機体のボルトが外れた                                                    岡森利幸   2007.8.29

                                                                     R1-2007.9.1

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/8/24一面・総合面

中華航空機炎上、燃料タンクに穴。

ボルトが外れ、スラットのアーム(スラットトラック)によって押されたとき、ボルトが燃料タンクを突き破った可能性が高い。

ボーイング社への聞き取り調査では、同タイプの機体でこれまで少なくとも2件、ボルトが外れた例があり、うち1件は燃料が漏れていた。ボーイング社は、ボルトの脱落について05年12月、航空各社に注意を喚起する「サービス・レター」を出していた。

毎日新聞朝刊2007/8/26社会面

中華航空機炎上、整備ミスの疑い濃厚。脱落ボルトは先月点検していた。

問題のボルトをめぐっては、過去同型機でアーム先端部のボルトが緩み、脱落した例が2件あった。このためボーイング社は06年に新しいナットで締め直すように注意喚起を促す通知を航空各社に出していた。

毎日新聞夕刊2007/8/27まち・くに・世界面

那覇空港での中華航空機(ボーイング737‐800型機)爆発炎上事故に関連し、米連邦航空局は、同系列機計783機を保有・管理する米国内の航空会社などに対し、主翼部分にある高揚力装置「スラット」を緊急点検するよう命じた。(*1

8月20日の午前に那覇空港で、着陸直後に機体が炎上した事故の原因が、かなり分かってきた。外れたボルトがスラットのアームに押し込まれ、燃料タンクを突き破ったことで、その燃料が大量に漏れ出したのだ。それがエンジンの熱で発火して機体全体を火が包んだ。

スラットとは、航空機の離着陸のときに主翼の前縁部をせり出し、主翼面積を広げるのと同じ効果で揚力を得るものだ。つまり、揚力があれば、低い速度で、短い滑走路に降りたてるというメリットになる。

せり出したスラットは、着陸してしまえば、元に位置に引き戻される。スラットを支えるアーム部分が、一定の長さを持つシャフトのような形をして、油圧によって伸び縮みする。長さがあるものだから、主翼の奥内に仕舞われる。主翼の内部はガソリンタンクが占めているが、アームを格納する部分では、ガソリンタンクは、へこんでおり、互いに接触しないようになっている。その袋状の構造になっている部分は、狭い空間だ。

おそらくスラットをせり出したときにアームの先端のボルトが外れ、着陸後に、格納のために油圧によって作動するアームの先端部が、その袋状の狭い構造の中でボルトを押し込み、それがタンクの壁面を突き破ってしまったのだろう。

アームを仕舞いこむスペースを確保するために、タンクの一部を袋状の構造にすることは、仕方のないことだろうけど、スラットの整備点検を困難にさせていたようだ。そんなボルトなど、スラットの交換作業のとき以外は、点検項目にも上がっていなかったという。そのボルトが緩みやすく、外れやすい「しくみ」になっていたことが根本的な欠点だろう。一般的に、ボルトの一つが外れても、大きな問題につながらないけれど……。

過去に同様な不具合があり、メーカーが注意喚起を促す通知が出されていなのに、航空会社がそれを軽く見たのがいけない。『うち1件はタンクを傷つけて燃料が漏れていた』というのに、重大な事故につながりうるという認識がメーカーにも航空会社にも不足していたに違いない。メーカーは、燃料タンクが破れて燃料が漏れ出したことがあるのを明記していたのだろうか。そこまで詳しく書かれていなかったと思われる。

05年12月にサービス・レターが出たのなら、航空会社は、一年以上もほおって置かずに、さっさと新しいナットに変えるべきだったろうし、「ボルトが外れやすい」という認識で、慎重に整備すべきだったろう。中華航空が先月行なったという点検のとき、手順に従った整備をしていなかった可能性が浮上している。そのときワッシャをつけていなかった(作業中に機内に落とした?)可能性が指摘されている。

ワッシャをつけるか、つけないかでボルトやネジの締め付け効果が大きく違うことは、私もよく経験している。その指摘が正しければ、かなりいいかげんな整備をしたことになる。あるいは、ボーイング社が指定した新しいナットにもボルト外れを防止する効果がほとんどなかったことになる。

 

*1.米国での緊急点検の結果、数日のうちに、ボルトのゆるみが4件発見されたという。1件は、事故の状況に近似して、脱落したボルトによってアームの格納部を傷つけられていた。製造時よりワッシャが付けられていなかったという製造ミスも疑われている。

 日本の航空会社が所有する23機を緊急に点検したところ、日本航空のほとんど新品のボーイング737‐700型一機でワッシャが取り付けられていないものが発見された。

 

 

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