7月22日  父と子 






私が・・・      初めて親父にチヌを釣りに連れて行ってもらったのは、小学校低学年の頃だったでしょうか。


確か親父はその頃、夏の夜釣りで長門市仙崎の、どっかの造船所みたいなとこに行ってたと思います。
民家の前を通り、親父が民家の人に、「家の前で釣りをさせてくださいね!」 とか挨拶をして、夜道を歩いて釣り場まで行ったことを
覚えています。

竿を何本か出し、ゆらゆらと波間を漂う、赤い電気浮子を見つめてたことを覚えていますが、当時私がチヌを釣ったことがあるかどうか
までは覚えていません。

大概夜中に途中で寝て、気が付いたら朝。

それでも家に帰りついた後の親父のクーラーの中には、しっかりとチヌが入っていたのを覚えています。


親父も昔は結構行ってたみたいで、我が家の物置には昔親父が使っていた釣り道具がたくさんしまってあります。
磯竿や投げ竿、のべ竿なんかもありますが、何しろ昔のものですから今はもう使えません。


私が、小学校の高学年になって以降は、親父と釣りをした記憶はありません。
私はブラックバスにハマり、親父は釣り自体、行かなくなったと思います。 


あれから30年。



時はめぐり   また夏がきて   あの日と同じ   流れの海     って感じでしょうか。




え〜っと、遂にわだす、わが息子と初めて一緒にチヌ釣りです。

親としては、ようやく子供も一緒に釣りに行けるようになったかと、な〜んかしみじみです。
30年前の親父も、同じことを思っていたのではないかと思います。



場所は、小野田一文字。

得意の団子釣りしてればボーズはないっしょ! 子供に釣りの楽しさを知ってもらって、また行きたいって思わせて〜・・・
要は私の味方を作っておこうって作戦ですな。


ってことで、本日7月22日(日)、息子と初めてチヌ釣りに行ってきました。
私としては子供に4〜5枚位釣れて、「たこーちゃん(息子は私のことをこう呼ぶ)、チヌ釣りって面白いね〜!また行きたい!」って
言ってくれたらええねんけどな〜・・・   


なんて思ってましたが・・・




さて、久しぶりに小野田一文字にやってきた私、前日土曜日には、中村氏が2桁安打を達成したらしいのですが、食いは浅く
渋いとのこと。 満潮前からパタパタッと釣れて、他の時間帯は散発的・・・。    と、言うとりました。
ちなみに今日も彼は参戦なのですが。

ほんで朝、ド干潮の4時半、出港!   いざ久しぶりの一文字へ!   チヌ釣り初めての息子も乗せて、レッツらごー!  



って感じだったんですが・・・      船が・・・   スクリューに海底のロープを巻きこんでしまったみたいっす・・・


無念なり。   船・・・    動かず・・・


働き者の、職人中村氏が、スクリューのロープをナイフで取り除くことおよそ30分。 なんとか出港可能!

んー、中村君、ワイルド!       辺りはすっかり明るくなってました。


まぁ、おいら的にはこうやって明るくなってた方がえかったんですけどね。  ほらあのー、子供がハシゴを登らなきゃならないから。
                                                落ちて怪我でもしたら、たいへんですし ^^;

そんな感じで一文字に着いたのは5時過ぎ位やったですかねー。
普段は南側が結構好きなんですけど、今日は子供も居て歩くのが大変なんで、ハシゴ上がってすぐのところ。

てきとーに場所選びです。


ほんで、まずは子供用に、


竿     ダイワ 銀狼競技 1-50
リール  シマノバイオマスター2500
道糸   サンラインの2.5号
ハリス  サンラインのトルネード 1.75号 

ってゆー、魚の食いは悪くなるんかもしれんけど、糸を出さずに子供でも強引に獲れる仕掛けをチョイーッス!
しかも、使わせる竿は銀狼でっせ。  銀狼。  今は全く使ってないとはいえ、昔の私にとっては初めて買った高価な竿。
それ以前は、1980円の安〜い竿に、 「 きんろう 」 とか書いて使ってたっけ。 あな懐かしや。


息子よ、父ちゃんが必死の思いで買って、大切に使ってきた 「銀狼」 でチヌ釣りデビューとは、君、かなり贅沢だぞ!

リールは05テクニウムを使わせてやってもいいんだが、恐らくレバーブレーキのレバーが邪魔になると思い、
シマノのバイオマスター。 これも父ちゃんがチヌ釣り始めた頃に大切に使ってた大切な一品だ。
いつか子供が釣りに行けるようになったらと、ずっと物置にしまっていたものだ。  ようやく日の目。

スプールには、当時巻いていたラインがそのままだったので、さすがに交換。
サンラインの2.5号(名前は忘れた)を。

ハリスは、子供が糸巻きすぎて竿が折れないように、1ヒロちょい。

ここ小野田一文字で団子釣りすりゃ、こんな仕掛けでも食うっしょ!  とか、楽観的に思いながら釣り開始!


