学歴詐称の職員たち                                                        岡森利幸   2007.9.2

                                                                     

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2007/9/1社会面

横浜市が学歴詐称に該当する職員507人を停職1カ月の懲戒処分にすると発表した。

同様の学歴詐称で、大阪市は職員965人を停職1カ月、神戸市は36人を論旨免職、2人を懲戒免職の処分にしている。

詐称という言葉には、大きな疑問符を私は付けたい。

学歴詐称が咎められるのは、その学校を卒業していないのに、卒業したというケースだろう。それに対し、卒業したのに卒業していないというのは、ただ奥ゆかしいだけで、他人をだまして自分が得をしようとするような詐欺的なことではないと私は思う。各地の自治体がそれを問題にして、わざわざ採用後、何年も経ってから、そうした職員に自己申告させ、処罰するのはおかしい。普通の民間企業ならば、ありえない処罰だ。

彼らは採用条件を十分に満たしており、不足しているわけではない。就職の場合、それによって(レベルを下げることによって)採用されるという「得」があるではないかという反論がありそうだが、そのレベルの学校を卒業しているという資格や能力が問われるのであって、それ以上のレベルの学校(大学などの上級校)を卒業していないことが資格になるというのは変である。その資格や能力が上回っていても、実際の職務にはプラスにはなっても、何のマイナス要因になりえない。特に公務員の場合、公僕ともいうぐらい、住民に対するサービスを主とする仕事をするのだから、過剰な資格をもっていても、業務に差しさわりはない。資格がないのならともかく、資格がありすぎることには、住民にとってどうでもいいことである。市が市の業務に影響が出ないように、処分の職員たちの停職時期をずらすといっても、彼らが職場を離れるのは、住民にはいい迷惑だろう。

採用試験で、不採用になった者がその高学歴者に押しのけられたという不利益があるかもしれない。しかし、採用試験は、よりよい人を選考するためのものであって、同じ労働条件で働く上で、よりよい人が採用されるだけだ。不採用になったのは、単に競争原理が働いたのだ。試験は公正だったはずだ。高学歴を隠すことで、低学歴者と同じ土俵の上で採用試験に臨んだのだ。採用試験で不正なことをしたわけでもない。採用する側にとっても不利益になることはなにもないのに、不当だというのはおかしい。採用者は、よりよい人材を採用すればいいのであって、採用しなかったものに対して変な同情は無用だろう。採用後も、職員たちを区別せずに同じレベルの給料を払っているのだろう。

職業の選択の自由という権利を侵害するようなことである。たとえ、本人の学歴にふさわしくない低レベルの職種を選んだとしても、その人の意思によるものであり、他人(特に採用者)がとやかく言う問題ではないだろう。それでなくても、低いレベルの職種を選ぶことは『身を落とす』ようなことであり、本人たちはつらい選択をしているのだ。

そんな市の考えだと、職員は夜間や放送大学などを利用して学位を得ることもだめということになるのだろう。

 

 

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