スピーカーのウレタンエッジ貼り替えに思うコト

質感を比較できる画像サイズで並べた為、閲覧環境によっては見辛くなることご了承願います。

  かつてはスピーカーの一大生産拠点であったこの国も、オーディオ”評論家”とやらの舶来品信仰が横行した結果、正統な評価をされないままほとんどが撤退し てしまった。舶来品に多かった癖、というかキャラクターのようなものを”個性”と勘違い、傾向としては原音再生を追求していた国産スピーカーに対し て は”無個性””没個性”などと言い放つ。そういった”評論家”の意見を、国内ユーザーが鵜呑みにしてしまったこともまた不幸であった。そのため、売れない →造らない→ますます売れない、の悪循環が及んだ結果、ついには補修部品の入手もままならない状態になってしまった。

 

 エッジの崩れたラジカセのスピーカー。ウレタン素材の悲劇は、時が経ってから知られるようになったこと故、あながち当時のメーカーばかりを責めるわけもいくまい・・・。しかしネット時代を迎え、交換用のエッジを比較的容易に入手できるようになった。そこで 、貼り替えてでも使い続けたいという人のために、写真付きでそのプロセスを紹介する。注文時、質問欄に機種名を書 けば-メジャー品なら-機種別ごとのコツを教えてくれたり、より適合するサイズを提案してくれたりする輸入元も国内にはあるので、自信のない人はそういうところを利用するのもいいだろう。もっとも、当サイトにたどり着くような人なら 問題ない気がする。要は遣る気の問題なので。ちなみに写真のスピーカーはソニーのZS-F1、補間画像にサンヨーのPH-WCD950。


 

  まずエッジを取り除く。経の大きいスピーカーの場合、エッジが完全に無くなると、自重でセンターがずれてしまうこともあるそうで、なるべく貼り替え直前に 取り除くのがいいらしい。が、ラジカセのスピーカー程度ならそんな自重に耐えきれず・・・なんてことはそうそう無いだろう。コーン外周の接着剤も手で取り 除く。
手 で取りきれない部分や、コーンの裏側に貼られているエッジの残骸は、無水アルコールなどを少しつけ  ドライバなどで軽くこすれば取れる。ガスケットを外す際は、そのガスケットを切ってしまわぬよう、カッターなどでエッジのねちねちっとした感触を確かめな がら刃を入れていこう。ZS-F1のガスケットは、事前に無水アルコールを少しつけたら、ちょっと刃を入れるだけで結構簡単に取れた。ガスケット裏のエッジや接着剤も取り、良く乾かしておく。


 

フレームに貼り付いた残骸は、小型の丸形彫刻刀をひっくり返して使えば楽に取れる(刃は悪くなる)。カッターを使う時はコーンに刃を当てないように。




作業に入る前に、ボンドを付けない状態でエッジをはめてイメージを掴んでおくと良い。それと、綿棒と水を用意しておこう。意図せぬ箇所にボンドが付いてしまったら、これで拭き取る。


 

 コーン裏と、エッジの のりしろ に薄くボンドを塗る。写真左は塗りやすいよう、詰め物で少し持ち上げてある。エッジ側は、なるべくボンドがはみ出ぬよう 少なく塗・・・ってしまいがちになるが、実はエッジのポコッとなり始める所にまで塗った方が良い(理由は後述)。

 
 

塗ったボンド表面が少し乾きはじめたタイミングでエッジを取り付ける。表からはきちんと付いている様に見えて、裏から見るとのりしろ部がとっくり返ってることがあるので一応裏からも確認しよう。


 

 しっ かり密着するように重しをしているところ。コーン側に重しを乗せる時は、センターキャップをヘコまさないように。PH-WCD950のウーハーは、写真の ようにバスケット部分に指を入れられない箇所がある。指で密着させることはできないので、先の丸箸や筆の反対側などを通し、なぞって密着させる。釣りをしてい る人なら、ガン玉やカミツブシのような重りをざらざらーっと入れてもいいと思う。




 ちょっ と話は前後するが、上の写真をご覧いただきたい。エッジの外周を、フレームに貼る位置は、必ずしも真ん中とは限らないことにご注意(12時方向と、7~8時方向と で、エッジとフレームとの距離が違う)。これは、ボンドが乾き始める前、実際に音が出た時のようにコーンを均一にストロークさせ、どっか(ボイスコイル)と擦れるよう な音がしないよう位置を調整したから。*

*センタリング/センター出しという。理想的には接着する際 にセンターキャップを外し、ボイスコイルとマグネットのすき間に絶縁物を巻いた状態で接着→乾いてから取り去る、のが無難。しかし、これらラジカセのセン ターキャップは共に外せないようだったので。


 

ガスケットを接着し、重しをしているところ。あすを寝て待って。




空気の漏れるようなすき間があったりすると良くないので、コーンとエッジの境にもボンドを塗る。裏側は、目に見える部分でないのでそう神経質になる必要はない。


 

  さて・・・綺麗に貼れたがここで問題が。取りよせたエッジはZS-F1適合品とあったが実は、純正と違ってコーンとエッジとの間に遊びが無い。そのた め、コーン終端とエッジの出っ張り始めとが重なってしまい、ストロークさせるとそこがゴソゴソ接触するのだ。仮に鳴らしてみたところ、音がガビガビになっ てしまう。見た目は悪くなるが仕方がない、表のコーンとエッジの境にもボンドを塗ることで、互いの位置関係を固定することにする。


 

 組み直し、ブレークインが終われば完了。オリジナル(写真右)のエッジがふわふわなのに比べ 取りよせたエッジはかなり硬く、こんなんで繊細な音出せるんかいな、と思ったが そこは流石にオーディオ専用素材、杞憂であった。





PH-WCD950のウーハーは、外からハッキリ見えるモノではないので、センタリングがしっかりしてれば見た目は気にしないことにしよう・・・ こちらは違いがあまり判らなかった。破ったのであり、破れてた訳じゃないから。


 結論:十数年前のラジカセを、こうしてリペアでもしないと代わりが存在しないこの状況を、まず何とかしてもらいたい。

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