介護報酬不正請求がばれた                                          岡森利幸   2007.5.30

                                                                     R2-2007.8.6

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/5/30社会面

訪問介護の大手3社(いずれも東京都)の介護報酬不正請求、計4億円

不正請求額は、人材派遣業「グッドウィル・グループ」が運営する「コムスン」は2億261万円、「ニチイ学館」は8547万円、「ジャパンケアサービス」は1億3837万円に上ることが分かった。3社は全額の返還を盛り込んだ業務改善報告書を都に提出した。

介護というのは大変な仕事である。実の親を無報酬で介護する場合でさえも、不満や苦労を口に出したくなるのだ。他人を介護するヘルパーと呼ばれる人たちも、世の中に少しでも貢献しようとする心やボランティア精神を保ち続けなければ長続きしないだろう。決して楽しい仕事ではないだろう。その報酬も高が知れているものだ。苦労する割には報酬が少ないという現実がある。訪問する際の交通手段も必要だが、実費をベースにした交通費しか支給されないから、儲かるような職業ではない。(以上の内容が、単に私の先入観であればいいが……。)そんな献身的に介護する人たちを使って管理運営する会社には、どんなうまみがあるのだろうか。

そもそも介護という社会事業は、営利を目的とするような会社には向かない。本来、そんなに事業者に利益が上がるしくみにはなっていないはずだ。しかし、なかでもコムスンには、業績を伸ばし、急成長してきたという不思議な実態がある。コムスンの決算報告は、グッドウィル・グループの連結に含まれて報告されており、明確ではないが、グッドウィル・グループ全体利益の約3割に貢献していると見られる(*1)。他の介護業者より、断トツに利益を上げていたのだ。

公的機関が介護保険で集めた金の中から、介護の報酬として支払われる金でそれらの会社は主に運営されている。介護利用者からの負担金(本人負担1割)も得られるが、それは高が知れているし、彼らから過剰に金を受け取ることはできないだろう。しかし、公的機関に介護報酬を多めに請求すれば、その分、会社が儲かる。その不正が日常的に行われていた実態が明らかになってきた。

東京では、不正請求額は最終的に4億円と確定したが、東京都が厳密にすべての伝票について、実際に介護したものであるかをつき合わせて調査したとは思えない。不正と判明したのは氷山の一角だろう。大手3社が揃いも揃って不正請求していたとは、それが組織的で、かつ意図的に行われたと思われても仕方ない。その額が半端ではない。3社は請求すれば、請求した分だけ、金が下りると考えていたのだろう。確かに公的機関は、内容はともかく書類の形式に不備がなければ、対応してくれる。(皮肉をこめて)

業務に対する報酬が少ないというのは介護業務者一般の不満かもしれない。それが、請求を多めにしていいという理由にはならない。はっきり言えば、いずれの会社も詐欺的である。公金の横領をたくらんだかのようでもある。ばれたら返還すればいいというものでなく、刑事罰が加わっても、おかしくはない悪質な行為だ。特にコムスンは、〈監査が入れば、すぐにばれるようなこと〉を各地で行っていて、不正請求や虚偽申請がばれた時には処分が下ることになるのだが、処分を受ける前にその事業所を閉所していた。コムスンは事業所を複数(6月現在で、訪問介護サービスの拠点は1110)持っているから、数カ所の閉所による実質的なダメージはない。経営方針が、〈ばれてもいいから、ばれるまで、稼げるだけ稼ごう〉とする拝金主義的な姿勢に凝り固まっている。社会貢献するどころか、社会から金を吸い上げることに腐心(ふしん)していたようだ。

 

今回の発覚で、3社は今後、早々に同じことを繰り返したりするとは思えないが、不正請求がさらに巧妙に行われる可能性があるだろう。請求のしくみをもっと厳密に(健康保険のしくみと同様に適切に)する必要がありそうだ。そうすると、うまみにつけこんでいた儲け第一主義のような会社はごっそりと撤退し、慈善事業的な零細な会社しか残らないのかもしれないが……。

 

*1 グッドウィル・クループの06年6月期の連結売上高は、1859億円。そのうち、人材派遣関連のグッドウィルが1075億円、次にコムスンが638億円。

 

 

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