2005年9月 ・芦生の森 ・ぶらり比良C ・ぶらり比良一口感想
廃村八丁 ・木曽御嶽山 西穂〜奥穂高
 <例会山行記録>
芦 生 の 森
原生林のトレッキング:自然の再発見
日時:2005年9月11日 (土)
参加者:浅原(CL)・西尾 保(SL)・中西・武藤・岡・山口・西尾 智・浅場:計8名
 滋賀県と京都、そして福井の県境にひっそりと広がる野生の森。自然の姿を再発見しに行く卜レッキングへ8名で出かけました。 最近少しずつこの森が知られてきましたが、私も下見で行ったくらいで,実際に足をんでいる人はまだ少ない感じだと思いました。朝8時、2台の車に分乗し,山道を行くこと1時間。芦生の森の基点となる駐車場に到着。
 卜レッキングのスタイルになって、林道を1.5kmほど歩くことからスター卜。
10時前、森の入り口に到着しました。ここより先に野生の森が広がり、気持の高ぶる中、登山届けを記入し、歩こうとした時、森の調査に来ていた3入組みとお会いし、現在の森の状態をお話していただきました。野生の森も温暖化の影響を受けていることをはじめて知りました。
 原生林の中には枯れ木も多く、また笹がほとんどなくなっていることも。笹の直接被害は鹿による食害ですが、温暖化の影響で、《雪が少なく、笹の新芽が出てしまい、それを鹿が食べてしまう。それにより鹿はより数を増やし、更なる食害を導いてしまう》とのこと。
 途中、湿原を横に見ながら、起伏の少ない緑に囲まれたトレイルを歩き、栃の大木前で写真、私たちの人生より遥か前から生きている木々をみて感動。
 11;45分に今回の到達目標だった、杉尾峠へ到着。40分程度の昼食をとりました。 木々の隙間から日本海を眺望できる所でゆっくり昼食をとりました。
 川を渡渉したり、原生林の中についた卜レイルを歩く今回のトレニッキングは、水生動物や昆虫類、植物などをじっくり見ることもできました。小さい小川をまたぐときにも、イモリや魚が楽しそうに泳ぎ、朽ち果てた大木の幹より新たな生命が誕生しているのをたくさん見ることができました。栃の実を一生懸命拾う女性陣。それをまとめる中西さん。とても和気会々に楽しんでいました。
 山歩きには頂上を目指すという、達成感を求めるスタイルがありますが、今回は自然と戯れ、白然の中で『人間はどのように生きていくべきか』『どうしたら自然を守れるか』かなど、自然を通じて何かを感じとってくれたかと思います。
 ゆっくり歩く、できればたち止まって、自然の音、香り、色などを楽しむようなトレッキングができれば、また新たな発見ができるということを改めて思いました。そして自然の大切さを参加された方全員が感じてくれました。
 最後に今的のトレッキンダが無事終えることもできましたのも、何より参加された方の、ご協力があって、楽しく、安全にトレッキングができましたこと、ありがとうございます。また西尾様にはサブリーダーとしていろいろとご協力していただき、まことにありがとうございました。                    
                  記:浅原明男
<臨時例会山行報告> 
ぶらり比良探訪シリーズ C
9月14日(水) 天候:曇り午後一時雷雨
南比良峠〜大橋〜(小川新道)〜シャクシコバノ頭〜中峠
  参加者:CL西村高・天岡・中西・堀部・松田裕・久保田
コース
 R161南比良交差点=堂満小屋(8:40)〜京都府立薬大小屋(9:50-55)〜南比良峠(11:30-40)〜水晶小屋(12:05)〜大橋小屋(12:30-13:05)〜小川新道分岐(13:10)〜月見岩(尾根)(13:30-35)〜シャクシコバノ頭(14:35-45)〜中峠(14:50)〜金糞峠(15:37)〜イン谷口(16:55)=(堂満小屋経由)=事務所

