演説のうまい大統領候補                                         岡森利幸   2008/5/8

                                                                    R2-2008/6/6

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/3/4特集ワイド

オバマ氏の演説は、どこがそんなにすごいのか。

米大統領選民主党指名争いは、……当初本命とされたヒラリー・クリントン氏上院議員(60)を獲得代議員数で逆転したバラク・オバマ上院議員(46)。その人気の源は演説といわれる。スピーチで聴衆の心をとらえる。

鶴田知佳子・東京外語大学教授「オバマ氏の演説の特徴は、とにかく平易な英語で、繰り返しが多く、分かりやすいんです。クリントン氏の演説も明快で知的で、とても上手ですが、より簡単でリズムカルなのはオバマ氏。逆なのが共和党の有力候補、マケイン上院議員(71)です。一文が長い、二重否定が多い、何を言っているのかよく分からない」

東照二・立命館大学教授「知名度も組織力も資金もなかったオバマ氏が実績のあるクリントン氏を逆転したのは、スピーチ力しかない。オバマ氏の演説に比べれば、クリントン氏はまるで素人。……オバマ氏のスピーチはまるで交響楽。最初は小さく流れる主旋律が、やがて膨らみ、大きく展開していく。」

毎日新聞夕刊2008/3/31「グッド・イブニングAmerica」大地明子・記者

オハイオ州でイベント(候補者が演説する集会)があった。質疑でクリントン氏はまるでコンピューターのようにデータを交えて詳細に答え、オバマ氏は絶妙のユーモアで魅了する。

アメリカ大統領選挙は各州での予備選から始まって世界最大規模で長期間に渡って続けられる選挙であり、その結果、世界最大の権力者が選ばれることになる。選ばれたら、その人は、人気が落ちようと、批判を浴びようと、でたらめな戦争を起こそうと、よほどのことがない限り任期の4年間、世界最大の権力を振るうことになる。現大統領ブッシュが属する共和党は落ち目であるから、民主党を征する候補(指名権を得る *1)が次期大統領になる公算(就任:2009年1月20日)が高い。民主党の候補者で一番有力なのがオバマ氏だから、彼が次期大統領に一番近いことになる。

しかし、私自身のやっかみを込めて(私はスピーチがうまいと言われたことがない)、あえて言えば、人々の心をとらえるような演説のうまさだけでは、信用できない面がある。単純なことばを使い、繰り返しや強調を多用し、音楽的な調子で演説するのは、漠然とした期待感を抱かせるための演出のようなものだろう。人々の琴線に触れて、魅了する力があるのかもしれないが、言い換えれば、人々の心を惑わすものだ。

人々には、候補者の演説がすごいか・すごくないか、うまいか・下手かというのでなくて、政策内容で判断してほしいのだ。ここちよく心に響くからなどの理由で政治家を選んでは、その笛の音にみちびかれて、川に飛び込むネズミになってしまう恐れがあるだろう。

人々が候補者の演説を聞く機会が多くあるのなら、スピーチが下手でも、声が非音楽的で聞きづらくても、その内容が理知的であり、具体的なビジョンを持っているような候補者を見極めるべきだろう。演説の仕方はどうでも、肝心なのは内容だろう。質疑に対する回答は、ユーモアよりも、はぐらかすことなく的確な見識を示すことだろう。下手なユーモアでは、茶化すことになってしまうのだが……。心酔している人々には、それでも絶妙なユーモアに聞こえるのだろう。

 

*1. 2008年6月3日に民主党の指名権の獲得が決定した。

 

 

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