白神山地のツル植物が切断された                             岡森利幸   2007/11/05

                                                                     R1-2007/11/08

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2007/11/2社会面

白神山地の特別地域の登山道に沿って、ブナなど115本に巻き付いていたツルアジサイやイワガラミのツル植物222本が根元近くで切断されていた。

青森県は、「いたずらにしては大規模」と、自然公園法違反での告発も視野に入れて調査している。

登山ガイドの一人は、「今年はツルアジサイの紅葉が見られず、残念でかわいそうだった。山の財産を壊す許せない行為だ」と怒っている。

とんでもないことをする人がいるものだ。これらのツル植物について、記事の写真では、直径2,3センチの太さのツルがブナの幹にらせん状に巻きついており、それがノコギリのようなものでぷっつり切断されていた。切り方がかなり大雑把だ。切断箇所でブナの幹にもくっきりとノコギリを引いたあとが残っているから、それはおそらく剪定用のノコギリによるものだろう。それらを222本も切るのは、相当に労力と時間と根気が必要だったろう。相当執念深く、体力のある人の仕業にちがいない。それに、ツルアジサイが山の紅葉に彩りを添えていたことを彼は知らなかったようだから、地元の人ではないだろう。

しかし、その人に悪意はなかったと私は考える。ずばり、善意でやったことなのだ。白神山地は、自然のブナの林で有名である。彼はそのブナがツル植物に巻かれて、苦しそうに見えたので、ブナを助けようと考えたのだろう。ブナの幹にからみつくツル植物など、彼にとっては、ブナに寄生して枝葉を伸ばしているだけの存在に見えたのだろう。ブナがツルに巻かれて苦しそうだと勝手に考えるのは、ブナの気持ちを知らないからだろう。それで余計なことをしてしまったのだ。

ブナとツル植物は、共生していると考えるべきであって、自然の中では(人間社会とは違って)一方的に寄生される関係はほとんどない。ブナとツルにおいても、私にはよくわからないが、なんらかの共生関係があって、助け合って生きているはずだ。それでなくても、それぞれが地域の一員として動植物を含めての生態系を構成しているのだ。一方的にツル植物だけ枯らしたら、自然環境全体のバランスをくずすことになりそうだ。

ブナはツルに巻かれることによって、幹の強度が高まり、強風や積雪にも耐えられるようになっているのかもしれない、と私は想像する。

われわれはそんな自然の中に入ったら、「撮るのは写真だけ、残すのは足跡だけ」という標語を思い起こすべきだろう。

 

 

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