ありがとうそしてさよなら SONY CFD-RS500

 

  当方 以前の仕事柄、家電量販店に寄ると ついついお客の品定めの過程をつぶさに観察してしまうのだが、この前、週末食糧の買い出しに行くフードセンター併設のラジカセ売り場で 初老の夫婦が店員に「この中で一番イイやつ、高いの下さい」と言って買っていったのが、ソニーのCFD-W78型だった。今は無きアイワの遺産でソニーは細々と残存者利益を得てきたわけだが、ネット通販でなら9800円のモノが、量販店だと15800円ほどで売られていたので確かに『一番高いの』ではあった。 デジタル・デバイドによる情弱の小金持ちさんが、それでも納得してお金を払ってくれたのだ。家電メーカー各社殿、こういう商売の仕方も あるってーことです。個人的には「せめて ひと頃のラジカセみたく、WリバースやRECレベル調整、あと・・・(キリ無く省略しました)・・・ くらいは付けてくれ」と、 思ってしまう仕様であるが、そのご夫婦が所望した『新品で買えるCDダブルラジカセ』は今どき貴重なのだし否定はできない。

 

  さて、本項の主役、CFD-RS500型をひとことで説明すると「カセットテープはまだ使うが、 ダビングはもう遣らない」という人のため、『ダブルデッキの片方をSDカードに置き換えたCDラジカセ』である。

 

rs500
タダで使えるwebコン テンツ容量 逼迫のため、写真は一枚きり

 

  以前、『陸の孤島』住まいで選択肢に乏しい身内のため見繕った古いラジカセが最近不調と聞き、そろそろ買い換えを考えていたのだが、当初 使い勝手の兼ね合いで、できれば同じメーカー(松下製)を 物色するつもりでいた。しかし「そろそろ田舎の家族にもメモリーカードに慣れて欲しいゾ」という意向に沿うラジカセは、待てど暮らせど松下からは ついに出て来ず しびれを切らしてコレにした。家電メーカー勤務時、ソニーは私にとって優良顧客でもあったので(もう時効だから書くと、ICの刻印を、SONYロゴ&CXA型番に変更するのが取引条件だったが)その分を今、ちょっぴりキャッシュバックの意図もある。その際、せっかくこういうサイトも開設しているのだし今回レビューと相成った。したがって、あまり使い込んでない上っ面だけの評価となるので もしコキ下ろしてもソニーの中の方、ドンマイ。


  届いた製品は、パッケージからして「本当にラジカセ入っているのか? 誤配じゃないよね?」と一瞬疑ってしまったほど小さい。

 

  デザインのパッと見は、−歳がバレるかも知れないが−『天才バカボン』に出てくる目玉の繋がった 警察官みたいだ。見ようによってはユーモラス? 問題は、そのフロントごしに透けて見えるス ピーカーの影が、やはりというか何というか『ドクロっぽい』んですよ。これに、ワザとライティングで陰影なんぞを付けてみたら、 おー、結構不気味というか 不吉なイメージだった。でもま、自分が使うんじゃないし、イイや。

 

  可能なら、MDが流行った頃に出ていたCDラジカセ、ZS-D1(通称デメキン)を今風にリバイバルしてくれれば ありがたいのだが、一度グッドデザイン賞を貰ったモデルの模倣はデザイナーのプライドが許さないのだろう。ZS-D1は、 壊れたら直してでも使い続けたいデザインだった。 本機はどうだろう? 身内には、変調きたしたら直さずに そのまま廃棄してもらって構わないと言ってあるし、またその方が、今のソニーにとってはイイことなのだろう・・・。


○ 一応、付属のAMルー プアンテナは無くても内蔵アンテナで聴ける。可搬性は上がった、が・・・

 

× 持ち運べるかと思わせぶりなデザインなのに乾電池駆動は不可。つまり交流専用って事。意外だ(昔のソニーやケンウッドは、音質改善のためにと あえて2電源方式をあきらめ、AC電源専用のCDラジオ/MDラジオを出していたことはあった)

 

○ しかしコンセントを抜いても時計は乾電池で保持できる。

○ 『時計用電池残量が判る』・・・この発想は無かった。そんなにちょくちょく電池残量を監視する必要があるほど電池食いなのだろうか本機の時計は。いや しかし昨今のラジカセは、うっかりコンセント抜こうものなら時刻合わせを遣り直さねばならないモデルの方が多いのだし、誉むべき点なのかも。

 

△ リモコンがあるのは良い。ただしカセット部はロジックメカでないため、リモコンでは動かせないのが惜しい!(これは、ミツミなどのメカ供給元も、もうガッチャン方式しか造ってないからなのかも知れないが)。

 

※ お稽古事に使う老人に、回転方向の定まらないリバースメカは逆に不評なのだそうだ。

 

× そして、やっぱりお稽古事用途のためか、当然のごとく日本語表示である。オーブンや炊飯器が英語では困るが、オーディオが日本語表示だとガッカリするのはナゼだろう?

