教育委員会に仕掛けられた盗聴器                            岡森利幸   2008/9/22

                                                                    R1-2008/9/28

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/9/12 一面

大阪府教育委員会・高等学校課の職員の机に盗聴器が仕掛けられていたことが分かった。9/11夜、テレビ局がたまたま盗聴器に関する番組制作を行っていた。

その盗聴器は、普通のコンセントの形をしており、見た目では盗聴器とは、まるでわからない。数カ月間、だれにも気づかれることもなく、そこにあったらしい。コンセントとしてAC電源に差し込まれているから、電池も不要で、常に小型マイクで周囲の音を拾い、電波に乗せて、発信し続けている。その電波が、偶然、調査専門スタッフがもちこんだアンテナと受信機によりキャッチされ、発信源が特定されてしまったのだ。

庁舎に盗聴器が仕掛けられていたことが驚きだった。すぐにメディアに大きく取り上げられ、全国に知れ渡った。その職場だけでなく、府庁全体が、盗聴器の話題で持ちきりとなり、大騒ぎとなったのだ。警察も動き出した。

だれがどうしてこの場所に盗聴器を仕掛けたのか。――教育委員会といえば、文部省の指導に従って学校での教育方針を定め、教員採用や人事異動を決め、学校で使用する教科書の選定や生徒指導にも関わる部署であり、学校の予算の配分にも関係する。盗聴して、有利な情報を聞きつけ、不正を働こうとしたのだろうか。ちょうど大分県の教育委員会で、教員の採用・人事のからみ、贈収賄が発覚し、事件になっていたから、そういった不正と関わりがあるのだろうか。それはスパイの仕業か。憶測がどんどんふくらむような、大きななぞの一件になった。

でも、盗聴器が仕掛けられたのは、高等学校課の「生活指導グループ」が机を並べている一角だった。教員の採用や人事に無関係だったし、部外者が聞いて得するような有用な話など語られなかったというから、関係者たちは首をかしげるばかりだった。

でも、そのなぞはすぐに解けた。

毎日新聞朝刊2008/9/13 社会

大阪府教委高等学校課の指導主事(48)が「自分が仕掛けた」と府教委に申し出た。

「生活指導グループの男女の職員4人が和気あいあいと仕事をしているので、どんな会話をしているのか知りたかった」、「たあいもない会話なので興味がなくなった」と盗聴をやめた理由を説明。盗聴器を取り外す機会を見つけられないまま放置していたという。

「なーんだ」というところだろう。同じ課の指導主事が、他のグループの話に興味を持って、無線を通して聞いていただけのことなのだ。生活指導グループの男女の職員4人は、『和気あいあいと仕事をしていた』のではなくて、『和気あいあいと私語を交わしていた』のだろう。〈よく話題が尽きないな〉と思えるほど、いつ果てるともなく、談笑が続く……昨日も今日も。

この指導主事は、生活指導グループがひそひそ和やかに話しているのが気になってしょうがなかったのだ。少し席が離れていたので、よく聞き取れなかったから、盗聴器を仕掛け、イヤホンで聞く方法を思いついた。いわば、盗聴器は、補聴器のようなものとして入手した。それは、専門の販売店があり、ほとんど市販されているようなものなのだ。そして、よく聞こえる盗聴器によって聞いてみたら、たわいもない話で、バカらしくなって、そのままにしておいた。盗聴器のために出費した数万円は、興味を満たすためなら、そんな高い金ではなかったのだろう。

生活指導グループの男女の職員4人は、日ごろから、ろくに仕事もしないでおしゃべりに夢中になっていたようだ。同じフロアにいる彼らの上長は、気がつかなかったのだろうか。それを注意もしていなかったようだし、黙認していたのかもしれない。

いつも、たあいもない会話をしている職員4人と、イヤホンでそれを聞いている他グループの指導主事……。大阪府の教育委員会はそんなにヒマなんですか?

 

 

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