機体のマークを塗りつぶす                                         岡森利幸   2007.8.29

                                                                     R1-2007.9.28

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2007/8/22社会面

中華航空(台湾)が事故機の機体(8月20日午前10時35分に炎上)のロゴを塗りつぶす。

中華航空は、21日、事故機の胴体左側にある「CHINA AIRLINES」という英語の社名ロゴと垂直尾翼のある紅梅の花のマークを白いペンキで塗りつぶした。企業イメージの低下を回避する狙いとみられる。

同社は事前に国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)に了解を求め、事故調は調査には支障がないと判断してその要求を受け入れた。

中華航空の広報担当「国際慣習に従った。詳細はよくわからない」

機体は折れ曲がり、そのほとんどが焼け焦げ、ところどころに穴が開いていた。その残った機体には、航空会社のロゴがはっきりと読み取れていたのだが、それが事故の翌日に、その航空会社の手によってペンキで塗りつぶされてしまった。事故調査がまだ終っていない段階で、その日の検分が終った後、宵闇に乗じてそそくさと作業が行われた。

事故機の機体に描かれたロゴをすぐに塗りつぶすことが、国際的な慣習だろうか。いや、そうではないだろう。国際的には、事故の調査が完了するまで(事故調による現地での機体調査は25日まで行われた)、そのままにしておき、手を加えるようなことはしないのが普通だろう。各メディアの記者の目にもそれが奇異な行動として映り、塗りつぶす前と後の写真を並べて報道した。塗りつぶしたことが、ニュースとして広く世の中に伝えられたのだから、『恥の上塗り』だろう。

そんな行為は、潔くないのだ。自分たちの「看板」をペンキで汚すようなものだろう。体裁を取り繕うような、虚飾に通じるところがある。私には、その行為によって「証拠が隠滅された」というイメージもわき起こる。

事故機の機体から自分たちの社名ロゴやマークを消してしまいたいという気持ちは、ヒトがもつ『国際的な感覚』だろう。炎上した無残な機体を航空会社のロゴ付きのまま、多くの人の目にさらしたくなかったのだ。企業イメージが下がるというビジネス上の損得を考えたというより、単純に恥ずかしい思いがあったのだと私は考える。それならば、目くじらを立てることでもないようだ。しかし、事故から数日が経っただけで自分たちの会社のロゴをペンキで消してしまうことを最優先に考えたことに、私は不信を感じる。目に見える部分だけ気を使い、目に見えないところは手を抜くようなことをしていたのではないか。

事故機体が企業イメージを低下させることを心配するよりも、彼らには他にやるべきことがあるだろう。その恥かしい気持ちをバネにして、安全運行の具体的な方策に振り向けてくれればいいのだ。

 

 

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