12月12日  何か知らんがいっぱい釣れる



中村の舞。

それは決して、体格のゴツいパワーファイターの中村君が、バレエのトゥシューズを履いて白鳥の湖を
踊るわけではない。先日の青海島にて教わったライン操作、ツケ餌をスレたクロに、上から落ちてくる撒き餌と
同じ動き、もしくはそれ以上の、生きたオキアミに見せるよう、ラインを操作してやる誘いの方法である。
それを、撒き餌メーカーTURIMANの、低価格で庶民に優しい「グレの舞」と併用することから名づけられたのが
この中村氏の必殺技である、「中村の舞」である。(別に撒き餌はどこのメーカーでも良いと思うのだが・・・。)

そんなら素直に「誘い」って書けば?って言われそうではあるが、氏曰く、あくまでもそれは誘いではなく、
ツケ餌の
舞、「中村の舞」なんだとか。

ちなみに中村君の事を知ってる人が、彼が白鳥の湖を華麗に舞っている姿を想像したら、きっと笑いが
出るであろう。中村君の事を知らない人は、某海老Oを殴ったとされる、元サッカー選手でハーフの、26歳の
男性を想像してみて欲しい。彼が全身白タイツで、トゥシューズを履いて白鳥の舞を踊っている姿を想像してみたら、
それが、当たらずしも遠からずの、中村氏の姿である。

で、当初は1人で青海島に行こうと予約も入れてたんだけど、波高2,5m後1,5mの日本海、青海島では出港は
7時半になる上に、危ないので誰かもう1人釣り人を連れてきてくれとのこと。

会長、永田、カクちゃんに中村君、磯師匠と連絡を入れてみるが、ことごとく皆用事があるとのことで、同礁者が
見つからない。さてどうしたものかと思案していたら、ふと前回一緒にキザクラカップに行った、江田君がいる事を
思い出す。連絡を入れてみると、即答で良いですよとのこと。ただ、当日が誕生日の彼、なんでも夕方から家族で
バーベキューをするそうで、夕方5時までには家に帰らなければならないらしい。私ん家経由で青海島に行って、
夕方5時までに彼が自分の家に帰る条件で釣りをすると、出港が7時半では釣りをする時間が少なくなってしまう。

ってことは、蓋井島の朝便(今の時期は午前4時出港の午後1時回収)か。でも、蓋井島の釣りは難しくて、
あんまり良い思いしたことねーしなー。でも、楽しみにしていた15日水曜日の釣りは、恐らく寒波の襲来で無理。
更には来週の日曜日は、仕事の関係で行けるかどうかわからない。 ってことで、少々釣れなくても12日の
日曜日を逃すと、次はいつになるかわからないってことで蓋井島への渡船「黒潮丸」に予約を入れる。
蓋井島は風向きの影響もあるが、波高2,5m後1,5mの波が落ちる予報であれば結構大丈夫。ただ朝のうちは
上がる瀬は限られるだろうけど。
まぁ、仮に私はボーズ喰らっても、せめて江田君には初めての蓋井島のクロを釣ってもらえるように頑張って
みますか。(←おお、我ながらなんと良い人。 嘘だけど。)

そんな感じで江田君に午前2時45分に我が家に来てもらい、一路吉見漁港を目指す。
3時半過ぎには無事に到着し、荷物を船に積み込んでいざ出港。

やっぱり今日は、朝方波が高い影響もあってか、朝便は少なめの8人。位だっけかな?
で、案の定船が沖に出ると結構波がウネっており、船が縦へ横へと大きく揺れます。船内に居た数名のお客さんの
うち、まずは1人のお客さんが船外へ。そして次には江田君が無言で外へと出ていきました。
渡船での磯釣りが数回目の江田君。おそらくこんな波の激しい状況は初めてでしょう。
でもまぁ、大丈夫だよ。心配しなくてもすぐに慣れるさ。ってことで、船は無事に蓋井島へ到着。しかし、ここへ来ると
更に波の勢いは増しており、船はグイングインと揺れながらも、次々にお客さんを磯におろしてゆきます。

