証拠金取引の甘い勧誘                                                岡森利幸   2007.7.11

                                                                      R1-2007.7.13

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/3/18:経済面

外為証拠金取引が活況を呈している。差益を求め個人が続々参加。

相場次第で大損もある。

毎日新聞朝刊2007/7/7:経済面

農林水産・経済産業両省は、商品先物取引大手の小林洋行を商品取引書法違反(不当勧誘、虚偽報告)で商品取引受託業務の停止処分にした。

(1999年度以降だけでも)隠していたトラブルは600件以上に上った。

商品先物取引にも証拠金が使われる。証拠金を納めることには、取引に参加することの意思表示をするという意味があり、実際に商品を購入する資金とは違うことに注意を要す。取引のための手付金のようなものかもしれない。差損が生じた時のための準備金のようでもある。商品を購入するだけの資金が手元になくても、証拠金を出せば、取引は成立する。その約定期日になって決算するときに、それは基本的に返還されるものだ。だから、商品の実勢価格との差がプラスのとき、取引量に対応した分から、委託した商社への手数料と税金を差し引いたものが利益になる。しかし、実勢価格の差がマイナスならば、手数料とその差額分を支払わなければならないから、証拠金は確実に目減りし、さらに差額によっては証拠金だけでは足らずに、それを穴埋めするための金が必要になる。「元金」としての証拠金を失うだけではすまないこともある。

儲かったという話も聞くのだが、そんなバクチ的なことは、私にはできない。

セールストークでは「確実に儲かる」といっていたのに、大損したという客とのトラブルが絶えないのが、この業界だ。だから、「話が違う」などという客からの苦情は、所轄官庁に報告する義務が商品先物取引業者に課せられるようになった。

しかし、それをひたすら隠して、官庁の立ち入り検査で、とうとうばれてしまったのが小林洋行(*1)だ。業務の停止処分だから、重い処分である。顧客の信用が必要な業界にとって大きな痛手になるようだ。隠さずにはいられないほど、トラブルが多かったのが問題だろう。何と、小林洋行は顧客の意思に沿わないことを勝手にやっていたという事実も浮かび上がっている。

手数料で利益を上げるためには、顧客を強引に取り込まなくてはないない事情があるにしても、小林洋行は、しつこい勧誘を全国的にやっていたようだ。電話をかけてきて長話をする。顧客の家に押しかけて売り込む。あるいは、セミナーや投資相談会を各地で開き、客を誘い込むのが常套手段である。一度もうかった客には、さらなる大バクチを勧める。

一般人が先物取引に手を出すためには、勧誘員以上に、関係する専門の知識や情報を多くもち、高い分析力がなければ、儲けることは難しい。勧誘員に教えられたことを信じ込むようではだめだろう。

 

私の場合にも、たびたび電話がかかってきた(どうして私の電話番号を知ったのか?)。

その勧誘員は〈自分は怪しいものではないこと〉を強調して置いてから、次には〈今、取引すれば確実にもうかる〉という話を、流暢な語り口で、間を置かずに、しゃべりまくる。熱心に勧めてくるものだから、私が話に乗せられて(乗せられた振りをして)、適当に受け答えしていたら、彼は我が家に来て説明したいと言い出した。私は驚いて、

「私は忙しいから、家に来るまでもなく、資料を郵便で送ってきてくれ。それを読んでからだ」と来訪だけは断った。

数日後、『東証一部上場』を誇らしげに掲げる会社のパンフレットや、イラク情勢などの余計な資料まで送ってきた。イラク情勢が相場に影響していると言いたいらしい。

また数日後、彼から電話がかかってきた。

「資料が届きましたか?」

「届いたけれど、興味がないから、読まずにそのままゴミに出してしまった」

それ以来、その勧誘員からの電話は来なくなった。

 

*1 小林洋行、19493月設立。その後、吸収合併・分社化を経て中堅規模のグループ組織(フジトミ、共和トラスト、フェニックス証券、丸梅は連結決算の子会社)になり、商品先物取引・証券業を営む。クループは外国為替証拠金取引や商品ファンドも扱っている。

ちなみに、辞書によると、「洋行」には「商店」の意味がある。

 

 

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        日雇い派遣の低い賃金と高い手数料率