12月2日  苦悶

これ以上・・・    

何を失えば・・・

私は許されるというのか・・・。

襲いかかる苦痛に顔を歪め、這いつくばるように床へと倒れこむ。



事態は一昨日の夜へと遡る。

11月30日夕方、2歳になる息子が夕食後、食べた物を全て吐き出した。
そしてその夜、高熱を出した・・・。

当初は、ただの風邪だと思っていた。
苦しくて寝付けない息子の側で、眠れない夜を共にした。

明けて1日、朝一番で小児科へと連れて行く。

下された病名は、ノロウイルスによる嘔吐下痢症。
上からゲロゲロ下からピーピーのやっかいな病気を、どうやら行きつけの
保育園でもらってきたようである。

今、巷で流行っているらしいこの病気であるが、症状も軽く心配ないよとの事で、
整腸剤をもらい一安心。

感染しやすいらしく、ご家族の方も気をつけてくださいと先生からアドバイスを
受け、ほっと胸をなでおろしながら帰途に着く。

昔から、男の子は病気に弱いと言うらしい。

他聞に漏れずうちの子も、昨年は1週間に1度のペースで熱を出していたように
思う。ようやく風邪が治ったと一安心した翌日に、また熱を出す。
そんな感じで、精神的にもまいった1年だった。

おそらくどこの家庭でもそうだと思うが、そうやって神経擦り減らしながら、
子供を大きくしていくのだろう。親になって初めて分かる、親のありがたさ。
散々親不孝してきたから身だから、なおさら親孝行しなきゃって改めて思う。


話はそれてしまったが、そんな息子も夕方には食欲も回復し、前日の寝不足を
取り戻すかのように夕方6時くらいから眠りについた。

寝不足なのは私も同じ。
寄り添い、息子が寝静まったのを確認し、泥の様に眠るのであった・・・。


さて、事件はここからである。
昨日、夕方6時という、とてつもなく早くから床に就いた息子は、当然のように
今朝は早くから目を覚ます。
睡眠が十分だったこともあり、かなりご機嫌で私の上に馬乗りになり、
遊んでくれよと催促する。そして、どこで覚えてきたんだか、

「へけけー 」とか言いながら、口付けまでせがんでくる有様。

「息子よ、すまんがパパにはそんな趣味はないぞよ!」と思うと同時に、
そういえば小児科の先生が、「ノロウィルスは感染しやすいので、ご家族の方も
気をつけてください」と言っていた事を思い出す。

 「ま、待ってくれ、息子よ。お前は確かノロウイルスを保持しているはずであり、
 口付けなんか交わしてしまった日には、それを私が受け継いでしまうことは
 必至であり、そうなれば私としてもゲロゲロピーピーなわけで・・・ 」

息子「へけけー、 ぶっちゅー 」

私「た、頼むからちょっと待っ・・・   む、んごっ、ふんがっふっふ」

・・・・・・・


そんなこんなで今に至っているという訳だ。
で、案の定本日昼くらいから、部屋とトイレの往復が始まる。

息子は睡眠を十分に取り病気もピークを越えたようで、いつも以上の食欲を
見せているが、おかげ様で私は、上の口からも下の口からも、
ジャンジャンバリバリ大開放中といった具合だ。

ふと、うちのクラブの釣技を思い出す。

「上からわっしょい下からわっしょい・・・」



嫁は、そんな私を見かねてか、

移ったら困ると、快方に向かった息子を連れ、実家に帰るそうである。


私「ば、晩飯はっ?」

嫁「食べてもすぐ出てくるなら、食べても食べんでも一緒やろ?」

私「ま、まぁ、そうだが・・・」


妙に説得力のある一言に納得し、車を見送った後は、本日のホームグラウンド
である、トイレへと駆け込む。

なんか、体中の水分が出尽くした気がする・・・

こ、これ以上何を失えば、私は許されるのであろうか・・・


会長と名人、彼らは今日、今シーズン最後の釣りへ行くと言っていた。
山口県地方に寒気が流れ込み、天気が悪い中、彼らは果たして釣りに
出かけたのであろうか。
どこに釣り座を構えているのだろうか。
床に這いつくばりながら、そんな事を考えたりする。


ちなみに私は今日、トイレの中に釣り座を構えてます。

いや、トイレだけに釣り座ではなく、便座が正解だな・・・