 まず車1台を下山口のイン谷口へ配車し、もう1台で161南比良交差点から四ツ子川上流部の深谷へ向かう。道は少し荒れているが、普通乗用車でも通行可。途中で車の通行を邪魔している倒れた木の枝を用意のノコギリで切る。(実は前日、この林道を車が通れるかどうか心配で見に来た。)
 深谷左岸の堂満小屋のそばに車を置く。小屋の前にまで新たに堰堤が出来ていて風景は一変している。今回のコースは欲張った為長い事と、私の右足ふくらはぎの痛み(数日前に痛めて癒えず)の件もあり、コース短縮予定の旨説明(お詫び?)し出発。好き放題に伸びた草が堰堤だらけの深谷一帯を埋め尽くしている。その中にあって、やはりススキが最も秋を主張している。このルートは、昭文社の地図では、堂満小屋から少しだけしか道(破線)の表示はない。昔はメインの登山ルートの一つだったと思うが、大崩落で登山路も断たれて以降、通行止めになったりで、訪れる人は少ない。
 谷沿の道は生い茂る雑草で判然とせず、棘や蜘蛛の巣とも戦いながら、適当に進む。右足はふくらはぎの筋肉を使わないよう、ストックの助けも借りながら ゆっくりフラットに置いて運ぶ。右岸堰堤下で行き詰まった時は、私の足を気遣って天岡さんがすばやく左岸へ移動しブッシュをかき分け道を探してくれる。その元気さには敬服する。休憩出来そうな所がなかなか無く、堰堤の上で一服する。川原の水は冷たくて気持ちがよい。
 再び歩き出してすぐ、小屋が現れる。何年か前に来た記憶が甦ってくる。京都府立薬科大学と読める。荒れていて全く使われていない様子だが、緊急時雨・風はしのげる。 小屋の前に、 南比良峠→の小さな表示板を発見! 見覚えのある字だ。裏を見ると 比良雪稜会10周年記念とある。16年前、記念活動で比良山中にいくつか取り付けたものの一つで、感慨深い。
 ここから谷を離れ、草に悩ませる事もなくなると、やがて急斜面の直登となる。深谷上部の大崩落で本来の登山道も無くなったため、直登せざるを得なくなったのであろう。 所々ロープを張ってくれているが、木の根などを頼りに這い登る。下りは危険で避けた方がよい。
 崖 (崩落地)の上部で古道に戻るが、再び迂回路に誘導される。近年更に上部で崩落があったようだ。すぐにこれぞ峠道と言える風情のある道となり、しばらく楽しめる。
再び分岐があり、右へ進みかけるがすぐに道が消えており、新しそうなリボンが付けられている直進ルートをとる。
 だんだん踏み跡が薄くなり、風景もかすかに残る記憶と違う。比較的新しい迂回路の様子。 下りに変わり、下り立ったところで峠道に戻る。 案の定、登山道が崩れているのであろう、峠道の下り方向は通せんぼがしてある。
 南比良峠に出ると、北に堂満岳が大きく聳え立つ。峠から縦走路を50m程南へ行くと大橋小屋への分岐だ。ゆるやかに下る趣きのある散策路の感。ここで7〜8人のパーティに出会う。(この日唯一出会った人)
道は徐々に浅い谷状となってゆく。沢水が流れるようになってくると水晶小屋が現れる。自然林とせせらぎに囲まれた好い所だ。この辺りは新緑と紅葉の季節にもう一度是非歩いて見たいと思う。
 大橋に到着すると、毎年飲み水調査している名水(?)「スリバチの水」を味わう。摺鉢山からの湧水はおいしい。 雲が切れ樹間から陽光が射し込む川原に降り、昼食とする。初秋の爽やかさの中、沢音に埋もれてしばし時を忘れる。
「滋賀県南比良県営林・膳所高校山岳班 大橋小屋」の看板がかかる小屋は長く使われていない様子で荒れている。
 小川新道に入ると、見事なアシウスギ(芦生スギ)の林が迎えてくれる。どのようにして巨大なこの独特の形状に育つのだろうか?不思議である。前に立つと、感動を覚えると共に、尊厳な気持ちにさせてくれる。比良でアシウスギが多く見られるのは、この大橋付近・ヨキトウゲ谷、奥の深谷源流部、イブルキノコバなどのコヤマノ岳周辺だけと思う。
 程なく道は右に導かれ、小さな涸れ沢を直登する。登りきった細い尾根に遭難碑がある。右の尾根先端に松と大きなが岩が乗っているので、「月見岩」ではと見に行くと、絶壁に突き出すように岩のお月見座敷が用意されていた。案内板はないが、誰がみても納得であろう。
 シャクシコバノ頭へ向かう。シャクナゲが多い尾根だ。今度は左側にオニギリ岩が鎮座する。オニギリそっくりで案内板は要らない。続いて右側の向い斜面に磨崖仏?
らしき岩が。自然の造形であろうが、中西さん(だったと思う)がシャクシコバ観音と命名。
 シャクシコバノ頭に近づくとブナ林に変わり、風が心地よい。頭かと思った岩の小ピークは、肩であった。平坦な疎林をしばらく進み、次のピークを登りきると頭(1121m)であった。 この辺りのブナは大木ではなく比較的若く、その分明るく清々しい林を作っている。よく見ると葉は微かに色づいている。
この小川新道は標高差約370mとけっこうハードである。
 遠くで雷鳴が聞こえ、空も暗くなってきた。中峠への気持ちよいゆるやかな下りを少し急ぐ。
 金糞峠へ下るヨキトウゲ谷で雨粒が落ち出すとすぐに本降りとなる。雨で滑りやすくなっているので、慎重に足を運ぶ。
大崩落地を過ぎ、青ガレは岩が最も安定している右端を下る。
大山口を通過する頃には、ありがたいことに雨は上がってくれた。
 南比良峠までの難路、そして南比良峠から中峠の間は期待どおりの魅力溢れるコースで満足の1日であった。足もなんとか無事持ちこたえてくれ、ほっとする。
堂満小屋へ車を取りに行く途中、又 木が道へ倒れこんでおり、再び、ノコギリの出番。 車で林道を入るときは必需品にノコギリを加えておこう。
〈 報告 西村高行 〉

