[ 第4章 群馬へ ]
明けて土曜日。
買い物に行って食事をし、いろんな会話をする。
特に何も変わらない週末。
ただ一点、会話の中に癌の話題があることを除いて。

それにしても、彼女は元気だった。
とても癌に冒されているとは思えない。
そう思わせるのは、ほとんど見せなくなった涙の所為かもしれない。

癌の診断を下した医師は、他の病院での見解も聞いてみてくれと
彼女に云ったらしい。セカンドオピニオンというそうだ。
月曜に国立がんセンターに行って診断を仰ぐことしようか。

そんな話をしている時、彼女のPCが一通のメールを受信した。

メールの差出人は、群馬で看護婦をしている友人のMさんからだった。

Mさんは、俺の知る限り一番仕事熱心な看護師さんだ。
もっとも、知り合いの看護師さんはMさんしか居ないので、
比べようがないのだが。

メールの内容は、たくさんの気遣いと精一杯の誠意が溢れていた。
俺に読んで聞かせてくれた彼女は、最後の方では涙声になった。

Mさんがメールの中で語る。

自分の知る限り、県内で最高の医師を紹介できる用意がある。
ただし、無理強いをするつもりは毛頭ない。
茨城からは距離もあるし、よく考えて返事をください。
決して自分に気遣うようなことはしないで欲しい───

プロが最高だと太鼓判を押す医師。
願ってもない。むしろこちらからお願いしたいくらいだ。

遠いなどとはまったく思わなかった。
愛知からここまでの距離を思えば、
100kmなどすぐそこだ。

俺の中では即決だったが、彼女も同感だったようで、
その有り難い申し出を受けることにした。

診察は月曜だという。


いざ、群馬。




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