荷物を下ろす手伝いをしてる間も船は凄い勢いで揺れており、結構デンジャラス。
ほんでもって私らの番。カケアガリに着いたところで私らの名前が呼ばれます。船外にいる江田君に、
次、降りるよ。と伝え、ホースヘッドにて待機。 グロッキーな江田君を置いて、まずは私が渡ります。

で、自慢ではないんですが私の荷物、特にクーラーは、予備の撒き餌とか食料とか飲み物とか色々入れてるため、
朝のうちは結構重いんです(帰りにはすっかり軽くなりますが・・・)
そんでもって、荷物運びを手伝ってくださるポーターの方に、少しでも負担をかけず渡礁をするためにと、重たい
クーラーを持って磯に渡る瞬間、船が横に揺れました。 んで重たいクーラー抱えて渡った私、上礁後に大きく
バランスを崩し、更にはこのカケアガリの船着けが、滑り台のような傾斜とツルンツルンな岩のために思いっきり
滑りました。バランスを崩して足を滑らせ、更には手に持ったクーラーが岩に引っかからずに、クーラー持ったまま
ズルズルと滑って下に落ちていきます。格好としては、船の下に潜り込んでるような感じです。もしもこのまま舳先が
私の方へと向かってきていたならば・・・

いやぁ、死ぬとこでした。ホースヘッドのタイヤが少しでも私の方にずれてれば、私はタイヤと岩に挟まれ、少なくとも
複雑骨折、挟まれた場所が悪かったらほんとにこの世にいないでしょう。ポーターに迷惑かけまいと重たいクーラーを
持って降りてしまったことで、逆にポーター他、船長にまで冷や冷やな思いをさせてしまい、逆に申し訳ない結果と
なってしまいました。 えーと、磯に渡るときには、体一つで渡らないといけないですな。逆に私がポーターやってる時は、
荷物は後で、体だけ先で良いですよって言いますもんねぇ。
こーゆー時はほんと、人に迷惑かけるからとか考えてはいけませんな。皆さんも、渡礁時は体一つで渡りましょう。

で、船長の華麗な操縦で運よく無傷で渡礁出来た私と江田君。まだまだ辺りは真っ暗な上に、大きな波が時折目の
前の磯を、ザッブーンと洗っていきます。江田君に好きな釣り座を選ばせ、彼は平瀬側の比較的波の影響を受けにくい
所。で、私が時折ザッブーンと波が押し寄せる、少し後ろに釣り座を構えます。

暗いうちはのんびりやろーやってことで、ゆーっくり仕掛けを作りながら、時々撒き餌をパラパラしながら朝マヅメに
備えます。時折無意識のうちにヘッドライトで海面を照らしている江田君に、なるべく海面にはライトを当てないようにと
アドバイスしながら釣り開始。

で、本日の仕掛け

竿    シマノ ファイアブラッドダイブマスター 
リール シマノ テクニウムMgc3000D
道糸  シマノ ハイパーデュラハイスピードミュー 2号
ハリス サンライン トルネード2号、1,7号
針    がまかつ  クロマルチ7号、6号  鬼掛 沈め探りグレ 7号、6号
浮子  キザクラ   遠投チヌ3号(改造して、浮力は3B位) 黒魂R3B、0,5号
     釣研     スリムチヌ2号 (改造して浮力は2B位)
     工房中村  テポダン3B


今日はウネリを伴う波と、結構なサラシが出てるんで、仕掛けが落ち着きやすいようにハリスは竿1本半ほど取り、直結
部分のヒゲを残して、なんちゃってなるほど浮子止め方式。
2ヒロ半のところにカラマン棒と、そのすぐ下に3Bのガン玉。さらにハリスに等間隔にG5のガン玉打って、ウネリを伴った
流れにも馴染みやすくさせる作戦です。終日、ほぼこんな感じで釣りました。
朝のまだ暗いうちは、黒魂3Bにケミホタルつけて釣ってたけれど、アタリはなし。
まぁ、暗いうちはね。

で、満を持して迎えた朝マヅメ。辺りがうっすらと明るくなり始め、なんとかケミ無しで浮子を目視できる位になった頃でした。

ザッブーンと横から押し寄せてくる波に少しでも仕掛けを取られないようにと浮子を重たい棒浮子のテポダンに変え、
リールを巻く方の左手でラインを持ち、竿に対して三角形を作って、微妙なライン操作(中村の舞・・・だそうな。)をやって
みました。波が押し寄せたら竿を立ててラインが波に持って行かれない様に操作し、小刻みにツケ餌を動かしてやる。