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  ぶらり比良探訪C 一口感想

「ぶらり比良探訪」 楽しみにしているシリーズです。
西村さんの案内でゆっくりと歩いて行けることが私にとって安心の山行です。
 あまり踏まれていない所と言うことで不安に思いましたが、直登、急登、下山時に雨に降られたり、と・・・・。
でも、何故か雨など気にもせずに楽しい思いで降りることが出来ました。
又、堂満小屋の横にポツンと置かれた「南比良峠→」の道標(15、6年前に雪稜会の人が作った物)、15年も雨にも風、雪にも負けずにずうっと〜この荒れた場所で登山する人の道しるべとなり、見守ってきたのだと思うといとおしい、そっと撫でていました。次回も楽しみにしています。
                              ―― ほりべ ――

 面白いコースでよかったです。
 でも下山途中から雨が降り出し疲れも溜まってきて気を付けなければならないなと思っていたら前を歩いていた中西さんが突然目の前から消えてしまった。 はっと下を見ると中西さんは濡れた岩で足を滑らせばったりと倒れていた。 びっくりして起こそうとすると「大丈夫や〜」とむっくりと起きあがって言った。 「以前は片手だったけど今日は両手を使って起こしてくれた。」 そんなジョーダンいえるなら大丈夫と思ったけれど くれぐれもムリをしないよう気を付けて下さいね。
                           −− 久保田英理子 −−

