監督、胸を開けすぎですよ                                     岡森利幸   2007.6.1

                                                                      R2-2007.7.5

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2007/5/28一面

河瀬監督にカンヌ・グランプリ

第60回カンヌ国際映画祭で、日本から出品された河瀬直美監督の「(もがり)の森」が、最高賞のパルムドールに次ぐグランプリ(審査員特別大賞)を受賞した。

「殯の森」は、妻に先立たれた認知症の老人と介護施設で働く、子どもを亡くした女性が森の中で一夜を過ごして心を通わせ、生と死を静かに見つめる姿を描く。

この映画が審査の専門家たちから国際的に評価されたのはすばらしいと思うが、日本で劇場公開されていない作品をカンヌの映画祭に出したことに、私はややアンフェアのような思いをいだくのだ。ややアンフェアというのは、日本での評価、少なくとも一般の人たちの評価がまだ固まっていないのに出品したことだ。日本で多くの人に高い評価を受けてからカンヌに持ち込んでも遅くはなかったと思う。

一般人の評価など、当てにならないのかもしれない。特に、こういったシリアスなストーリーでは、一般受けするかどうかは疑問なところだ。私自身の評価はもちろん映画を見てからにしよう。私には、金を払って観るに値する映画かどうかの評価をするためには、金を払って観なければならないというジレンマがある。

映画関係者としては、多くの人に観てもらうためには、前評判を高くしなければならなかったという事情があったのだろう。何か話題性がなければ、前評判も高くならないのだ。話題性がなければ、どんなにいい作品でも、人々は映画館に足を向けようとしない。

この大きな賞をもらったことで、宣伝効果が高まって今後の興行に大いにプラスになることは確かだ。マスメディアもそれを取り上げてニュースにするから、世に知らしめるためには、賞をもらうことが大々的なコマーシャルを流すより効果的なのだ。日本人は特に「賞」という名のプレミアムに惑わされやすいので、人々の見る目がちがってくる。受賞によって作品に(はく)がつき、監督としての名声が得られるという効果も生じる。批判する声があったとしても、小声になるだろう。

 

受賞が決まった場面で監督の黒いドレスで着飾った姿を見て、余計な一言をいうと、

「監督、胸元を開けすぎですよ」

あいさつを交わしたりする時など、そのひときわ大きく胸元を開けたドレスでお辞儀(じぎ)をしてはいけません。(大変失礼しました。)

 

 

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