イメージ的には、ゴツい体格に全身白タイツで頭には銀のティアラ。更にはトゥシューズを履いて白鳥のように舞っている
中村君の股間に付いている白鳥の頭(志村けんとかがよく使うやつ)が、

「アン ドゥ トロワ」のリズムの「トロワ」で、上にビヨヨーンと飛び上がるイメージ。 

「アン ドゥ トロワ、 アン ドゥ トロワ、 アン ドゥ トロワ、  ポコ ポコ チーン」

これがずばり、「中村の舞」
そしたら、来ました。最後の、「チーン」の所でいきなり竿引きの強烈なアタリ。 挨拶代わりの40cm尾長でした。

「どうかね江田君。 これが黒メジナ、俗に言う尾長グレだよ!がっはっは。」 とか言いながら針を外してると、なんか
江田君の方から「バチバチバチーッ」と変な音。

見ると、竿を思いっきりひん曲げて激震に耐えている彼がおります。こりゃーもう、尾長に間違いないっしょ。
いやぁ、江田君、なかなかやるね〜とか思いながら、とりあえずタモ持って駆け付けます。で、浮いてきた本命は・・・

え〜っと、なんかデカいんですけど。私のよりも一回りも二回りも。一瞬、もたつく振りをしてタモで突いてわざと糸切って
やろうとも思いましたが、江田君の生涯初めての尾長、大切に掬ってあげます。 45cmでした。
しかも、案の定飲まれてたみたいで、タモに入った瞬間にチモト切れ。しまった、もうちょっともたついていれば良かったか・・

「初尾長、おめでとう!」と祝福の声をかけてあげる私ですが、考えてみたら私の初尾長は今年の10月。
中野さんや永田さんに関しては、まだ尾長の40cmオーバーを釣ったことはありません。それを、本格的に釣りを始めて
まだ2年と経っていない江田君が、いきなりやらかしてくれました。

「お、おめでとう・・・」とか口ではそう言いながらも、手が滑ったとか言ってそのままタモを柄ごと海に放り投げて
やろうかとも思いましたが、折角の誕生日やからね。  ええ誕生日プレゼントになりましたな。

で、引き続き、「ポコ ポコ チーン」と、中村氏が白鳥の湖を華麗に軽やかに舞うイメージで釣りを続け、途中、テポダンが
またもや響灘は蓋井島にて誤爆し、信管(浮子のトップ)が無くなるといったアクシデント等もありましたが、浮子を
「エンデバー?」に変えたり、信管のないテポダンをそのまま沈めて釣ってみたりして、最終的には私が尾長、43cm、41cm、
40cmの三枚を筆頭に、足の裏〜のクロを18枚プラスウスバが2匹。蓋井島のスレたクロが、40cmオーバーの尾長3枚を
筆頭にこんなにたくさん釣れるとは・・・  恐るべし「ポコチン釣法」  違った、「中村の舞」

江田君は、45cm、40cmの尾長に43cmの口太を含む計8枚と、数ではまだまだ私の方が上回ってますが、サイズは
完全に負けております。先日威勢での釣りで、「君なら、私如きなんか、すぐにすっ飛ばして釣りが上手くなるはずだ」と
言った私ですが、尾長にしろ口太にしろこんなに早くにすっ飛ばしてくれるとは・・・
こうなったら彼のライブウェルごと海に引っくり返すか・・・。なんて思ってみますが、折角の誕生日やしね。

そんで、帰港。
「クーラーがこんなに重たいのは初めてじゃ・・・」とか思いながら、えっちらほっちら荷物を運んでると、
何やら一人の男性の方に声をかけられます。聞けば釣り雑誌、「釣り画報」の記者の方だそうで、私が1番重そうに
クーラーを運んでるのを見て、声をかけてこられた模様。

「こんなにたくさん釣って、凄いですね」と言われますが、いえいえ、全然凄くないんです。こんなこと初めてなんです。
誰よりも一番驚いてるのは自分なんです。ほんと、びっくりですなぁ。
「本に記事で載せても良いですか?」とのことですが、こんな私で良ければどうぞどうぞ。