 4回目の参加で益々「ぶらり」「比良」「探訪」を実感できた。
 堂満小屋からの南比良峠への直登、微かに跡を残す山道に16年前(比良雪稜会10周年)に当時のメンバーが設置したという標識(2枚でしたが現存を確認) 府立京都薬科大と朽ちた表札を付けた山小屋。台風などで荒れ崩れた箇所の姿に知らない昔を偲んでいる自分に気がつく。大橋小屋が膳所高校のものであったのかと 小屋の看板で知り、小川新道へ向かうと不思議に数本の芦生杉が居座る堂々の姿に尊厳を意識した。尾根に出ると我が子の針ノ木峠での遭難を悼んでの碑が迎えて呉れた。(昨夏の針ノ木岳を思い出した。)
 月見岩やオニギリ岩、更にはその時命名した「シャクシコバ観音」を見ながらのシャクシコバノ頭へのコースは気持ち良かった。この辺りから見る武奈ヶ岳やコヤマノ岳の姿も新鮮で 眼前に拡がるブナ林の静寂の中にかすかに葉を色づかせたブナが秋の始まりを伝えて呉れた。
次のぶらりが早くも待ち遠しい。         −− 記:中西 −−

  ぶらり払われ 蜘蛛の巣悲し
   すすきの穂見せ 南比良の峠
廃村八丁(9/18山行予定分)下見報告
9/14、藤田・山田の2名
 去る9/14、藤田・山田の2名にて下見に行きましたがコースの案内が不備な上全体的に危険な箇所も多く、一時ルートを外れる等ハプニングも有って2時間以上も余計に歩く事になり、結果的に下見の役を果たせませんでした。西村会長にも相談して、誠に勝手ながら今回は中止とさせて頂きました。
 当日に向けてご参加の申し込みを頂いた方々には、ご迷惑をお掛けする事となり深くお詫び敦します。
今後のご参考までに、知りえた情報を列挙致します。

◆アプローチ:R367の途中から3km程南下、小出石の信号を右へ(R477)、百井・花背(この間、路幅狭く擦れ違い難しい)を経て大布施からは桂川に添って北上。広河原の菅原バス停に至る。(距離約35km、所要1時間40分位。)

◆駐車場:バス停横の小橋を渡った所に4〜5台、少し道なりに進んでホトケ谷側の林道脇に3台程可能。

◆トイレ:有りません。

◆山蛭(ヒル)が居ます。地図を広げて見ている時も上からポトリ。大きさ約2cm。近年鹿が増えて運ばれる由、6月〜9月末頃まで要注意とか(地元情報)。

◆登山口不明瞭 標識が無い。地元の人に確認のこと。

◆コース:峠には標識があるも、谷への進入部や徒渉地点が全く不案内で特に注意を要する。古いテープが時々有るも足元に落ちて居たりであまり信用出来ず。
 流れの両側が急傾斜で足元すべりやすし。谷の分岐多い。夕方一時雷雨の時も流れがすぐに汚濁。くれぐれも要注意。

◆廃村跡:明るい広場に低く積まれて草むした石囲い、住居跡か?建物が2つ。ピラミッド形の方は入口の扉が外れていて内部は散乱。林業関係者の飯場と思われる。小さな流れの向こうに『京大高分子化学・北山の家』が美しい。こちらは間違いなく現役!

◆所要時間:途中に分岐が多く、コースに依って多少の差異あるも約6時間で元に戻れる筈(休憩30分を含む)。
【最後に】 今回は全くのぶっつけ本番でしたが、往路では3度も地元の人に出会い多くの助言や知識を得る事が出来、実にラッキーでした。難しいルートでは在るが春の尾根道はシャクナゲ、秋には奈良谷の紅葉が圧巻だとか‥‥。経験者の同行が在れば再度のアタックを試みたいものです。  (記録 山 田)
  <例会報告>
 木曾御嶽山(日本百名山)
日 時:2005年9月23日(金)、24日(土)
参加者:武藤CL、岡SL、中西、浅場、田中操、本田、松田祐、松田昭、山口弥、西尾
                      車 :武藤車、西尾車に分乗

行 程 
 9/23 事務所→さざなみ街道→米原IC→中津川IC→木曽路(R19号)北上→ 元橋→黒沢口→田ノ原駐車場→石鳥居→金剛童子→王滝山荘→八丁ダルミ→山頂山荘(泊)
   
 9/24 山頂山荘→御嶽山奥宮神社→お鉢巡り→二の池→剣が峰・王滝分岐 → 王滝神社 → 王滝奥の院 → 御嶽奥の院→王滝奥の院→九合目石室→田ノ原(後は往路と同じ)
  
