「機械画報」昭和15年5月号記事より抜粋
本誌讀者諸君にあつては、日本の大動脈たるの東海道本線を往來する特急列車に心動悸めかぬ者は四方あるまいと存ずる。
然るに來年依り全く新機軸の眞新しい特急列車が颯爽と活躍を始めると聞き及べば、讀者諸君その期待感如何許りであらう。
航空機の機体材料となる「ジユラルミン」と謂ふ極く輕ひ素材を使用し同じ機關車であつてもより多くの客車を牽引出來ると謂ふ革新的なる新式客車が、現在鐡道省各工場で生産されて居るので、今日は其れをチヨツト紹介しやう。
オハ四〇系と名付けられた此等の新式客車は、二等車、三等車は謂ふに及ばず、食堂車、一等展望車、一等寝臺車まで揃へた、正に特急用客車と呼ぶに相應しい陣容なのである。
基本形式の開放型二等寝臺車「スロネ四七」
此の豫想圖は、やがて四〇系によつて置き換へられる東京-下關間の一・二等特急「富士號」の圖である。先頭を務めるは話題の流線型カヴアを着けたEF五七形式。此は沼津まで牽引し、沼津から先は蒸氣機關車コレモ話題となつた流線型C六〇形式が、長躯萬里大阪迄を務める。大阪から下關は在来のC五九が就く事とならう。
先頭から、在來型郵便車に続ひて「マニ四〇」形式。此れは荷物車である。
次いで二等座席車の「スロ四〇」形式。
二等寝臺車の「スロネ四七」形式。此等の優等客車はTR七五型と謂ふ新規設計の三軸ボギイ台車を履いてゐる。
食堂車の「マシ四七」形式。
團體旅行に打つて付けの四人個室を備へた「マロネ四八」形式。
一等寝臺車の「マイネ四七」形式。
殿を勤めるのは優美な姿の「マイネテ四七」形式である。此の豪華な一等寝臺展望車は、定員僅かに五名と謂ふ、贅澤な造りとなつてゐる。
其れ程の贅澤はせず共、豪華な旅が出來ると謂ふのは、「富士號」と同時に、三等特急「櫻號」も新形式に置き換へられるからである。
新規設計の三等寝臺車「オハネ四〇」形式は、現在の「スハネ三一」形式よりも格段に進歩した造りとなつてゐる。寝臺巾が今の五〇糎から五五糎に擴大し、運轉中の轉落事故を防ぐ為のベルトが渡してある等、観るべき物がある。
豫想圖は四〇系客車に置き換へられた後の「櫻號」。最後尾に一輛繋がつて居るのが彼のオハネ四〇形式である。
(以下略)