子供の仕掛けで団子をポトンポトンやりながら、自分の仕掛けもセット!


こちらは保険で、鱗海アートレータ06−53に、道糸1.5号のハリス1.25号2ヒロ半。
最悪子供にチヌが釣れなくても、父が魚とバトルする雄姿は見せてやれるっしょ! 的タックル。


それでいざ実釣! 



よし。   

海の状況、 生命反応は皆無!     本日も、西部戦線異常なし! 


「中村隊長! 本日(22日)の夕方には、オスプレイを搭載した貨物船が関門海峡を通過し、この小野田一文字を
かすめて岩国基地に向かう予定でありますが、今のところチヌの姿は見当たらず、日本は平和であります!」



でもまぁ、オスプレイについてはですねぇ、賛否両論あると思いますから、私の口からはなんとも言えないのですが、
固定翼機のように高速移動が出来て長距離飛行が可能、更にはヘリコプターのような垂直離着陸、ホバリング、
超低空での地形追従飛行をこなす。 それすなわち、昨今の緊迫した東アジア情勢において、周辺諸国に大きな
牽制球と成り得たりするのです。 しかしながら、別の呼称は皆さんもご存知の「未亡人製造機」 
仮に、子供と釣りをしている波止の上を超低空飛行で飛ばれたら・・・
だから私には、オスプレイに関しては何とも言えません。



ってことで気を取り直して、必死のチヌ釣り。 まーったくと言っていいほど魚の反応がありません。 
(午前8時の時点で既に、楽観的なチヌ釣りが、必死のチヌ釣りに変わってます。)

最初は潮が低いからねーとかってことを自分に言い聞かせてたのですが、ここまで釣れないと・・・
いやねー、今日が難しいのはわかっとるんですよ。ここ。 

まず、赤潮が発生してます。  ほんで、次に今日は日曜日で人が多い。    やっぱ人が多いと厳しいっすねー・・・。
更に現時点、かなり潮が複雑。 上潮は緩やか〜に沖に出ているように見えても、底潮はガンガン流れてる・・・   みたいな。

海中でも見えやすい色のライン使ってたら、底潮の流れは大体わかります。
浮子を支点に、ラインは思いっきり斜めになりながら右に行ってます。  回収時の仕掛けも、明後日の方向から上がってきます。
一見、潮はあんまり流れてないように見えても、海中では仕掛けがタナに入らず、浮きまくっているイメージ。  
長い一文字、真ん中の釣り座だけがこうなんかなーと、南側に入っている中村氏に潮の流れを電話で確認をしてみるも、
向こうもどうやら同じような流れとのこと。   

「この潮の時は食わんのですよねー」 って彼は言うんだけどねー。    ほんとに食わん。

ガン玉追加して追加して、浮子の浮力変えて浮力変えて、ようやく3Bくらいの浮子でようやく底に根掛かり。
そっからガン玉1個外して、棚深くして仕掛けに角度付けて〜・・・   とか色々やってみるも、ほんとに食わん。



最初は余裕ぶっこいて子供の太仕掛けのタックルで釣りしてた私も、気が付けば自分のタックルを持ち必死!

なんとか1枚でも釣らなければ、子供に面目が立ちません。


さっきから子供は、「場所変わろうやー、あっちに行こうやー」と、早くも飽き飽きムード。

「大丈夫。ここで餌撒いてるからそのうち釣れる!」 と、口では言ってるものの頭の中ではかなりテンパイ!



ハリスも、余裕の1.25号から

    ↓

頼むから食ってくださいの1号

    ↓

なんとか、そこをなんとかお願いします!の、泣きの0.8号へ落とし、



ハリスも竿2本近くとって、なんちゃって1000釣法。 極力魚にラインの抵抗を感じさせないように工夫。



必死で色々やっている後ろでは、子供が、 「 たこーちゃん たこーちゃん。  僕も釣りたいよー 」とかなんとか
色々言ってます。  仕方ないので再び太仕掛けの銀狼に持ち替えます。

あれほど繊細な釣りしてても釣れないものが、このごっついタックルの、しかもハリス1ヒロで釣れるわけないよなー・・・
今日も、弁天池(養殖のニジマス釣り場)コースやな・・・        とか思いながら、子供に竿持たせます。



息子「どうだい? おいら、偏光までかけて、なかなかワイルドだろ〜う?」

 

息子「 親父のヤラセだぜい。 ちなみに俺、釣りのスタイルは内股だぜい! うふ〜ん 」




重たい5mのチヌ竿持つのがやっとの子供に、到底ライン操作などできるはずもなく、「糸を引っ張るなよ!」と言っても
ライン引っ張りまくりで、浮子はビヨーンビヨーンと動きまくり。  ツケ餌は海中で踊りまくっていることでしょう。


そんな中・・・


ダゴチンの団子が割れました・・・


水中でホバリングしていた浮子が上がってきて、ひょこっと海面に顔を出した次の瞬間・・・






「ツン・・・」







私「ぬぉっ、なんかアタッた!」


細仕掛けでやってた私が、どれだけ頑張っても出なかったチヌの前アタリ。
何故に太仕掛けの、それもハリス1ヒロちょっとのワイルドな仕掛けにアタってくるんだろう・・・

ひょっとしたら、息子は・・・

私がどんなに努力しても手にすることができない、天性の釣りセンスという物を持っているとでも言うのか?

