Title

植木鉢 新生児・乳児の具合の見極め方

新生児・乳児の具合の見極め方について

心臓病の症状としては大きく心不全とチアノーゼがあります.
一般には肺血流が増加すれば心不全が,肺血流が減少すればチアノーゼが出現します.
心不全の新生児・乳児の症状には,多呼吸(呼吸数 60回/分以上),陥没呼吸
(吸気時に肋骨の間,一番下の肋骨の下,頸のまんなかのくぼみがへこむ),
飲みが悪い,泣き声が弱い,汗をよくかく,皮膚が冷たい,体重増加が良くない,
ゼーゼーする,うなる,皮膚の色が悪い(蒼白),不機嫌などがあります.

ふだんどんな息づかいをしているか,特に眠っている時に胸の動きをみて,
呼吸数やへこみ具合をチェックしておく必要があります.

また,哺乳量とともに哺乳時間(通常15分以内)をある程度頭に入れておくことも重要です.
一日の哺乳量をメモしておいて病院受診時に主治医に伝えるといいでしょう.

かぜや気管支炎などの呼吸器感染に伴って心不全が悪化することも多くので,
発熱や咳などにも十分注意が必要です.心不全が悪化すると,血圧低下,
末梢循環不全などショック状態になることがあり,チアノーゼが出現したり,
あえぎ呼吸になったりします.呼吸数がふだんより多い(80回/以上とか),
吸気時のへこみ具合が強い,つねにうなっている,ゼイゼイが強くて苦しそうだ,
ミルクが飲めない,顔色がいつもよりよくない,といった際には急いでみてもらった方がよいでしょう.

チアノーゼの程度は病気や手術の有無などによって様々です.
病院を受診すると,パルスオキシメーターという器械でサチュレーション(動脈血酸素飽和度)を
測定しますが,お子さんのふだんの唇の色とサチュレーションの値とを頭に入れておくといいでしょう.

短絡(シャント)手術は,最近は人工血管を使う手術がほとんどで,アスピリンやワーファリンを
飲んで血管の閉塞を予防していますが,それでも急激に血栓ができて,チアノーゼが増悪する場合があります.
チアノーゼがとても強くなると生命の危険があるので,急いで病院へ連れて行く必要があります.
ファロー四徴症などでは,排便時や泣いた時などに急激にチアノーゼが強くなって息が
ハーハーして苦しくなる無酸素発作を起こすことがあります.

そのような赤ちゃんにはβブロッカーという薬を投与して発作の予防をします.
発作時には,赤ちゃんをおんぶしてあやすのがいいとされています.
強い発作の場合には救急車を呼んで酸素吸入しながら病院へ行ってください.

●心臓病を持ったこどもの親が心がけること

保温:心不全があると,汗が多くて,手足も冷たいことが多いので, 衣服,掛け物,手袋,靴下などで保温するといいでしょう.

体位:心不全の赤ちゃんには肺うっ血を軽くするために,上体を30度くらい高くする体位で寝かせておくと,呼吸が楽になります. また,ハンドタオルを薄くたたんで肩の下に入れて,気道を確保します.

栄養:過剰な水分摂取は心不全を増悪させるので,主治医に水分制限が必要か どうかきいておきます.心不全があると1回の哺乳量が少なくなることがあるので, 哺乳回数を多くすることもあります.離乳食開始は通常と同様に,満5か月を 目安にします.貧血は心臓の負担を増やしますので,鉄分の多い食事で貧血を予防しましょう.

清潔:汗が多いと,汗疹や湿疹ができやすいので,衣服は適度に交換します. 安静:赤ちゃんのぐずりは,空腹,甘え,排尿排便,心不全や無酸素発作による 不機嫌などがあります.適度に泣くのはいいですが,泣きすぎのはよくないので, そのような時には抱っこしてあやしましょう.

薬:心不全には第一選択として利尿薬(ラシックス,アルダクトンA)が処方されます. 苦くて飲みにくい薬ですが,大事な薬なので,間違いのないように飲ませてください. ジゴシン(ピンクのシロップ)は,投与量を間違えると,嘔吐したり,不整脈が出るなど の中毒になることがあるので,過剰投与しないよう注意が必要です.

感染症:冬に流行するインフルエンザウイルスやRSウイルスなどに感染すると 心臓病の児にはかなり負担になるので,注意が必要です. 人混みへ連れて行かないこと,家族がかぜをひかないように注意する ことなどが重要です.また,軽いかぜ程度でも早め早めに受診することが大切です.

予防接種:心臓病の赤ちゃんは,感染症で具合が悪くなることが多いので,BCG, ポリオ,三種混合など予防接種を積極的に受けましょう. 欧米諸国では6か月以上の慢性の心血管系疾患をもつ小児とその家族, そして関係する医療従事者に,インフルエンザワクチン接種が勧められています. また,アスピリン(商品名バファリンやバイアスピリン)を 服用中の小児(生後6か月?18歳)では,インフルエンザに罹ると ライ症候群の危険が高くなるので,ワクチンが勧められています. ただし,現行のインフルエンザワクチンの有効率は70?80%で,100%ではありません. 副反応としては局所の発赤,疼痛,腫脹,発熱,頭痛などがあります. 卵アレルギーの赤ちゃんは接種要注意者に該当します.

歯:歯がはえてきたら,虫歯にならないように注意が必要です. 虫歯は感染性心内膜炎の原因になるからです.虫歯の予防法ですが,歯磨き, 糖分の少ないおやつにし,その後には歯を磨くこと,フッ素の塗布などが勧められています.

山形大学医学部小児科 鈴木 浩 助教授

Monday, March 03, 2003 up


このwebサイトについて
山形県心臓病の子どもを守る会に賛助会員として、いろいろご支援をいただいている県内の先生方から 支部会報誌にいろんな情報を投稿していただいた記事について、少しでも多くの皆さんにおつたえすべく 公開掲載とさせてもらってます。このwebサイトが心臓病という心を開くゲートウエイとなれれば 幸いです。


トップページに戻る
心にも花を育てようね。




詳しくは会員会報誌掲載しますネ。(^^) y-izu@mvi.biglobe.ne.jp