将来の羽根鉄道:補稿・葛城自動車工業の可能性




1995年、中堅バス・トラックメーカーの葛城自動車工業は、経営の行き詰まりからフランスの自動車メーカー、アルナート・ジョッシュと資本提携し、経営陣が入れ替わりました。その後の同社の再建への努力は、本来なら日系ダイヤグラムやエル・スルタン誌で取り上げられるべきもので、ここで語られるものではありません。
2000年に至り、豊海で開催されたバス・トラックモーターショーで一番の話題をさらったのが、再建途上にあった葛城自動車の「ロードコンベアシステム(RCS)」でした。

95-1 参考(道路車両)



システムそのものはさして目新しいものではありません。要は連結バス・トレーラートラックをシステム化したものと考えれば良いのですが、注目すべき点が二つありました。

① 購入単価の低廉化:これは人工木材等の新素材を車体等に多用する事と、徹底したマスプロ生産によって、従来のバス価格の2/3以下と言う価格を打出して来ました。この点は各地のバス・トラック事業者の注目を惹き、盛んに質問が飛び交っていました。

② 電気駆動への準備:この時点でのロードコンベアは従来通りのディーゼルモーターを使用した駆動方式を採用していました。営業マンの話では、技術的問題点が解決され次第、逐次ケロシンモーター+ダイナモの電気駆動にアップデートする予定であるそうです。

このシステムが最終的に目指す所は、陸上地域交通のボーダーレス化であると強調していました。これは2003年現在欧州の一部の地域で実用化しつつある「バスと路面電車の直通運転」を指している事は明らかで、同社の説明では国交省の認可が下り次第、実用化に向けての実験が開始されるとしていました。

96-1 形式未詳




それに先立ち、葛城自動車では、ロードコンベアと同根の「レールコンベアシステム(RLCS)」を立ち上げています。これは判りやすく言えば、汎用電源車(駆動装置付き)+電動客車、或いは電動貨車を連結して走らせるもので、1輌の電源車で3輌までの客車、貨車に走行電流を供給出来ます。
電源車はディーゼルエンジン+ダイナモを内臓していながら誠にコンパクトにまとまっています。
この方式のメリットは、購入費は言うに及ばず、維持費が大いに節減出来る点で、特に時間帯によって輸送量に大変な落差がある 地方交通には大変に旨みがあると思われます。
更に車体各部が徹底的にユニット化されており、例えば発電機が寿命を迎えた場合、比較的低廉な価格で最新の機器にアップデート出来る点も大きな魅力と言えます。
デメリットとしては、普通の鉄道車両はおろかバスを比較しても寿命が短い事が挙げられます。


この全く新しいシステムによって、将来の羽根鉄道は「電気式路線バス」や「蓄電池式電車」の闊歩する地域交通の新しい幹線となって行くかも知れません。
いずれにしても、昨日あったものは今日には姿を変え、今日あるものは明日は更に姿を変えて行くのでしょう。