Mini Disc とは何だったのか

追記:だらだら書いてしまったが要は

①データが削られることに聴感以上のマイナスイメージ
②ハイエンドオーディオメーカーに見限られ、ゼネラルオーディオへシフト
③ゼネラルオーディオでデジタル出力対応機は皆無、生録用途では何の為のデジタルか
④民生機器としては怒濤の壊れやすさ
⑤CD-Rの普及により存在意義が薄れた

・・・ってことです。


  おもに、CDからテープに録音する前に、曲順を入れ替えた時の雰囲気のシミュレートや、録音同時モニターの出来ないDATで録ったマスター音源の ながら確認に使っていたMD。前者は曲順を幾らでも入れ替えできる利点を使い、後者はドロップアウトの有無や シビアな編集タイミングの確認に使う。そういう用途にMDは十分過ぎるスペックを持っていた。

 し かし、私の周囲では出始め当初から、”音が悪い”と さんざん不評であった。ここに来られる方ならご存じのように、MDはCDと同じ収録時間を実現するため 打ち消しあっている(はずの)音や、人間には聴き取れない(とされてる) 20~2,0000Hz以外の音を削っている。しかし実際にはそのことが、可聴帯域にまで何らかの不自然な影響を与えていたのでないかと思う*。
*芥川也寸志著「音楽の基礎」によると、アフリカ遊牧民は、その生活環境から 2,0000Hzをはるかに超える音を容易に聴き取るとのこと。私の周囲にも、たまたまそんな人が多くいたのだろう。ATRACは、概論に頼るあまり線引きを間違えたのか。

  ちなみに、MDラジカセ(サンヨー PH-MD2100、カシオ MDH-505)でCDと、それをデジコピーしたMDとを聴き比べてみたが、私には違いが判らなかった。ラジカセ程度だと差が出にくいのか、ラジカセ側の 補間処理が優秀だったのか ジャンルにもよるのか、はたまた私の耳が ある意味”幸せ”なだけなのか。
 
  そういえば、一時はフルサイズのMDデッキに独自の技術をアピールしていた各社は、MDフォーマットでの音質改善を早々に諦めてしまった経緯がある。この事実は、ATRACがハイエンドオーディオとしては力不足だったことを示している。CD-Rがこ れほど普及し、ICレコーダーもPCM録音に、そして書き込みソフトもOS標準となった今、自分にとってMDのアドバンテージは、その携帯性以外見るべきモノがな くなった。

 しかし それで、今までご苦労さん めでたしめでたし、とはならないのだった。なぜなら・・・

 私もMD 録再機を入手した当初は、それこそ物珍しさも手伝って 何でもかんでもMDで録ったものだった。それらの中には当然、マスターディスクとも言うべき大切 な録音も含まれており、音源自体はマイク録りしたソースだから、SCMSの制限など受けずに他のメディアへ容易にデジタルコピーできるはずだった。

 た だしそれは、MD機器にデジタル出力があれば、の話だ。

 私がMD をマスター録音に使って失敗だったのは、発表当時のアナウンスとは裏腹に、結局、デジタル出力のあるポータブルMDが、サードパーティーも含めまった くといっていいほど出なかったことだ。せっかく劣化の少ないデジタル方式で録音されているのに、それを別メディアへ逃す時は、なんとカセット同様アナログ 出力*という、何とも昼あんどんなことになってしまった。
*今さらMDデッキに投資する気はないため。CDとの違いは判らなくても、不可逆圧縮であるという事実に、聴感以上のマイナスイメージを持ってしまったのが響いていると思う。

  この、マスターディスクに閉じこめられた内容の保存は、録音ソースへの思い入れによっても違うが深刻だ。自分の場合、ゲームからの録音が多かったから-ゲーム音楽なんてと言うなかれ、ファミコンのそれとは別世界-編集のタイミングをコンマ1秒オーダーで再現し、も う一回全部DATや、PCに突っ込んでPCM録音し直したという・・・。凝り性な私は、MDをマスター音源に選んだばかりに、なんつー無駄な二度手間と時 間を費やしたのだろう。しかし面倒でもやり直しのきく音源はまだ良かった。幾つかのハードは既に電源も入らなくなっており、それら楽曲は諦めるしかなかったからだ。

  また、ライブ録音のソースもアナログコピーでしか複製できない。これとてデジ録してあるのに、マスターをまんま複製できないのは遺憾だ。かといっ て、先に述べたように今からフルサイズのMDデッキやPCに繋いで取り出せる機種など買う気にならないので、結局このままだ。もし、デジタル出力のあるMD機器を持つ友達が身近に いたら、MDがβと同じ道を辿る前に行動を起こすことを強くお奨めする。話はそれるが、この他にも今どうやってHi-8の資産をメディアコンバートすべきかも画策中である。なんか先進的なイメージにつられてソ ニー製品を買うと、二階へ上がったところでハシゴを降ろされ気が付けば行き止まり、というパターンがちょっと多すぎると思う。そういえば、切手サイズカセットの「スクープマン」買って、テープの値段が下がらない~と後悔してた人、今どうしているだろう。。。

 実はDATやCD-Rだってそうなのだが、”私的録音補償金”なるものを間接的に取られるのもまた納得いかない話だった。なにゆえレンタルCDのコピーキャットの為 に、自主制作する人間からカネを取るのだ? これは後日、MDをタダで大量入手(お下がりともいう)することで取り返したが。。。

  こんなユーザーをターゲットに、CDデジタル出力だけでなく、MD信号もデジタル出力できるラジカセ、どっかから出ないだろうか。マスターディスクに最後 の仕事をしてもらい、役目を終えたら生き残った方の次世代DVD(あるいはリムーバブルHDD)ユニットに換装可能! ・・・といったような。

  もうひとつ、MDを信用できない点がある。それは故障が多いこと。ソニー製、アイワ製、シャープ製と、いずれも5台中4台が2年と持たなかった。CDより ヒドい。大事に使ってこうでは、運・不運以前にメカの冗長設計性が疑われる。ハードだけではない。100万回記録できると謳われたメディアも、海外生産になってからは急速に品質が 低下した。生録中に新品メディアが「deffect!」表示を連発し、停止することが度々あった。ビクターの「Crystal color」、TDKの「Disc Jack」といった大手メーカーのMDメディアまでがだ。

 そのようなわけで、2年ほど前なら、これだけ普及してしまった ら、ゼネラルオーディオにMD搭載は今後も必須なのだろうか・・・と思っていたが、あまりの信頼性の無さと、異動によるコミュニティとの断絶により、今と なってはもう無くてもいいんじゃないかとさえ思い始めている。せいぜいラジオの流し録り用途に使い、壊れたら修理せず捨てることになるだろう。かつてCD のフォーマッ トライセンサーになることで美味しい思いをしたのは分かるが、かといって、こんなにも壊れやすく、そして羊頭狗肉なデジタル録音機を普及させた上、さらに 下位互換のないフォーマットで延命し続けるのは、日本のゼネラルオーディオにとって損失と考える。そうでなくても海の向こうでは「一気に、MDへ」だった は ずのさらに上を行ってしまっているのだ。

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