ウェアラブルオーディオにおける操作体系の課題 (1)

※脱線 が多いこと予めご了承願います。

 本稿の趣旨:他社製品からの乗り換えの障壁となり得る「送り」と「戻し」の不統一性について。 

 念じるだけで機器を制御する実験が行なわれている。ホンダはジャンケン、日 立はスイッチのON・OFF切り替えだった。共に脳内の血流量変化を読み取る仕組みながら、従来のように装置を体内に埋め込むなどの手術を必要と しない。現時点ではナニでも、さらに複雑な分岐の識別ができるようになれば、文字通り直感的な操作が実現する。もっとも、ジャンケンや鉄道模型が誤動作し ても人が死ぬこと はないが、生録でしくじったら取り返しがつかないので、AV機器の操作は依然、キー入力に頼らざるを得ない。

  そこで今回は、今まで何台もの録音機を(or で)渡り歩いてきた経験を元に、より操作しやすいキー入力のインターフェイスを消去法(ダメ出し)で考えることにする。

  その前に。機械の操作体系は、工業規格の決めごとになっているモノと、そうでないモノとが混在する。例を挙げると、ブレーカーや トグルスイッチは、上(うえ)に上(あ)げてONになり、ボリュームの類は時計回りで大になる。ネジは左に回して緩め右に回して締める。このような決めご とは、勘違いによる事故などを防止するために策定され、メーカーやジャンルをまたいでも共通のため、間違うことはない。

  ではレバー式の蛇口はどうか。少し前までは、レバーを上げて水を出すタイプ(INAX)と、その反対にレバーを下げて水を出すタイプ(TOTO)とが混在 していた。自宅でTOTOを使い慣れている人が、職場の INAXで操作を間違うということが容易に起こり得た。 イメージ的には、水は上から下へ流れるものだから、レバーもこう、 下げることで水が出てくるTOTO方式の方が理にかなっているように思える。とは言っても、INAXの設計者は設計者で、上に上げて水を出すイメージが ちゃんとあり、その逆など心に上りもしなかったに違いない。

  結局、上からモノが落っこちてレバーに当たると出っぱなしになるのはマズかろうということで日本工業規格が働きかけ、'97年、レバーを上げて水を出す INAX方式へと統一された。だから、幾ら従来タイプを使ってた人が、レバーを下げて水を出すのが正しいやんけ 現行方式間違い誘うやんけと主張したところで、もう旧TOTO方式は存在しない。*
*レバー式蛇口の発祥 は海外だが、第一号から上に上げて水を出す方式一種類だけだった。なぜそうしたかまでは知らない。

  さて、上の蛇口の例は曲がりなりにもまっとうな理由の元に決定された事例だが、そ ういう明確な決めごとがなく、同じ操作なのに各社バラバラ、蛇口のように同じ操作が正反対というケースさえ混在すると困る。残 念ながらAV機器はそうだ。しかも各社、「ウチの操作体系こそサイコー!!」と言わんばかりの信念というか哲学を持っているかのような頑強さである。譲ら ないのだ。

  時としてその頑固さは、とっさの操作が必要な時にしばしばユーザーを混乱させ、誤操作の原因にさえなってきた。もしもあなたがファミコン世代なら、任天堂 の某ヒゲオヤジなゲームを遊ばれたことがあると思うが、ちょっとコアな人であれば、対するセガマークⅢの某サル王子の操作体系(ジャンプだけど)が、任天 堂と逆 だったがために遊び仲間からさんざん不評だったこともご存じのはず。これは間違いの原因だけでなく、スタートダッシュ時におけるセガマークⅢの市場占有率 にも影響したとも言われる。我を通して歩み寄らないとこうなる。

 前フリ(伏線ですが)はこれくらいにし、本題 に入る。


  あなたのオーディオ装置の「巻き戻し」と「早送り」の方向は、それぞれどっち方向だろう? 巻き戻しが左、早送りが右でないかと思う。これは、矢印方 向(→)のリールにだんだんテープが巻かれていくカセットデッキの表記に準じており、テープでないCDやMD、DVDなども、この慣例に従い 巻き戻し (≪) 再生(>)  早送り(≫)となっている。* なので、こと据え置き型について言えば、キューとレビューの操作を間違えてしまうような要因はまずない。
*カ セットが、上下逆さまになるデッキを除く。

 問題は、これが据え置き型のようには 天地が定まらないウェアラブルオーディオやリモコンにおいてである。写真をご覧いただきたい。

 

         

 どちらも印刷された文字方向に従うぶんには間違ってはいない・・・んだけれど も 実際に装着した状態では「巻き戻し」「早送り」の
方向が逆になってしまう。

 これは間違える。

 自分の場合、初めて買ったレコーダーが写真左と同じ操作系だった。そのため、「巻き戻し」は上、「早送り」は下を押すモノと
体が覚えてしまっている。したがって、写真右側のような”逆”の操作系は、非常に使いづらい。

 状況に応じて機器を使い分ける身としては、どちらも違和感なく使いこなせればイイのだが、現実には、上のような超・基本的な
操作を、押す度に、えーと・・・と逐一意識しなければならない。そのうち、”逆”の操作を強いられる機器を長く使っていると、ポッと
従来機を駆り出した時、今度は間違って”逆”の操作をしてしまう、といった具合だ・・・。

 こんな風に、世の中 切り替えの早い人ばかりじゃないのでいっそ文字印刷の方向から統一してくれと思うのだが、前述の通り各社
お互い意地でも張っているのが譲らずの状態。

 ならば今、ここに折衷案を提起したく思う。

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△          △
△          △

▽    と     △   とが混在しているのが問題なのだから、真ん中の三角表示を

▽          ▽
▽          ▽
 ̄           ̄


     _
     △
     △

      |>         ・・・とする。「巻き戻し」「早送り」の文字表記は、しない。そして、工場出荷時の設定はメーカーの従来通りに、しかし

     ▽
     ▽
      ̄

最 終的な「巻き戻し」と「早送り」方向の決定は、メニューで入れ替えられるようにし、ユーザーにゆだねる。左右どちらかの操作体系に慣れ切った人を店頭で躊躇わ せたり、慣れずに結局ホコリを被る、といったことにならないようするには現状、巻き戻しと早送りを、ユーザーが好みで反転可能にするしか方法はないと思う。もちろ んこれだけでウリになるモノではない。しかし、逆の操作に慣れた顧客をも取り込むのは、これが最善でないかと考える。

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