 比良雪稜会での一泊山行は、今回が初めてである。御嶽山には過去二回登っているが、
いずれも天気に恵まれず、頂上からの展望については殆ど記憶にない。今回は、台風17号
接近により、天気予報は曇り時々雨で、またもやとやや落胆したが、当日は朝から薄日が差し、更に信州に近づくにつれ好天となり、結果的に両日共に穏やかな天気に恵まれた山旅を味わうことができた。下記に山旅の概略と所感を記す。


9月23日(金):
 ・朝7時10分:事務所近くで武藤車と合流し、さざなみ街道経由で米原ICより中央道・中津川ICに向かう。3連休初日だけにかなりの込み具合である。途中、養老と虎渓山SAで休憩をとる。中津川ICから木曽路(R19号)に入って北上するも道路工事と事故車処理に遭遇し、かなりの時間ロスを強いられる。10時半過ぎにやっと元橋を左折。更に黒沢口分岐を左折し、御岳湖沿いに走って田ノ原へのジグザグ道を急上昇する。田ノ原に近づくにつれ、鼻の詰まりと耳閉感を覚える。嫌な予感がする。 

 ・11時40分:田ノ原山荘・駐車場(2200m)に到着。さっそく駐車場で身支度を調え、山荘の食堂で腹ごしらえをする。

 ・13時10分頃:山荘裏の石の鳥居前で全員の記念写真(写真1)をとり、鳥居をくぐって山頂まで標高差850mの登山の開始である。前方の御嶽山を仰ぎ見ると、山頂付近にガスがかかり、また、山腹は緑一色で紅葉の気配は微塵もないが、暑くも寒くもなく天気は上々である。田ノ原天然公園内の平坦な登山道をしばらく進むと、やがて石段、木道が交互する樹林帯の登山道となり、徐々に勾配がきつくなってくる。“あかっぱげ”と称される赤土のザレ場を過ぎた辺りから鼻のつまりが強くなり、呼吸が苦しくなってくる。もしかして高山病かとの思いがよぎる。今まで経験したことのない嫌な疲労感に加えて、森林限界を超えた7合目の金剛童子辺りから視野に星が出だした。更に8合目の石室に至るや、視界の星の数が増え、岩塊の急な登山道をバランスをとりながら渡るのが不安になってきた。武藤CLが、私の顔色を覗い、先頭をゆっくり歩くよう示唆される。しばし超ゆっくりペースで登行させて頂く。やがて“一杯水”と称される場所で一息入れる。岡さんからリンゴが廻ってきた。それを一気に平らげると、横でみておられた武藤CLより「食欲あるから軽いよ」との励ましの言あり。また、田中操さんから「これ効くかもしれませんよ」と言って頂いた“固形ブドウ糖”を食すると、なんと5分もせぬ内に視野から星が消え、意識も明瞭となり、軽い耳鳴りも消失した。すごい効果である。田中さんに大感謝。そして皆さん迷惑かけました。さあ、気を取り直して登山続行である。気合を入れた。

 ・15時40分:ようやく王滝山荘に到着し、一段上の王滝神社境内(写真2)で記念写真を撮って一服する。さすがにここまで来るとホットする。休憩後、神社横の脇道を抜け、左手に硫黄の匂いと噴気のたなびく地獄谷を見ながら八丁ダルミへと進む。八丁ダルミには、真っ黒な神官像と巨大なコルク栓抜きの先のようなネジネジのモニュメントが屹立した状態で設置されてあった。その横を通り過ぎ、またもや、急な石段を登りつめると今夜の宿舎である山頂山荘に到着である。