 

× 本機は先述の通り、左右のパンチネットが繋がったデザインにするため、表示部が、正面でなく、斜め上方へ追いやられている。しかしこれは、オーディオラックなどからは すこぶる見づらい。普段はユカやタタミなど足下にでも置き、見おろして使って下さいってことなのだろうか?

 

△ カセットデッキ部は、テープの種類判別用の検出スイッチが無く、ノーマル(TYPET)にしか 対応していない。TYPEUでさえ 店頭からほとんど見かけなくなってしまった今では仕方ないのだろうが、未開封のメタルテープ(TYPEW)をストックしている身としては、寂しいモノだ。

 

× 電源OFF時、スピーカーが「ポツッ」というのは何とも安っぽい。

 

× 電源ON時に時計を常時表示させたくてもできない。

 

× テープ→SD録音時、録音レベルの調整ができない。

× テープ→SD録音時、録音品質の指定ができない(たしか128kbps固定)。

× テープ→SD録音時、無音部分での分割機能などが一切無い。

○ ただし、フルオートストップである(いつまでもテープを引っ張って伸ばしたりはしない)

 

  もっとも、カセット音源を保存したい人たちは、こういうラジカセからではなく、もうちょっと ちゃんとした据え置き型のカセットデッキでも使って、ド ルビー録音したテープならタイプに応じたNR復調を掛け、保存形式もmp3でなくWAV形 式で、録音レベルをテープの実力目一杯までリハーサルで調整するなどし、とっくに移行を済ませていることだろう。なので、今さら本機でカセット資産をデジタルデータ化する客層の顔が、私にはあまり思い浮かばないのだが。カセットの収録内容に、 年を経てその価値を見いだしたか/あるいはノンビリし過ぎて時勢に遅れてしまった人たちか。少し前なら安いヘッドホンステレオにだってTYPEU /TYPEWの再生モードはあったのに、 本機はそれさえも無いTYPE I専用であること、さらにレベルメーターの一つもない時点で、カセット音源の永久保存的な用途には、あまり こだわりの無い人はこれでイイかも知れないが私はオススメしかねる。

 

望 本体底面に、マイク/ライン切り替えスイッチのひとつぐらい付けてくれ。抵抗入りケーブル、どっか行っちゃった。

 

○ 感心したのは、各ソースともレジュームに近い機能が備わっていること。

ラジオ:直前に聴いた放送局から次回はじまる→まぁこれは どこも遣ってることだし当然でしょ う。

CD: 最後に停止したトラックの頭から再開する(ファンクションを他に切り替えても記憶している)『停止』の二度押しで解除される。

SD: これも最後に停止した時の曲を覚えており、そのファイルから再開する。ファンクション替えても、電源を切っても保持される。やはり『停止』二度押しでリセット。

 

  なので、他のCD/SDラジカセみたく、『ファンクションを切り替えるたびにトラック位置情報が揮発してしまい、いつまで経っても後ろの曲が聴けないじゃないか』なんてことは無くなった。

 

※ 音質は、良くも悪くも値段相応。ドンシャリラジカセの音に慣れた人がフラットで聴くと『ドン』はMEGABASS(メガベース)で補強されるが、『シャリ』は音質調整を使っても やや控えめなのか、少し“こもって”聞こえるかも知れない。少なくとも、黙ってても残留ノイズが耳につく“デメキン” よりかは遙かにS/Nは 良い。

 

× ライン入力が無いので拡張性に乏しい。他の機器からの音質の面倒までは見きれないよ、という姿勢なのか、あるいは本機スピーカーの、素での実力が露呈してしまうのを恐れてのことだろうか? 

 

○ 電源入っていても、タイマー時刻になれば ちゃんと録音を始める(ラジカセの中には、うっかり電源入れたままでは留守録の時間が来てもタイマー動作しないものが多かったが、本機でそういう失敗は無 い)。

 

× 実売価格を抑えるためか、それともiPodに お株奪われたモノに今さらテコ入れする気も無いのか、かつてのソニーにあったアピールポイントやギミック・華は全く無い。あくまで『今カセットが完全に無くなったら困る』人向け。

 

  外径わずか8cmの フルレンジスピーカーでも、ダクトの工夫次第では音場を結構ごまかせてしまうことを実証したのがボーズやここソニーであるが、これは、ラジカセにも見た目の迫力や豪勢さを求める私には あまり嬉しくない結果をもたらした。というのも、デフレ以降どこのメーカーのどのモデルも、揃いもそろって『安くあがるから』とばかりに小さくまとまってしまったからだ。

 

  さらに、かつてラジカセをオーディオの主軸に据えてたような家庭の生活水準も、アノ頃とは比較にならないほど低下した。このままでは、首都圏の平均的な家屋はそのうち『ウサギ小屋』から『トリ小屋』へ格下げ、なんてことにもなりかねない。本機はそんな『トリ小屋』にだって無理なく置ける省スペース設計ではある が、しかしそれって嬉しいことなのか悲しいことなのか。もっとも、私でなく、本機を実際に使ってる身内は「コンパクトで助かります」と言っている(長引く不況で固定資産税が払えなくなり、実家を手放し間借りしている立場なので、さもありなん)。

