再生紙の品格                                                                岡森利幸   2008/1/20

                                                                    R1-2008/1/24

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2008/1/19一面・総合・社会面・

コピー用再生紙、全大手5社で偽装。

大王製紙「要求される品質のレベルが高く、古紙の配合比率を高めると、品質レベルが維持できない状況だった」

そろいもそろって大手のすべての製紙業者が製造していた再生紙が、年賀はがきに端を発して、実は「上質紙」だったことがばれてしまった。再生紙とうたわれていた紙が、実は見せ掛けであり、ほとんど新しいパルプを原料にしているものだったという偽装が発覚したのだ。一般的に「上質紙」より品質が落ちるのが再生紙だろう。そして、品質が落ちる分、値段も安い――というが常識だろう。しかし、「値段も安い」というのは正しくなかった。

メーカーは、いかにも「わが社は品質を大事にしている」というような、かっこいい姿勢を見せているが、実は、金(コスト)の問題なのだ。説明会見では、本音を言わないところが奥ゆかしい(もちろん皮肉)。メーカーが偽装するとき、すべてコストを安くしようという、せこいインセンティブがあるのだ。古紙が品不足であるとか、その買取り価格が高いとかではない。古紙を処理するのに、エネルギーを必要とし、コストと手間がかかることが、偽装した一番の要因なのだ。メーカーは古紙をうまく処理できないことを「品質レベルを保てない」と言い換えているだけなのだ。

古紙の割合を高めると、品質が落ちるというのは本当だろう。消費者の多くは、値段はともかく、再生紙という表示があれば、品質が落ちるものだと割り切って使うものだろう。しかし、メーカーは、そうは割り切っていないのだ。メーカーは品質にこだわり、「要求される品質のレベルが高いから(古紙の割合を下げた)」と言い訳しているが、その品質レベルはどれほど高いのだろうか。

消費者が高い品質レベルを要求しているというのは、メーカーが、責任を消費者に転嫁しているかのように聞こえる。メーカー同士の競争が、品質レベルを要求していることの一番の要因だろう。各メーカーは、他のメーカーより品質が劣るものを市販するわけにはいかない。他のメーカーが古紙を使いながらも品質を維持しているのに、自社ではそれができないとなると、メーカーは焦ってしまう。一社だけ、品質レベルが低ければ、目立ってしまうから、同じ事情を持つメーカー同士が、得意技を出して、密かに示し合せ、メーカーの中で差が生じないように、古紙の割合を表示より一律に低くしたものとも考えられる。手っ取り早く品質を維持するためには、古紙の割合を下げればいいのだ。それなら、技術的な競争も避けることができるから、メーカーにとっては都合がよかった。

エネルギーと手間ひまかければ、いくらでも品質を上げられるものだ。古紙の処理にコストを安くするのがメーカーの技術の見せ所であるし、メーカーの責任でもあるのだ。しかし、現状は技術的にうまくいかず、コスト高になってしまっているようだ。メーカーがコストに見合ったレベル以上の品質を保とうとしたところに無理があった。紙の品質レベルに明らかに差があるようでは、消費者は買わないし、安く買い叩かれることによって採算がますます維持できないところに、技術的な難しさと板ばさみになって、メーカーとしての悩みがあるのだろう。

そんなメーカーの実状を考えると、再生紙の品質レベルは低いという認識に立って、そして値段が少々高くても、消費者(政府が率先して)が再生紙を買うというようにしないと、紙のリサイクルはうまく行かないようだ。

 

 

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