で、写真撮ってもらって、仕掛けや釣り方などを教えて欲しいとのことでしたので、大きな声で、「3号のキザクラ 
遠投チヌです!」等々色々答えます。釣り方は「ポコ ポコ チーン」をイメージして・・・、とか言おうと思いましたが、
頭がおかしい人と思われたらいけないのでやめときました。記事は、今月発売の「釣り画報」に載るそうです。


江田君も、初めての尾長や口太の40cmオーバー。最後には釣り雑誌の取材まで受けて、最高の誕生日になりましたな。

しかし、たまたま前日に私が相方を探してて、たまたま一緒に行くことになった今回の釣り。
しかも当初は青海島を予定していた釣りが、彼の時間の関係で蓋井島になったこと。
釣りの難しい蓋井島で、30cmオーバーのクロが、私に3枚、江田君に1枚釣れたらラッキーだなと思っていたのが、
まさかの大爆釣。 江田君、出来過ぎだ。 今日から君の事、出来杉君と呼ぶからね。

しかしまぁ、あれよ。研究の熱心さは、ほんとに私なんかよりも遥かに上。雑誌「磯釣り秘伝」を購読し始めた彼、
釣技等、バックナンバーで気になるものがあればそれらも全て直接雑誌社から購入する。  私はそこまでしません。
そして、ポコチン釣法を編み出した中村氏も、その努力や研究熱心さを認めていました。
その努力の結果が、今日のこの好釣果を生んだのだと思います。

江田君。君にまだ、言葉にして、伝えてないことがあるんだ。

「初めての蓋井の尾長、本当に良かった。本当におめでとう!最高の誕生日になったね!」      

と、文章では良い人を演じてみるが、本当はいつライブウェルを引っくり返してやろうか企んでいたのは、何を隠そう
この私だ。


で、後日談。
「釣り画報」の関係の携帯のサイトに、私らの釣果が載っていた模様。
以下、

[釣況] 蓋井島 かけあがり

 岩場から東方向5m〜10m沖でのフカセ釣り(ウキ下4.5m〜8m)に、30cm〜43cmのグレが26匹釣れた。
 12月12日6時から11時30分の間の釣果。釣り人は山陽小野田市の私(永遠の17歳)と宇部市の江田尚史さん(28)。
 潮は小潮の引き8分から満ち7分まで。サシエはオキアミ生。マキエはオキアミ生とアミエビ、配合エサ、パン粉のミックス。
 40cmと43cmのグレは尾長だった。
 道糸2号、ハリス1.7号もしくは2号8m、自立棒ウキ3B、ガン玉3B1個と5号2個、グレ針6号もしくは7号。
 5m沖の水深は満潮時で約13m。潮流は緩やか。
<渡船料金>
1人 5,000円
(5人以上)
<渡船>
黒潮丸


ふむ。概ね間違いはない。しかし、いくつか間違いが。
まず、釣りの時間は5時から12時半位。そして、尾長は45cm〜40cmまでが5枚である。
しかし、重要なのはそこではない。何よりも譲れないのは、浮子が3Bではなく、巨大なチヌ用棒浮子、キザクラの遠投チヌ
3号(通称エンデバー?)であるということだ。いや待て。でも、糸鉛巻いて浮力調整をして3Bにしてるってことは、やっぱり
3Bの浮子ってことか。すんません。間違ってなかったです。




本日の釣り座。
カケアガリの平瀬向き。

江田君の釣果の一部。
私が目視した感じでは足の裏程度しか
なかったと思うのだが・・・

いやぁ、努力家とは聞いてたが、
まさか小じんまりしたメジャーまで
自作で作っているとは・・・

良型尾長に良型口太、全てハリスを
飲まれていたのは、絶対内緒にしとくからね。
今日の私の釣果の一部

お持ち帰りは、
尾長43cm、41cm、40cmと
小長+口太15枚の計18枚。
あと、ハゴイタも釣れた。

蓋井島でこんなに釣れたの、
初めてなんですけど・・・
私が釣った尾長、確かに43cmだったんです。
後で写真撮ろうと思ってたら、
おかんが鍋の中に入れてました。