       
うーん、 「 恋してる〜  女の子は〜  半分  ふ ・ し ・ ぎ 〜 」      違った。  釣りって不思議。


え?  ちなみに、 「 恋してる〜  女の子は〜  半分  ふ ・ し ・ ぎ 〜 」 がわからないですって? 
知らないですか? 「 COCO 」 って名前のアイドルユニット。

ちょうど今から20年位前の、そうだなぁ〜、今で言うところのAKB48みたいなもんなんですけどね。  ご存じない。 
まぁ、別にどうでもええ話なんですけどね。



そして、ジワーッ、ジワーッ とゆっくり海に潜っていく浮子は、水面下5cmのところで再びホバリングです。

慌てて子供の所へ駆け寄り、竿を一緒に持って本アタリに備えます。

ラインにテンションがかからないように竿先を下げ、来たるべき瞬間を待ちます。



「 入れ!  入れ! 」    祈るような気持ちで念を送っていると〜・・・





入った〜!




子供と一緒に合わせを入れた次の瞬間、大きく曲がる 「 銀狼! 」


魚は一気にケーソンの中に突っ込もうとします。

一緒に竿を持ちながら、「リールを巻け巻け〜!」 と、子供に指示を出す私!


ふと穂先を見ると、リールを巻きすぎて潮受けゴムが穂先まで行っててタフテック状態!

慌てて糸を出そうにもレバーブレーキついてないもんだから、スプールのドラグを緩めます。

すると今度はドラグ緩め過ぎて糸がジージーと出て、魚はケーソンの中一直線!

「ぬぉっ、やばいやばい!」  再びドラグを閉めて竿を起こす私。 子供と私、何だかドタバタ劇場みたいなことやってます。

しかしさすがは1.75号ハリス。  強引に引っ張ってもビクともしません。


そして見えてきた魚は〜・・・      本命の〜・・・




   
「 ぬ 〜 ち 〜 」




右手で子供と竿持ちながら、左手で必死のタモ入れ!

ぱっと見、35cm位、チヌ釣りが初めての子供が釣る獲物にしては上出来のおチヌ様でした。



息子「 どうだい? 俺のやりとり、ワイルドだろう〜? 」



息子「 これも親父のヤラセだぜい。 相手はラーボーだぜい。 よく走るんだけどな。 」









息子 「 俺が釣ったんだぜ〜い! ワイルドだろ〜う? 」   ってことで、彼の人生初めてのチヌ。 36cm。    


ほんと、釣れて良かったです。 一時はどうなることかと思いました・・・。

帰りに、隣でやり取りを見てたおじちゃん達に、

「 ぼくー、魚釣れてよかったなー! 」 って褒められ、照れながらニヤける息子。






私は思います。
彼がこの先、どれだけたくさんのチヌを釣るのかはわかりません。
けれど、人生で一番最初に釣ったチヌってのはこの1匹だけ。 それだけ価値のある1尾。

うちの息子、どちらかと言えば喜びを全身で表すタイプの子供ではないです。 
シャイで人見知りがはげしく、初めて会う人とは話しはおろか、なかなか目を合わせることもできません。  私と同じ!

そんな彼がこのチヌ釣った後、何度も何度もスカリの所に行きスカリを上げ、自分が初めて釣った魚を見ては、
また海に戻していました。  口では何も言わないんですが、おそらく相当嬉しいはずです。




息子よ・・・。 父ちゃん若い頃はな・・・

こんな何もない田舎町なんて早く出て、都会に行きたい! って思った事もあるんだよ。

でもな・・・    この年になって父ちゃんが気付いたことはさ・・・


こんな何もない田舎町にはな・・・

こんな何もない田舎町でしか見つけることのできない宝物が、たくさんあるんだってことなわけさ。

君がこれからどこでどんな人生を歩んでいくのかは君自身が決めること。

色〜んなところで色〜んな宝物をい〜っぱい集めるがいいさ。


そして、宝物がい〜っぱい、い〜っぱい集まったらさ・・・




是非ともそれを質屋で金に換金して、父ちゃんに貢いでくれい。  父ちゃん、一生遊んで暮らすから・・・




「子を思う 親の心は四手籠 暫し憩らう 息杖もなし」


わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい。