ピストル型ライターの取り上げ方 岡森利幸 2007.9.15
R2-2007.9.23
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞夕刊2007/9/7社会・事件面 神奈川県警大和署の巡査長(33)が拳銃の形をしたライターを持っていた高校2年の男子生徒(16)を平手打ちし傷害容疑で現行犯逮捕された事件、注意せずに平手打ち。 生徒は9月4日午後10時半ごろ、相模鉄道二股川駅に停車中の電車の扉付近で、拳銃の形をしたライターで撃つまねをしていたが、駅員に注意されたため、ライターをカバンにしまい友人と談笑していた。近くで見ていた巡査長は「反省の色がみえない」と思い、次の駅で改札を出た生徒の髪を後ろからつかみ「拳銃を出せ」と命じたうえ生徒の顔を3回平手打ちしたことが、県警監察官室の調べで分かった。 生徒は「怖かったので口答えしなかった」と話しているという。当初、県警監察官室は、生徒からの事情聴取が終らない段階で、「ライターをもてあそんでいたため、巡査長が注意しようとして口論になったと思われる」と説明していた。生徒の母親から「事実と違うのではないか」と申し出があった。 |
改札を出たところで、こわもての男が後ろから高校生の髪の毛を引っ張り、「拳銃を出せ」とおどすようにいい、カバンから出されたピストル型ライターを取り上げてから、生徒の顔に平手打ちを3回もくらわせた。
通り合わせた人が、おそらく携帯電話で110番通報したので、警官がすぐに駆けつけたのだろう。警官がその乱暴な男を現行犯で捕まえてみれば、非番の巡査長だったというわけだ。巡査長は、その日は私服を着ていたから、警察官であることが知られなかった。
当初の報道で、「ライターをもてあそんでいたため、巡査長が注意しようとして口論になった」という県警の説明には、多くの人が納得してしまうような説得力があった。〈口論の末、平手打ちしたのなら仕方ない。生徒は反抗的だったのだろう。正義感からしたことだろうから、巡査長の肩を持ちたい〉と思ったことだろう。しかし、それは県警監察官室の早とちりだった。県警は、ろくに調べもしないで、思い込みで報道機関に状況を説明したのだ。(警察の思い込みは職業上の習性らしい。それに「身内」のしたことをかばう習慣もある。)
母親は息子の話を聞いて、報道された内容が「事実と違う」と警察に申し入れた。息子の話と報道内容が大きく違えば、息子の名誉のためにも、それは必然だろう。ネット上では、〈息子をかばう母親に問題がある。親が甘やかして息子の言いなりになっているから、ピストル型ライターで悪ふざけするのだ〉というような批判的な意見もあるが、この息子は素直で明るい性格の、どこにでもいるような高校生のようだから、親を非難するには当たらないだろう。
若い人、特に高校生は、車内や公共の場で傍若無人に振舞いがちであり、多くの大人たちに好ましく思われないものだ。おそらく、この巡査長も日ごろから車内で乗り合わせる高校生たちに、いい感情をもっていなかったと思われる。この生徒が駅員に注意され、ライターをカバンにしまったものの、その後は何事もなかったように耳障りな声で談笑していたことに、巡査長はイラついてきた。彼らの話の内容は意味不明のことばかりで、地元訛りが加わって聞きづらかったと思われる。われ関せずで傍観していたのだが、生徒に「反省の色が見えない」ことに、だんだん腹が立ってきた。巡査長にとって、「反省していれば、談笑しない」ものらしい。
改札を出てから暴行に及んだ。ある種の正義感があったかもしれないが、それは大義名分に等しかった。ライターを取り上げるとともに、その長髪の生徒を「生意気だ」と思って、顔を張りとばした。それは腹いせ的な行動だろう。
この巡査長は、生徒が車内でピストル型ライターを人に向けたりして、ふざけている場面に最初から居合わせ、駅員が来てそれを注意する一部始終を見ていた。それが問題なところだ。一人の大人として、駅員が来る前に一言注意するのが、本当の正義感の持ち主だろう。注意したのに、それでも従わなければ、そこで一発、張りとばせばいいのだ。
その後に判明したこと。
毎日新聞夕刊2007/9/22社会面 相模鉄道広報担当「大声で話すこともあったが、(車掌の)注意は率直に聞き入れた。車内に乗客はなく苦情もなかった」 ライターは回転式拳銃型で長い銃身が特徴。生徒がアルバイト先で拾ったものといい、火はつかなかった。 巡査長は、日勤の業務を終えた後、日本酒と焼酎系4杯を飲んで帰宅するところだった。隣の車両から生徒を見ていた。逮捕後、巡査長の呼気から1リットル中0.15ミリグラムのアルコールが検出された。 |
ライターを拾ったアルバイト高校生に、酒癖の悪い巡査長がからんだ事件だった。
品行方正な横綱ではつまらない