 

  トリ小屋で思い出し脱線するが、冒頭の話と同じ頃、比谷線だか東武線で荒川にさしかかった時、片や新築中のヘーベルハ○スの垂れ幕が、そして川をはさんだ向こう岸にはホームレスのブルーシートが はためくという、まるで今の日本の縮図のような光景を目にした。日本は空き家は実は余っているのに、前述のような経済的理由で追い出されてしまったり、必ずしも怠けた結果でも望んだ結果でもない路上生活者が河川敷での生活を余儀なくされたりしている。また一方では、死別でもないのに自分たちの都合で離婚した片親家庭が 「月24万じゃ足りない、もっともっと」と署名活動を遣ってるかと思えば、同じ国内で人知れず餓死体となって発見される姉妹や母娘がいる。一体、何が どうなっているのか?

 

  そして これらの懸案は、世界の目が再び東京へ集まる2020年までには少しでも是正されるのだろうか? はたまた、五輪に合わせてスラム街を報道陣から見えないよう目張りしたり、緑のペンキで“緑化”したあの国みたく、20年までにはシートハウスだけ“撤去”して、見た目だけを取り繕うのだろうか?

 

 もし 前者なら その心意気や良し、格差をここまで拡大した国賊の影響を無に帰せしめる第一歩を進めて欲しい。だが、もし残念ながら後者の道が選ばれるなら、6年後にこの国は、五輪の裏で庶民には増税、海外にはバラ巻き、なのに国内の貧困は放ったらかし、『復興よりも16日間のスポーツイベントの方が大事』なことを態度で示してきたと内外から批判されるだろう。のみならず、足立区の住民の方々までもが、近隣住民としてもっとほかに出来ることはあったのに見て見ぬ振りを決め込んでいた地元民として、世界に報道されちゃったりもしかねんゾ? もう決まってしまったことをウダウダ言うつもりは無いが、優先順位間違ってますよね? もっとも、あそこの河原の方々も、世をすね人をすねる理由があるのは分かるが、そのあまり変にヒネちゃった人も多いから、同情ばかりでもないんですけどね(←色々知り過ぎてしまい、全方位攻撃モードの私)。

 

 

  で 話を戻すと、ポスト・カセットテープは今やすっかりiPodiPhoneに 置き替わってしまった感があり、これは大多数のユーザーが、出先で聴く音楽に音質なんて求めてなかったことを意味する。自分みたく、「不可逆圧縮なmp3よりもDATを選ぶぜ!」「メモリ容量1GB突破したなら もうCDからWAV変換! なぜWAV再生ができない!」「ノイズキャンセラはソニー、ボーズ、松下と一通り買うも結局、歩く際にコードが服と擦れるスクラッチノイズの方が深刻」「せっかくだからDAPにも外付けアンプ! ああでも それじゃウェアラブルの利点も半減だ・・・」などとDAPにも理想を追い求めるタイプは、どうやら非主流派であるようだ。& コンパクトカセットは、元々特許フリーにすることで世界に広まったが、囲い込みを意図して失敗した 国内オーディオメーカーまでもが今はiPodドッグを主力商品と位置づけており、国内メーカー発 のソリッドオーディオ群雄割拠は実質敗北宣言だろう(ソニーも日本国内ではマジックゲートで使い勝手の悪いメモリーウォークマンを主力としていた その時期に、海外では しれっとiPodドッグを出していた)。

 

 それと、カセットの選択肢が年々無くなっていくことに気を取られている間に、今度は何と、CDまでもが売れなくなってきており、この調子だと、ゼネラルオーディオからCDドライブすら無くなってしまうかも知れないと言うではないか(リストラされてからCDなんてほとんど買えなかったので気づかなかった)。しかし、ビクターのCDなしドラムカン(という名前ではないが)が出てきた時は、 今CDを完全に取り去ってしまうのはさすが に時期尚早ではないかと思う。メーカーが、駆動部をなるべく減らしたい気持ちは解かるけど。

 

  以上、順不同で○も×も分けずに並べてしまったが、こんな感じです。

 

  『買ったら罰金』消費税が、現在そして将来も自分には まず戻ってこないポジションのまま増額された以上、もはや今使ってるモノが壊れでもしない限りこのテの趣味のオーディオにカネ払うことはもうしないつもりなので、仕事柄関心を持ちウォッチしてきたゼネラルオーディオ関連のコンテツンツは本稿を以て更新停止とさせていただきます。今まで日本のオーディオシーンの再興を願い、購入する立場の側から なにがしかのヒントだけでも残せないかとリストラの渦中チマチマと遣ってきたつもりだが(もちろん帰宅後にであるが)こんな不本意な結果になってしまって残念無念。でも、懐かしさで見に来てくれたりご感想をくれた方々、どうもありがとうございました。そして日本のオーディオメーカーの皆々様、願わくば私のような人間でも「消費税払うの悔しい!・・・でも、買っちゃうッ!」・・・と、なるよーなモノを是非とも見せていただきたい。

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