匿名領収書の非公開                                                 岡森利幸   2007.6.7

                                                                                                                       R1-2007.6.9

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/5/30社会面

捜査協力者が特定されないよう謝礼支払先の実名などを隠した匿名領収書の情報公開について、最高裁は、滋賀県警に公開を命じた大阪高裁判決(06年3月)を破棄し、市民オンブズマン側の請求を棄却した。

判決は「記載内容や筆跡から支払先の特定が容易になる可能性を否定できず、公開すると捜査協力を受けることが困難になりかねない」と指摘した。

滋賀県警の「捜査に支障が生じる」という主張を認めた。

市民オンブズマンが公開を要求したのは実名領収書ではなく、匿名の領収書である。それさえも、情報公開されないとは驚きであり、そんな判決は大きな疑問をもたせる。その謝礼が実際には警察内部に還流されていることが、各所で疑惑になっているというのに、これでは、警察はいくらでも領収書を勝手に書いて、つまり領収書を偽造して裏金に流用できることになってしまう。そんな領収書までも非公開になってしまっては、不正が警察の内部だけの、決してばれないしくみになる。

捜査に協力することは、一般市民の義務でもあるから、そもそも謝礼など必要だとも思えない。それを目当てに協力する人がいたとすれば、相当怪しい人だろう。警察の都合のいい証言をした場合にも、謝礼が出るのだろうか。(皮肉をこめて)

協力費をもらうほど功績があったというのは、一般市民として本来、名誉なことだろう。捜査協力者は、賞賛されるべき人たちであり、逃げ隠れすることではないだろう。といっても、密告のようなケースもあるのかもしれない。密告したことであれば、他人に(特に犯罪者に)知られたくないのだろう。つまり、「捜査に支障が生じる」というのは、密告が減ってしまうということなのだろう。

捜査協力者のために警察が支払った金の領収書だから、それは捜査協力者が書いて警察に渡したものだ。それで「記載内容や筆跡から支払先の特定が容易になる可能性」があるといっても、それはきわめて稀なケースだろう。そして、特定されたと仮定しても、それが協力者にとって都合の悪いケースである可能性は小さいことだろう。特定されたとしても、ぜんぜん平気だという人が大多数だ、と私は思うのだ。捜査に支障が生じるというのは、捜査実績の数値に表れてこないほどの、ほとんど稀なケースであろう。そんな可能性より、捜査費が警察内部に流用されてしまう可能性の方が、ずっと大きい。そして、公開せよと判決した高裁の命令を不服とし、最高裁にまで持ち込んで非公開にこだわる滋賀県警は怪しい、と考えられるのだ。公開されては、偽造がすぐにばれてしまうような領収書であったのだろう。

それでも非公開にするというのなら、その期間を限定し、非公開の時効を定めるべきだろう。たとえば発行後10年間だけを非公開とする。いつか匿名領収書が情報公開されるときに、〈自分が特定されては、とにかく絶対にいやだ。特定されるのであれば捜査に協力しない〉というような人がいれば、手書きの領収書を発行しなければいい。つまり、謝礼をうけとらないか、または筆跡のわからないワープロなどで領収書を発行すればいい。署名だけは自筆で書くことになるが、もちろん、それは公開時に黒く塗りつぶされる。つまり、特定されないようにもう一つ工夫をすれば、領収書の情報公開を理由として〈捜査に協力しない〉と言い出す人はいないだろう。

 

 

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