 ・16時20分:山荘到着。小屋の入り口で愛想の良い小屋主人が皆を出迎えてくれた。二階の二間続きの部屋に通され、荷物を降ろすと途端に気が抜けた。部屋で茶を頂きながら、元気な女性陣の明るい声の会話が弾む。女性の方が圧倒的に多いためか大変にぎやかである。第二の人生は、健康が第一と改めて思い知らされる。しばらくすると山荘スタッフが、風呂が沸いているので順番に入るよう言ってきた。3000mの山頂での風呂である。一瞬誘惑にかられたが、昼間のこともあり遠慮した。武藤さんと女性陣が交代で入っていたようである。しばらくすると本田さんの音頭で、全員でのストレッチ体操が始まった。足、腰、肩をひねり、手を大きく挙げて急に下ろす等々数十種類のストレッチング。いやー、よく効きました。小学生時代のラジオ体操を思い出す。

 ・18時から食事ということで、食堂へ行くと30人ほどの泊り客があることが分かった。おかずは、岩魚の甘露煮とこんにゃく等の煮付けに佃煮類、そしてきのこの味噌汁であった。ごはんが特に旨かった。我々の席の横に外国人男性が二人。一人は坊主頭にめがねをかけており、カルロス・ゴーン似であったが、聞けば二人とも英国人とのこと。めがねの方は名大の英語の先生とのことであった。たどたどしい日本語であったが、皆さんコミュニケーション力が豊かで、日英の山の比較、好きな食べ物等話が弾む。

 ・食事が終わり部屋に戻るや、女性陣は早々と就寝の準備、まだ19時30分である。中西さんはお酒をやっておられたが、結局、男性陣も布団を敷き、20時頃には就寝となる。やがて10分もしない内にそこかしから寝息が聞こえてきた。じっと耳をすましていると、台風の余波か、外で風のうなり声がする。そのうち部屋のあちこちで熱帯低気圧が発生し、やがて台風銀座のようになってきた。時間を見ると22時過ぎである。安定剤を一錠飲み、やがて眠りに落ちたようである。

9月24日(土):
 ・ゴソゴソと袋を開けるような物音で目が覚め、時計を見ると4時30分である。約束の起床時間5時には少し早い。しばらく寝床でぐずぐずするも、徐々に人の気配がせわしくなってきた。寝不足か、それでも5時間強は寝ているかと自問の後、意を決し起床する。やがて昨夜発生した大荒れ台風18号の中西さんが起きてこられ、一言「よく寝ましたわ。いつもと違い全く眠気を感じない」。さすが人生の大先輩、腹のすわり方が違う。できれば私が先に台風になりたかった。

 ・顔を洗い、着衣を調え、布団を片付けてもまだ5時半前、日の出の5時40分には少し間があるが、皆でご来光を見に小屋横の20m程の高さの石段を登って御嶽奥宮神社に上がった。かなり寒い。神社の南隅が剣ヶ峰山頂で、3067mと記載されたポールが立てられている。空はまだ暗いが、よく晴れており、所々に鳩羽色を帯びた雲がみえる。丁度日が昇る方向に雲が重なり、ご来光は無理かと諦めかけたが、しばらくすると雲間の切れ目がオレンジ色に輝きだし、その隙間から朝日の一部を垣間見ることができた(写真3)。まともにご来光らしきものに遭遇したのはこれが初めてであったので、いたく感激した。周囲が明るくなるにつれ展望が開け、中央アルプスの稜線のシルエットがくっきりと現れだした。雲の流れと昇る陽光により変化する山肌の明暗のコントラストは、いつまで見ていても飽きず、立ち去りがたい想いであったが、体が冷えるので山荘に戻って朝食にすることとなった。

 ・朝食を終え、土間で出発の準備をしていると、武藤さんと岡さんが、山荘の主人に登山地図を示して、お鉢巡りのルートを聞いておられた。武藤さんによれば、山荘主人曰く、登山地図は当てにならないとのことで、手書きの地図を書いてくれたとのことであった。

