フリースクールの存在理由                                   岡森利幸   2008/9/21

                                                                    R1-2008/9/22

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/9/9 社会面

京都で、フリースクール入所者の少女に暴力をふるってけがさせたとして「丹波ナチュラルスクール」経営者ら2人を逮捕。

スクール側が保護者から入所費用として1人当たり数百万円を受け取っていたとの情報がある一方で、入所者の室に外鍵を三つかけるなど出入りを制限していた疑いがある。

毎日新聞夕刊2008/9/12 社会面

フリースクール入所後すぐ暴行。恐怖心を植えつけ反抗を抑圧していた。入所者の12人中9人が暴行被害を認め、「スクールに着くとすぐ殴られた」と話した。

入所後も日常的に暴行を継続、特に事件の被害者の女子中学生(14)は「目つきが悪い」と目をつけられ、逮捕事実となった8月3日には数十回も殴ったりけったりされ、(全治)17日間のけがをした。スクール側の虐待行為に男女の区別はなく、成人女性が11月に薄着のまま、数時間にわたって後ろ手に手錠をした状態で樹木にくくりつけられたこともあったという。

毎日新聞夕刊2008/9/12 社会面

「丹波ナチュラルスクール」の車に乗車中の事故で死亡した入所少年(当時5歳)の遺族が、運転していたスクールスタッフの男性に、無謀な運転が事故の原因として約4700万円の損害賠償を求め、京都地裁に提訴していることがわかった。

少年は中学時代、家庭内暴力が理由で入所。関西の全寮制私立高校に進学したが、1カ月で中退していた。男性スタッフ3人が千葉県内の少年をスクールへ移送中、午前5時45分ごろ首都高速湾岸線で車が側面に衝突して運転手を除く3人が死亡した。

事故原因として男性は、車内で少年が突然ハンドルをつかみ、左へ切ったのが原因と主張。関係者は調べに対し、この事故が契機となり、入所者を迎えに行く時には暴れないよう手錠を使うようになったという。

いまどき、高校の野球部の監督が、練習をサボっている部員をたたいても、解任される時代なのに、こんなすさまじく暴力的な「学校」があるとは、驚きだ。

毎日新聞朝刊2008/9/11 社会面

智弁和歌山・高嶋監督が部員に暴力を加えたことで、学校が処分し、退任させた。

PL学園監督も、暴力を理由に解任されたことが判明した。練習時間に出てこない2年生部員3人に注意する際、頭や顔をたたくなどした。

甲子園に出場するような高校野球部の関係者は、特別に「品行方正さ」が要求されるのだ。事件になってしまうと、有力学校であっても、出場辞退しなければならないから、学校側は、「大人しい」監督を求めているのだろう。〈体育会系の監督やコーチは口より手の方が早い〉というのは、もう過去のことらしい。

 

それはともかく、これらの記事で、フリースクールの実情がよく見えてくる。フリースクールに入所する人たちは、家庭でも、学校でも、手に余り、両親が大金を積んでフリースクールに引き渡されているのだ。そういった手に負えない、体ばかりが大きくなった若者たちの性根がたたき直されて、家庭内暴力、あるいは校内暴力に走った攻撃的な性格が改まればいいという期待があるのだろう。生活環境を変えることで、ある程度心身によい効果があるのかもしれない。中には、ますます性格が悪くなったりして……。

それにしても、数人の、おそらく屈強な男たちが、静まり返った、まだ暗い早朝に、親が案内した部屋のドアをこじあけ、「いやだ、いやだ」と抵抗する少年少女を、ベッドから引きずり出し、手錠をかけて護送するシーンを想像すると、悲しい光景に映る。

そして高速道路を何時間もぶっ通しで走った末、スクールに到着してまもなく、まるで儀式のように、彼らにとって何のいわれもなく(正当な理由もなく)、彼らはぶちのめされるのだ。入所している間、若者たちは、力でねじ伏せられ、自由のない生活を強いられることになる。ほとんど監禁状態だ。

でも、ここでは、〈生徒が校風に合わないから〉などと、どこかの全寮制私立高校のように、体のいい理由で退学を勧めることはない。教官(そう呼ばれているかは知らないが……)が、フリースクールの校風(スパルタ式?)に生徒を合わせるだけだ。生徒が反抗すれば、罵声を浴びせ、叩きのめし、それでも、直らなければ、外に引きずり出し、寒空の下で樹木に何時間も縛り付けておく。聞き分けのない若者たち(?)への教育方法としてそれしかないのだろうか。

そういう教育方法をうすうす知っている、あるいはよく知っていて、わが子をあえて入所させる親の側には、非常につらいところがあるに違いない。フリースクール側としても、単に儲かるからではなく、社会的需要に応じて経営しているのだろう。「丹波ナチュラルスクール」は特別な例だったのかもしれないが、他にも似たような施設がありそうだ。手に負えない若者たちの民間収容施設として人里離れた場所に……。

 

 

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