高額療養費の不安な広告                                               岡森利幸   2007.6.14

                                                                                                                       R1-2007.6.27

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/5/26くらしナビ面

入院したとき、100万円以上の医療費がかかる――。そんな不安から高額な民間医療保険に加入している人が多いが、公的な健康保険で自己負担に上限を設けているため、実際の自己負担はかなり低い。ところが保険会社のパンフレットなどにはそうした上限額は明示されていない。

昨年7月、厚生労働省保険課が生命保険協会などに「パンフレットや広告には、高額医療費に関する説明をわかりやすく書いてください」という通知を出した。パンフレットに注意書きが加えられるようになったが、高額療養費のことは虫眼鏡で見ないと読めないほどの小さな字で、「医療費の還付は考慮されておりません」と印刷されている。

保険会社の広告とは、保険に入ればいいこと()くめであり、わずかな掛け金(ただし医療保険は相対的に高い)で、大きな保障が得られるというものがほとんどだ。確かに、保険金を受けられることは、降りかかった災難に経済的な面で補助されるので、ありがたいものだ。一部の人は、「保険に入っていてよかった」と、不幸中の幸いとしてありがたく思うときや、あるいは「保険に入っていれば……」と後悔するときがあるだろう。

何かあったときに助かるという現実的なメリットだけでなく、保険に入っていれば安心だという日々の心の安定にも保険は有用だ。特に、年代の高い人々は、自分の健康に不安を抱えるようになる。さらに同年代の知己が大病を患ったとか、骨折したとかというような話題が身近になると、〈自分は健康だと思っていたが、いつ入院するようなことになるかもわからない〉と考え始める。しかも入院したら高額な費用がかかるとなると、もう保険にすがるしかないようだ。

ただし、高額な医療費に関しては、公的な健康保険で自己負担分が限定される。そのしくみは、本人の所得額や差額ベッドなどによっても計算値が異なるから、ややわかりにくいところがある。保険会社にとって、人びとを保険に入らせて保険料を稼ぐためには、不安をあおる手段が有効なのだが、保険会社が高額医療の実際の自己負担額をよく説明したのでは、その効果が薄れてしまう。

厚生労働省の指導に従って保険会社が付け加えるようになった「医療費の還付は考慮されておりません」などという否定文など、一読しただけではよく意味がわからないから、多くの読者は気にも留めないのではないか。この否定文が暗に示すところは、〈医療費の公的保険からの還付を考慮すると、自己負担金はわずかな金額で済む〉という意味だ。具体的には、100万円以上の医療費がかかるケースで、一般的な所得の人なら、10万〜15万円が自己負担分という。

保険会社としては、そんなことはできるだけ小さな字で遠回しな表現で書きたくなるのだ。

 

 

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