支援戦闘機F2炎上                                                     岡森利幸   2007/11/03

                                                                     R2-2008/2/7

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/11/1社会面

愛知県営名古屋空港で31日午前9時15分すぎ、航空自衛隊のF2支援戦闘機が離陸に失敗、炎上。

戦闘機は離陸直後に機体のバランスを崩していた。離陸時にエンジントラブルなど突発的な不具合が生じた可能性がある。

三菱重工業などによると、戦闘機は離陸直後に機首を下げ、機体後部から墜落した(滑走路に接触した)。この後また浮上し、機首を上げたまま走ったが、再び墜落し、滑走路脇の芝生帯で停止、炎上した。最初の墜落時の衝撃で出火していた可能性があるという。離陸時にエンジンの推力が低下した可能性があるという。同社は31日の会見で「映像によると、助走中にエンジンなどからの出火は確認されていない」と説明した。

原因はエンジントラブルだろう。機体が浮きあがった直後にエンジンの推力が低下し、一時的に浮力を失って機体後部から墜落した後に、エンジンの推力がやや回復したか、操縦士の懸命な操作によってすこし浮上したが、墜落したダメージでエンジンが完全に壊れてしまい、まもなく落下した、と私は推測する。その後、事故調査委員会によって、なぜエンジンの推力が低下したかに絞られて事故の原因調査が行われるだろう。

離陸の際には、エンジン出力を最大にし、機体にも最大限の荷重が加わるから、航空機の事故の最も多い瞬間だ。その炎上する映像を見て、隠れ航空機ファンの私としては、最新のF2戦闘機が部品を散乱させ、炎上する姿は痛々しく、哀れであるし、120億円の機体が一瞬のうちに残骸となってしまうことが惜しい(もったいない)ことでもあるし、「それ見たことか」という気分が入り混じるのだ。

「それ見たことか」というのは、F2が単発エンジン機であることだ。つい最近、航空専門誌の記事の中に、F2が単発エンジン機であるにもかかわらず、エンジンの高い信頼性と整備の仕方がよいから今まで一機も失っていない(墜落事故がない)ことが誇らしげに書かれていたのを私は読んだ(*1)。やはり戦闘機に使われるような精緻で高出力なエンジンは、細心な注意を払って整備したとしても、たまには(偶発的にも)故障するものだ。

単発エンジン機は民間の旅客機では絶対にありえないと、私は主張してきたし、この事故で、単発エンジン機の危険性・脆弱性は避けようがないという思いを強くする。アメリカのF16戦闘機をベースにF2を開発したことが、そもそもの間違いであり、アメリカの政治力に押しつけられた日本政府の弱さのせいでもある。他の有力な候補に双発機があったのに……。日本は高い買い物をさせられた上、エンジンの故障一発で墜落するような飛行機に防衛任務を任せなければならないのだ。

エンジンが双発以上なら、エンジンの一基が故障しても、戦闘で被弾しても、墜落しない(墜落しにくい)のは、だれが考えても明白なことだ。日本は、アメリカのように、戦闘機の一機や二機が損耗しても、搭乗するパイロットがパラシュートで脱出できさえすればいいという国とは違う。アメリカでは日本のように周囲に住宅が密集しているような空港は少ないし、アメリカ政府は自国や他国の領土で戦闘機が墜落して住民が被害を受けても意に介す必要はないから、単発エンジンでいいのかもしれないが、日本では、住民が被害を受けるような事故を起こしたとすればそうはいかないだろう。

双発機に少々のデメリットがあっても、整備に手間隙がかかろうとも、格闘戦において少々の軽快さがなくても、日本では信頼性の高い双発機を用いるべきだろう。支援戦闘機の任務(艦船への攻撃が主要任務)を考えれば、なおさら双発機だった。

 

*1 参照、「航空ファン 2007-12月号」ページ7

 

毎日新聞朝刊2007/11/16社会面

F2機墜落、方向センサーの逆配線が原因

防衛省事故調査委員会は、機体の上下方向と左右方向の動きを感知する二つのセンサーの配線を逆にしたことが原因で墜落した可能性があると発表した。

原因はエンジントラブルでなく、配線接続の作業ミスの可能性が高いという。方向センサーの配線を間違えれば、墜落するのは当然だ。機体が上昇し始めたとき、姿勢制御のコンピュータが下降していると判断し、操縦者の思いとはうらはらに逆の方向へ、つまり下へ機体の方向を変えたのだ。作業と作業後のチェックが、とんでもなくおそまつだったわけだ。この整備担当会社では、作業後の確認は試験飛行してみないと分からないらしい。正しく配線するノウハウを持っていないのだろうか。それとも、眠い目をこすりながら作業したのだろうか。彼らは、地上でできるすべてのチェックやテストをしたというが……。

ともかく、私の推測が外れたわけで、決め付けはよくないという一例であり、反省したい。(新事実が出てくればすぐ訂正しよう。)でもそのうち、別の機でエンジントラブルが起きるだろう、技術的な確率で……。そんな会社で整備するなら、さらに確率が高まる。

 

 

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