[ 第1章 はじまり ]
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話したいことがあるから、と携帯にメールが あったのが昼過ぎ。
普段遠く離れたところで暮らす俺と彼女は、 ほとんどの用件を、メール等の文字で伝える
ことを習慣としていた。
だから、そう改めて云われることに、いい予感はしなかった。
かと云って、特段悪い知らせとも感じなかったが。
ただ、この情報は早く聞いた方がいいと
俺の中の何かが警鐘を鳴らしていた。
そこで電話をしようかと返事すると、今忙しいので 落ち着いたら連絡するという。
了承してその時を待つことにした。
15時頃だったと思う。彼女から電話可能とのメールを受信。
早速電話をする。
「あまり良い話じゃないんだけど」と切り出す彼女の
話とは、数日前に見つかった胃潰瘍の検査結果についてだった。
「手術した方が良いって」
そんなに進んでいたのか、じゃあ手術してゆっくりするといい、
なーに結婚式までは充分時間があるし、などという台詞を口に しようとしたとき、彼女はこう云った。
「癌だって」
「癌だってさ・・・」
一気に涙交じりになった声を発する携帯を持ったままの俺は、 総ての思考回路が停止した。
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