アイワの功罪

死人に鞭打つつもりはないが、日本のゼネラル・ハイエンドオーディオ衰退の一端を担ってしまったメーカーであり、当WEBサイトの趣旨上、かつてのあの忌まわしい過去の記憶にも触れておかねばならない。

私の記憶にあったアイワは かつてはDATやAMステレオ一番乗り、エクセリアシリーズなどのハイエンドオーディオまで手がけていた牽引役のイメージさえあったのに* 一体どうして。 

*レコーダーも一番乗りだったらしい。

ミニコンポが20~30万円はした時代。アイワは当時の中堅ラジカセ「シュトラッサー」級を、スピーカー分離型の3ピース構造とし、見た目はミニコンポでかつ値段の安い、いわゆる後に”コンポもどき”と呼ばれることになる製品群を市場に投入した。

も ちろん「その種のラジカセは別にアイワに限ったことではない」という反論もあるだろう。確かに、アイワ以外にも3ピース構造のラジカセはあった。が、アイ ワ以外の3ピース型ラジカセメーカーは、どこも程度の差こそあれ、あくまで隣のミニコンポを意識したモノ造りをしていた点がアイワと異なる。事実、製造コ ストの範疇で、他社の3ピース型ラジカセから出てくる音は、ミニコンポのそれに迫るものがあった(追いついてまでは、いなかったが・・・)。

こ の、中身は実質ラジカセの”コンポもどき”は、当初はアイワの狙い通り、売れに売れた。同じモノを、一体成形から、スピーカーを分離する程度の小変更で  高く売れたのだから、加工貿易国の命題「付加価値を付けて売る」という点では非常に良い例として”国内ゼネラルオーディオ、一人勝ち”よろし く、当時のビジネス誌がこぞって取り上げたほどだ。

しかし、それって本当にイイことだったのか? となると、 結果はご覧の通り。すっかり「この荒れ果てた大地を見るがよい」状態。*

*畑 違いだが、かつて日産「マーチ」のガワを替えた”パイクカー”に注文が殺到!なんて話題に対し、「それってユーザーをバカにしてないか?」と斬って捨てた タイプとしては、その時はアイワを誉めたビジネス誌が いくら権威ある出版社でも、賛同できなかった。それは、結末を知らなかった頃から変わっ てない。

発端は、そんなアイワの成功に続こうとした各社(とアジア勢)が、タダのラジカセまで3ピースにして売り出したことに始まる。

売 れなくなったのだ、ミニコンポが。当時、ミニコンポや単品コンポーネントを主力製品としていた国内中堅オーディオメーカー(アカイ、オンキョー、ケンウッ ド、サンスイ、ティアック、デンオン、ナカミチなど・・・)は、それまで棲み分けがなされてきたハズのコンポもどき(実体はラジカセ)にシェアを浸食され、そこに政策 不況が駄目を押し、その多くは二度とかつての輝きを取り戻せなくなるほどの打撃を受けた。

当時、中高生~社会人でコンポもどきを買っ(て もらっ)た方々は、あるいは落胆したかも知れない、「コンポって、全部この程度なのか?」と。残念ながら正解だ。2006年現在、生き残ったメーカーが” ハイコンポ”と称し、細々と売っているそれは、かつてのエントリーモデル相当品なのだから。「悪貨は良貨を駆逐する」の諺に見る通りのことが実際に起こっ てしまった。

火付け役だったアイワ自体、競合相手がアジア勢に移ると、売っても売っても利益が伴わないという、自ら招いた価格下落に苦し んだ。人件費の安さに対抗するための巻き返しが、ミニコンポ本来の姿に還るのでなく、更なるコストダウンで対抗しようとした結果、商品の魅力-肝心の音- まで削いでしまったことも痛手だった。実際、後期aiwaロゴのコンポもどきのチャチさには、目を覆いたくなるような安っぽさが常につきまとっており、純 粋に「どんな層をターゲットに造られたコンポなのか?」 と、他人事ながら心配する製品しか、店頭にはなかった。



