クレジット販売の誘惑 岡森利幸 2007.6.20
R1-2007.8.19
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞夕刊2007/6/15社会面 甘利明経済産業相は、クレジット契約による高額の消費者被害を防ぐため割賦販売法を改正し、クレジット会社の事前審査を厳格化する方針を明らかにした。 英会話最大手のNOVAが一部業務停止命令を受けた件では、クレジット契約により被害額が高額に上っていた。特定商取引法とともに来年の通常国会で法改正を目指す。 |
NOVAを引き合いに出すまでもなく、消費者が悪徳業者によって高額な商品やサービスをクレジットにより買わせられたというケースが枚挙に暇がない。信販会社が消費者を過剰与信して、悪質販売を助長している例も多い。割賦販売法の改正によって、弱い立場のわれわれ消費者をどれだけ救えるのかは、この記事だけではよく分からないが、改正しないよりはましという程度であろう。今までクレジットに関して、業者への変な配慮があって効果的な改正が行なわれた例がないから。(皮肉をこめて)
NOVAの例に関する記述を読んで、多くの顧客が長期のレッスンコースを選んだ理由が分かった気がした。NOVAは、「クレジットを使えば、支払いは月謝と同じですよ。負担にはならず、前払いによって大きな割引が得られるのですよ」などと顧客に吹聴していたのだろう。
ヒトの欲望の一つが物欲だろう。具体的な対象を心に描くと、あれも欲しい、これも欲しいと思うようになる。一つを手に入れれば、また次のものが欲しくなる……。コレクターと呼ばれるある特定のものを集める習性の人もいるし、金に飽かしてろくに使いもしない高級なものを次々に買う人もいる。買い物をすることが不満のはけ口になったりもする。
その物欲を満たすためには、金がなければならない。物欲を制止する最も大きな役割を果たすのが、〈金を持っていない状態〉である。金を持っていないことが物欲を静止するためのブレーキになっている。しかし、そのブレーキを外すしくみがある。クレジットだ。あるいはその他の金融システムだ。
クレジットを使うと、金を持っていなくても買えてしまう。商品がいくら高額であっても、現代ではクレジットの契約書一枚、あるいはクレジットカードで買えてしまうところに、便利でもあり、不便でもあるのだ。物欲に弱い人を結果的に困らせ、高額すぎる商品を買わせようとする悪徳販売業者をはびこらせる元凶になっている。多くの人々が、ブレーキの利かない人間の弱さに付け込まれてしまうのだ。さらに悪徳業者の場合、下心のある親切心や甘い誘い、不安をあおる手口が加わる。
クレジット契約をしてしまうと、支払うのは未来の自分だ。未来の自分に支払わせることに、責任を持たなくてはならない。つまり、今支払うのが大きな負担であるのなら、未来の自分にとっても大きな負担であることを自覚していなければならない。しかも、クレジットにはマージンや割増が加わる(その分がクレジット会社の利益になる)から、未来の自分にはさらに重くのしかかる負担(負債)にもなりうる。月払いで少しずつ支払うにしても、それをトータルすれば、とんでもない金額にもなる。その計算をすれば、一度に支払った方が得であることが明らかだ。(計算にも弱く、物欲にも弱い人は、どうしよう?)
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