国鉄(インチキ)車両図鑑-3(その2)



奥羽本線におけるナハ10903~の編成例を示す。


奥羽本線 434レ 青森-秋田 昭和33年1月03日調査
C61 14      青
オ ハ フ61 202  秋アキ
ス   ハ32 487  秋アキ
ス   ハ32 106  秋アキ
ナ   ハ10 903 秋アキ
ス   ハ32 692 秋アキ
オ ハ ユニ61   7 秋ヒロ
ス ハ ニ31  18 秋ヒロ
D51 663     館
吹雪の矢立峠を行く上り列車。本務機はC61、後補機はD51である。
悪天候の中、補機の助けを借りた列車は、殆ど信じ難い猛スピードで峠を駆け上って行く。

SLブームの頃、週刊文潮の巻頭グラビアとして連載されていた「SLの轍」と言うフォトエッセイの中に、この奥羽線のC61とD51のコンビについて書かれた回があった。小説家の佐川弘之氏がその回の受け持ちであったが、氏はそこで峠路を登るSL重連をこう表現されている。

「(前略)さすがに旅客用のC61は大きな動輪であるから、相当のスピードでもゆっくりと回っているように見える。気の毒なのはデコイチで、4対の小さな動輪を滑稽なほど目まぐるしく回して、必死に追い付いて行っているように見えるのである。
列車が驚くほどの速さで走り去り、山陰に見えなくなった頃合、本務機の野太い汽笛が「ボォーッボッボッ」すると間髪を入れず後補機がやや甲高い声で「ボォーッボッ…ボッ」と返す。直に本務機の長笛が「ボォー…」。
よくSLを鋼鉄のサラブレッドに例える向きがあるが、私は敢えてこう表現したい。「鋼鉄の雲助」と。
「おい、相棒、こう吹雪いちゃ足も捗らねェなァ」
「おいきた、その事よ。こうなりゃぁ酒手をはずんで貰わにゃなるめェ」
「お客さん、聞いた通りだ。一つ酒手をはずんでやっちゃ呉れませんかねェ」
まぁ一つしっかりせんか国鉄!

ナハ10903~