D'Artagnan物語・三銃士T

まえがき     ……三銃士の解説の意図      2004_1_21

まえがき

三銃士を初めて読んだのは、小学生の低学年であった。
但し、小学生用の読み物で当然ミレディーの設定も内容もストーリーも違う。
しかし、この頃の小学生にしてすでに疑問がいっぱいあったのである。
この三銃士は、昭和50年講談社文庫「ダルタニャン物語1.2」(全11巻)として出版され原作を読めることとなった。
疑問、それはダルタニアンの副隊長就任とボナシュー夫人(コンスタンス)の位置づけである。

ボナシュー夫人(コンスタンス)の容姿については、「ダルタニャン物語1」…第10 17世紀の「ねずみおとし」 に見ることが出来る。
「年のころは25か6くらい、(荒井・注実は23歳)なかなかの美人である。髪の色は栗色で、目は青く、鼻はやや仰向きだか、歯並みはきれいで、バラ色と乳白色の肌はまるで大理石のよう。だが貴婦人と見まがうばかりの特徴はそれでおしまいだった。手は白いには白いけれど華奢な感じがなく、足の形も身分のある婦人とはどう見ても受け取れない。……」
…当時の美人の条件の一つは色が白いと言うことであり、又足の件に関しては貴族の婦人は中国の纏足のようなことをしてなるべく小さく見せるようにしたのである。
ボナシュー夫人(コンスタンス)の階級はというとパリ市民である。そして実際には当時のブルジョワジーの最下端の地位である。
当時の身分・階級は…貴族・聖職者→ブルジョワジー→パリ市民→農民(一般国民)である。
実際のところパリ市民は特殊な階層と言える。貴族は種種の特権の他に税金の膨大な免除を勝ち取っており、聖職者は当然税金などは払わない。そしてパリ市民も税金を払わない階級である。
その上富裕なパリ市民のブルジョワジーは国王から官職(大金を払って)や貴族の称号を買い、又領地を買った者は偽貴族になったりして税金を逃れたりしているのである。
「ダルタニャン物語1.2」では宮廷において、貴族でない小間使い(ボナシュー夫人)が重要な役目をする。
しかも、宮廷に入るための有力な後援者の紹介があったとしても、「王妃の衣服の係・肌着係」などと言う王妃に直接触れるような立場に、貴族以外の人間が成れるはずはない。
その上、その職は貴族の夫人にのみ与えられる名誉であり、人気の職であった。
そして益々妙なのは、平民のボナシュー夫人の扱いが段々貴族的になるということである。修道院に幽閉するというのは貴族以外あり得ない。「小間使い」などの平民が「ワルサ」をした場合には、鞭で打たれるというような事もあったようであるし、当然その結果死ぬ事もあった。
 後の「首飾り事件」の首謀者の伯爵夫人は、刑罰として庶民の扱いを受けたのである。鞭打ち、焼き印、監獄(娼婦が入れられたもっとも劣悪な監獄)。
もっとも、この事件は高等法院で裁かれたために刑罰が軽かったのであるが。……6か月後に恩赦により釈放。

ボナシュー夫人が段々貴族的になるというのは、リシュリュー枢機卿や貴族であるダルタニアンやその他を動かし、その上ダルタニアン〈D'Artagnan〉が仄かに恋心を抱いてしまう。…これなどはボナシュー夫人が貴族出身でないがきり現実的ではない。
…では史実としては誰が黒幕か。又物語としては、このボナシュー夫人に誰が指示を与えたのか。
大物(黒幕)をあぶり出すというのが、妥当……として考えた。

しかし、実際「ダルタニャン物語」は読み落としてしまうような(ヒントになる史実上の重要)人物をサラリと書いてあるから始末が悪い。そしてその沢山の人物が判らないと全体像が掴めない小説でもある。
よって、フランスの歴史をアンリ4世からルイ14世末まで(実際は皇帝ナポレオン以後まで)考察して考えてみることにしたのである。

このような意図であるから、本文には突然紹介もなしに人名が出てくる。又、ストーリー展開が判らない部分出でくると思う。
これは、一通り「ダルタニャン物語」全編を読んだという前提で書いているからであり、詳しい登場人物やストーリーは他の「三銃士の沢山のホームページ」を参照にされたい。なるべく重複は避けたい思いがあるからである。



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