安全な放射能漏れ                                            岡森利幸   2008/9/28

                                                                    R1-2008/10/4

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/8/17 科学面

仏の原発関連施設で事故相次ぐ、放射能漏れ。

事業所長「……生水を飲まないなどの措置は『用心のため』であって『危険なため』ではない」

毎日新聞朝刊2008/8/3 一面

米原潜放射能漏れを外務省が公表せず。

外務省が公表しなかった理由を「人体に影響がない」と説明していることについて、高村正彦外相は「理由になると思っていない」と指摘した。

毎日新聞夕刊2008/9/26 社会面

米海軍の原子力潜水艦ヒューストンの放射能漏れ問題に関連し、長崎県佐世保市が米側に求めていた原子力防災訓練への参加について、米側は今年も拒否する考えを示した。

22日に、米海軍佐世保基地を訪れた朝長則男市長に、フランシス・マーティン司令官は「原潜は安全だ。これは米政府の考えだ」と語った。ヒューストンの放射能漏れについても「科学的に害はなかった。人体、環境に危険は及ばなかった」との見解を示した。

・仏の事業所長は、なかなかうまいことを言う。

・外務省が公表しなかったのは、〈外務省自身が隠ぺい体質だから〉というのが、だれもが納得できる理由だろう。

外務省の職員たちの多くは、くさいものにはふたをする習性が身についているのだ。

・「原潜は安全だ」というのは、うそ発見器のメーターが振り切ってしまいそうなセリフだ。

 

米原潜ヒューストンの放射能漏れに関しては、長い間漏れ続けていたのに、それに気づかなかったことが問題だろう。あるいは、乗組員は気づいていたのだけれど、原潜としてのミッションを遂行するほうが軍事的に重要だから、放射能漏れなどという小さなトラブルは無視していたのかもしれない。従来はそんなトラブルは軍事機密にして闇にほうむっていたことが、今回はばれてしまったようだ。

原潜は安全だというのは、政治的あるいは、戦略的な方便だろう。放射能の影響は、すぐに出るものではないから、放射能漏れが「科学的に害はなかった」と言い切るのは、独善的な主張だ。「放射能の影響はまだわからない。将来的に影響があるかもしれない」と答えるのが科学的なのだ。放射能を広い海にまき散らしたら、現実的に調べようがない。

原潜の原子炉本体は、比較的丈夫な外壁で囲み、信頼性の高いシステムになっているのかもしれない。しかし、海上を航行する船との衝突事故もいくつか報告されている。そんな衝突事故が一次的要因になって、原子炉付帯設備が揺さぶられ、壊れる可能性もあるし、制御不能になるケースもあるだろう。原潜は、なによりも、ぶっそうな攻撃用兵器(原潜には核兵器の装備がつきもの)を搭載しているのだ。「原潜は安全である」というは、確かに米政府の考えであって、原潜が米国本土より遠くにいればいるほど安全なんだろう。

防災訓練へ参加しては、安全だという主張と矛盾することになってしまうから、米側は不参加を続けているのだろう。原潜は安全であるから、防災訓練は不要といいたいのだろうが、原潜が放射能を漏らしていたという事実があるから、それが不要とする主張には説得力を欠く。

ともかく、米側は「用心のために参加するのであって、原潜が危険なためではない」と、うまい言い訳をして、参加してはどうか。

 

 

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