 ・7時30分:山荘前で主人と共に全員の写真(写真4)を撮り、再び奥宮神社への石段を登って一旦神社へ上がり、神社裏側への通路を下ってお鉢巡りコースへと入った。ルートは、赤茶けた溶岩のゴロゴロ道で、ガスの中を月面のような干からびた“一の池”を右に見て、また、串刺し岩が連なったようなおどろおどろしい奇岩、怪石のはるか下に無限の淵が沈む地獄谷(写真5)を左に見ながらコル状部を通過し、次いで高さが50m以上はあると思われる溶岩の岩稜帯を慎重に登り返した。山道は狭く、左右共に切れ落ちており、細心の足運びが必要だ。所々に○○童子という石碑が祀られており、これが36体あるという。途中、不動尊がある辺りで小休止を取った後、更に奥に進むと、やがて右下に淡いコバルト・ブルーの“二の池”が見えてきた。ザレ場を慎重に下り、二の池前で大休止(写真6)となる。ここで岡さんからモーニングコーヒーをごちそうして頂く。朝の冷気の中、熱いコーヒーのほろ苦さと香りがたまらない。皆で池の背後の20m程の高さのザレ石の縁を上がると、眼下に賽の河原が見下ろせ、また、その向こうには台形状の摩利支天山が横たわり、朝日に照らされ明るく輝いていた(写真7)。一方、二の池の上に目を転ずるとガスの切れ間から先ほど下ってきた剣ヶ峰山頂がみられ、サボテンのトゲのような人の姿らしきものも確認できた。小1時間ほどをそこで過ごした後、池の周りを巡って王滝へと向かった。途中、池の周りの草地帯の所々で紅い色付き(写真8)がみられ、この紅色が山腹を下るのも遠くない気配であった。やがて剣が峰と王滝の分岐に到着し、そこを王滝方向へ向かい、剣ヶ峰山頂直下の南東側斜面の迂回路を八丁ダルミに向けてトラバースした。これが王滝への最短ルートとのことである。狭い登山道は、昇降はないが、左側が切れており、慎重な歩行を余儀なくされる。やがて八丁ダルミの横を通過し、王滝山荘前にでる。そこでしばし小休止した後、山荘の裏から王滝奥の院へと向かう。約20分で到着。裏手が地獄谷の展望所となっているがガスで何も見えず。この奥の院の手前に野生のブルーベリーの群生地があり、それを目敏く発見した女性陣、その手と口の早いこと。その後、更に20分ほど先へ進むと、またもや奥の院なる祠があり、道が途切れている。地図には、一つの奥の院しか記載されておらず、歩行時間40分とあることから、どうやらここが本来の御嶽奥の院だろうとの結論に落ち着いた。折り返して、王滝奥の院まで来た道を戻ると、九合目の石室へのショートカット道が合流しており、そこを下ることとなった。下る前の小休止時に、またもや、本田さん、松田昭さんが、ブルーベリーの味見をされていた。下りの登山道は、天気も素晴らしく、這松の御嶽大斜面や、はるか下の田ノ原天然公園等の大展望を見下ろしながらの急降下(写真9)であった。所々でスナップ写真を撮りながら、約1時間40分で田ノ原山荘に到着した。まだ時間が早いためか、昨日より人が多い。田ノ原山荘で昼食をとり、一息入れた後帰路についた。途中、二合目の“うしげの湯”に立ち寄って汗を流し、また、木曽路の“寝覚ノ床”で見物を兼ね小休止をしたが、その辺りで突如として雨に見舞われた。しかし、ここまでくれば後は野となれ山となれである。山行中の天気を恵んで下さった御嶽の山の神に感謝である。その後は、来た道を戻り、恵那峡SAで夕食をして解散となった。

最後に:
 今回、楽しい山行を味わうことができたのも、偏に仲間の皆さんのおかげであり、とりわけ、山行を設定・実行して下さった武藤CL、岡SLのご尽力には感謝致します。また、車中、たった一人のオジサン相手に、眠くならないように楽しい話題を提供して下さった山口弥さん、松田祐さん、浅場さん有難うございました。おかげで睡魔に襲われることなく運転ができました。
                                記録:西尾

写真1:石鳥居の登山道入り口で

写真2:王滝神社境内で

写真3:雲間のご来光

写真4:頂上山荘前で小屋主人と

写真5:地獄谷

写真6:二の池前で大休止

写真7:朝日に照らされる摩利支天山

写真8:二の池周辺の紅葉
写真9:眼下の田の原天然公園