量 販店チラシの目玉商品に常駐(こうなると、幾ら値を下げても買い手がなかなか付かない状態を意味)する状況が長く続き、さらに末期になると、当時の量販を 見て回った限りでは、aiwaの製品が並んでいたところは、何とすっかりアジア製品に取って替わっていた。店頭にモノがなければ売れようハズもない。売れ ないから店頭から撤去されたとも言えるが。こうして、アイワに追従する形ですっかり魅力を無くした国内ゼネラルオーディオメーカと、その割を喰ったハイエ ンドオーディオメーカー両方を巻き込むかたちで当のアイワはドボンと逝った。*

*その後のアイワは名前こそ残ったが、親会社の一ブランド扱いになってしまった。 現アイワのWEBサイト http://www.jp.aiwa.com/
追記:その後、2008年5月にすべての製品の出荷を停止した。

非はアイワだけにあったのか

そ んなことはない。「あんな機能が欲しい、こんな機能も」とねだっておきながら、ふた言目には「でも安くなければイヤ」という生活者にもまた責任はあった、 のでは? そして、本当に良いモノを手に入れたければ、それに見合うだけの対価を払う。この簡単な原則を、一部の量販店が話題造りにアイワのテレビを10円とか、 (アイワでなくとも)携帯電話を0円で売るなどして破った 行き過ぎた価格破壊にも。そんなの聞いたら(当時の地元で本当にあった)バカらしくなってまともな値段で買わなくも、いいモノ造らなくもなりますわ。収入 に限度がある以上。それがたとえ、生活者を応援するつもりでやったつもりでも、彼らこそまさに欲しい製品をも店頭から消し去るデストロイヤー(破壊者)な のかもよ。

あと当時、結果的にアイワの技術者不足を招いた海外移管を”アイワの復活”とか、表層しか見ずに褒めそやしておきながら、その ミスリードに乗ったまま路線変更しそこね倒れるや、今度は手のひらを返すごとく、格好の記事ネタにしていた「日経ビ○ネス」誌とかも。コトが起こってし まってからでは、後出しジャンケンで何とでも言えるだろ、と、その節操の無さには関係者でないのに憤りを覚えた。


アイワの悲劇は、繰り返されようとしているのか?


し かしこのまま、マランツやボーズといった外資(或いは、元外資。どっちも嫌いではないが・・・)メーカーにまで、かつてのゼネラルオーディオの分野を奪わ れるままにしておいていいのだろうか > 国内オーディオ&家電メーカー。 それはあまりに選択肢の無い、つまらない話でないか? そしてもし、この情けない現状の突破口を再び開くメーカーがあるとすれば、それは一体どこなの か・・・?



アイワの忘れ形 見になってしまったDAT、HD-S200型。この製品の良心は、ソニーだったら7000円はボッタクる専用デジタルケーブルを、汎用丸形でまかなえる点 だろう。それでいて音質は非常に優れている。これであと一押し、日付記録機能があれば迷わずこっちにしていたと語るDATユーザーは多い。そんな私はしかし、結局光るイルミネーションキーの誘いに勝てませんでした。コンセプトには賛同して買ったが、2年に1度の割合でメカが壊れ、マスターテープと生録がパーになるのには泣かされた。必ず予備機でも録音するようになる癖をつけてはくれた(嬉しくないが)。

あと、ほぼ同時期?発売のMDレコーダー(AM-F3)も出てすぐ買った。迷わずレジに持って行くのを見て、
仕入れた店員さんが、ど うして(ソニー製でなく)こちらにされました?と訊くので、当然のごとく「まずサイズ、次いでバックライトと電池残量LEDです」と答えた記憶がある(当 時はどちらも白黒の 色気ナシが多かったのだ)。こちらはTOC書き込み中、フリーズしては幾度か修理に出すなどかなりハズレ品で、やっぱり生録現場で故障→コピる前にマス ターディスクごと読み書きできなくなった時も、同じ症状だった。書いてて、あれ、衰退理由って実はこっちの方もぢゃーないの?

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