献血とエイズウイルス                                         岡森利幸   2008/2/28

                                                                    R1-2008/3/1

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/1/25身近なニュース

2007年に献血された血液で、HIV陽性が100人を超すことが、日本赤十字社のまとめで分かった。HIVについては本人に伝えていない。

毎日新聞朝刊2008/2/13社会

HIV感染、昨年初の1000人超。(1997年から2007年の感染者数が右肩上がりの図が示されている)

厚生労働省エイズ動向委員会の集計(速報値)で1048人に上ることが明らかになった。

一方、新規のエイズ患者数は400人で、前年の406人から微減した。厚労省は保健所などでのHIV検査件数が前年より約4万件多い過去最高の21万4347件に達したことを理由に、「検査で発症を防げているケースもある」と見ている。

HIV(1*)陽性が100人以上とは、献血者の数と比べると、まだ少ないようにも思える。でも、着実に増えていることは大きな問題だろう。HIV感染に関して効果的な予防策がないものだろうか?

本人に伝えていないことは、たてまえではないか、と私は疑っている。日本赤十字社としては、ウイルスが混じった血液を献血してほしくないから、HIV検査目的での献血を拒否する姿勢を見せるために、そんなことを言っているのだろう。しかし、HIV陽性を本人が知らなければ、治療が遅れるだけでなく、エイズを発症するまで、本人が無意識に他人にウイルスをばら撒く可能性があるから、これは感染防止の意味からも非常にまずい。伝えなければ、彼はまた献血にやってくるだろう。はっきりとした理由を示さずに献血を断るわけにもいかないだろう。本人に伝えると、HIVに感染するような「やましいこと」をした人が検査目的に献血者に紛れてぞろぞろやってくるから困る、と日本赤十字社が眉をひそめるのだが、伝えることにも、大きな必要性があるのだ。「HIVについては本人に伝えていないことになっている」から、検査目的の人は献血していないと仮定すれば、検出された100人以上のHIV陽性者は、本人が知らない間に感染した人たちになる。そんな人たちが増えているということも問題だろう。

献血された血液を生で輸血するようなことは、エイズウイルスだけでなく、すべての感染症の危険がある。HIV検査の精度も、技術的に限界があるから、血液製剤などすべて加熱処理などして無菌化しなければ、他人にそのまま輸血するようなことはだめだろう。HIV陽性であろうと何だろうと、無菌処理して血液を使えばいいのだが……。あるいは、HIV陽性者の血液は加熱処理することを前提として献血してもらえばいいのかもしれない。細菌やウイルスの無菌処理もしないで、献血された血を使うのは、そろそろやめるべきだろう。医療の目的で血を集めているのに、感染を広めて病人を増やしてしまうような、逆の効果になってしまう。

HIV検査件数が前年より約4万件多い過去最高の21万4347件あったというから、不安を抱えている人はかなり多い。保健所が無料で検査してくれるそうだが、一般の人にとって、距離的に不便だったりして、わざわざ保健所や病院には行きにくい面もある。それに対して献血の場所はだいたい便利なところにある。専用のバスで近所に来てくれたりもする。

血液を集めるだけが、日本赤十字社の使命でもないだろう。エイズは人類の存亡にもかかわる病気だろう。血液集めよりも、HIVの拡散を防ぐ方がもっと重要だろう。HIV感染者を見つけることが大きなキーポイントになり、感染防止につながるだろう。HIV陽性者を早く多く見つけて、治療と予防に努めることが必要なのだ。世界のある地域のように、加速度的にHIV陽性者が増えてからでは遅いのだ。日本赤十字社は積極的に、献血とは別に、HIV検査もしますから、疑いを持っている人は気軽に来てくださいと広報するぐらいのことをしたらどうだろう。疑いを抱く人の血液が陰性ならば、献血に回せばいいのだし、献血の際に陽性の疑いがあると本人が申告するなら、献血を単に拒否するのでなく、それを精密検査に回せばいいだけだろう。

 

1* Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス) エイズウイルスとも言う。

 

 

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