分からない言葉を使うより、「モホウ薬」(模倣薬)と称した方が一般の日本人には分かりやすいと思うが……。

特許権が切れて、他の製薬会社が同じような薬を安く製造・販売し始めても、開発した製薬会社は、既得権を守るがごとく、「正規」の薬として高い値段のまま販売している。適正な製造コスト以上の値段で売っている。その薬の知名度の高さで、そんな儲けの大きい商売が可能なのだ。新薬を開発するためにはかなりのコストと労力と英知(さらに実験動物の犠牲もあるだろう)が必要なので、知的財産としても尊重されなければならないが、特許によって一定期間独占的権利をもち、それなりに利益を得たはずである。その後は、価値を評価するとともに、有用な薬として社会的に役立てるように、開発した製薬会社一社だけのものでなく人類共通的なものとして広く安く普及させるべきだろう。

 

 

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