架空地名濫造法(スキタラ法)その1「基本編」




架空土地系架空鉄道に専念する場合、どうしても避けて通れない苦難。

それは架空の土地をどのように命名するかでしょう。あの方から無茶振りされて、動物の名前を全て無から名付けさせられたアダム君の苦難を味わう事とは相なる訳です。

そこで、本稿はそうした架空地名を、安価に、手っ取り早く、大量に粗製濫造する方法を公開します。
煙が上がりそうな程熱い根性と人もそびらを返す程の強引さだけあれば、地名もどきなど幾らでも捻り出せます。



その方法をスキタラ法と言います。

スキタラとは古代ギリシャで使用された一種の暗号の名前で、遠征に赴く際、軍団長は五人組政治委員(エフォライ)から円錐を預かります。
エフォライも同じ大きさの円錐を持っており、何か司令を出す際には二本の革リボンを適当な所に巻き付けてペンで命令を記載し、それらの皮リボンは伝令に託されて軍団長に渡されます。
軍団長は二本の革リボンを手元の円錐に巻き付け、滑らせていくとどこかで意味のある文が現れると言う訳です。運悪く伝令が敵に捕まっても、円錐を持たない敵には何が書いてあるのか判らないと言う、優れた暗号法なのです。

架空地名濫造法を上梓するに当たって、私はこのスキタラから名前を採りました。理由は何となくカッコ良かったからです。



使用するもの

○漢字が書いてあるもの

・適するもの:書籍、新聞、雑誌、駐車違反通告書、教科書、保証書、広告、委任状、契約書、賞状、裁判所呼出状、経本、石碑、墓石等。
・適さないもの:電話帳、時刻表等、同じ漢字や見覚えのある漢字が連続して掲載されているもの。

○方眼紙、又は目盛を書いた紙2枚。

○筆記用具。もしあなたがPCを持っているなら筆記用具は不要です。 以上です。では始めてみましょう。



①手許に用意した「漢字の書かれた紙」から、漢字を順番に方眼紙に書き写します。

A:委任状代理人欄空欄場合無効該当者(ソース、地元法人会総会案内状)
B:全生太陽注聖母愛同時彼女唯一無二(ソース、聖☆おにいさん7)

ここでAとBを縦に並べて上下の二文字が地名らしくなれば1ポイントゲットです。ではどのように地名らしくするか?



A:委┃任┃状┃代┃理┃人┃欄┃空┃欄┃場┃合┃無┃効┃該┃当┃者

B:全┃生┃太┃陽┃注┃聖┃母┃愛┃同┃時┃彼┃女┃唯┃一┃無┃二


まずこのままで読んでみて地名らしい響きの物があるかどうか調べてみましょう。音読み訓読み両方で組み合わせます


① 委 全  いぜん、ゆだぜん、いまた、ゆだまた
  ━━━
② 任 生  にんしょう、にんせい、にんき、まかしょう、まかせい、まかき
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③ 状 太  じょうた、じょうだい、じょうふと、そうた、そうだい、そうふと
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④ 代 陽  だいよう、だいひ、しろよう、しろひ、かわよう、かわひ
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⑤ 理 注  りちゅう、りそそ、さとちゅう、さとそそ
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⑥ 人 聖  じんせい、じんしょう、じんひじ、にんせい、にんしょう、にんひじ
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⑦ 欄 母  らんぼ、らんはは
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⑧ 空 愛  くうあい、くうなる、そらあい、そらなる
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⑨ 欄 同  らんどう、らんおな
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⑩ 場 時  ばじ、ばとき、じょうじ、じょうとき
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⑪ 合 彼  ごうひ、ごうかれ、あうひ、あうかれ
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⑫ 無 女  むじょ、むおんな、ないじょ、ないおんな
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⑬ 効 唯  こうゆい、こうただ、きくゆい、きくただ
  ━━━
⑭ 該 一  がいいち、がいひと、がいいつ
  ━━━
⑮ 当 無  とうむ、とうない、あたむ、あたない
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⑯ 者 二  しゃに、しゃふた、ものに、ものふた



それでは個別に検証しましょう。

①ですが、委全と書いて、「いぜん」「ゆだぜん」「いまた」「ゆだまた」と読んでみました。
まずそのままの漢字「委全」では地名らしくありません。そこで

手順1:この読みがなと同じ読みの他の漢字を充てて、地名らしくなるかどうか考察する。

やって見ましょう。

「いぜん」を射前、居前、井善、衣善など漢字を交換して見ます。今はワードがあるので簡単だと思います。

手順2-1:ここで漢字交換した名前の読み方を更に工夫して見ます。射前→いまえ、いりまえ、いるまえ・・・

手順2-2:2-1で出て来た名前に、読み優先で更に他の漢字を充てて見ます。いまえ→今江、今絵、居舞、射間江・・・

手順2-3:2-1で出て来た名前を前後倒置して見ます。まえい→真栄、馬江井、前衣、まえいり→真栄里、前煎・・・

手順2-4:2-3で出て来た名前の読み方を変えてみます。真栄→しんえい、前衣→さきごろも、真栄里→まえさと・・・



さて、ここまで言葉のスプラッタホラーをしてみた結果、「委全(いぜん)」だけで以下のような地名らしいものが出て来ました。

今江、今絵、真栄郷(里の字を郷に置き換えると日本的)、前衣・・・



①の「ゆだまた」でも例証して見ましょう。

手順1:この読みがなと同じ読みの他の漢字を充てて、地名らしくなるかどうか考察する。

「ゆだまた」を湯田俣、湯田叉。これは狙ったようにハマリますね。山間部の温泉が湧いている沢の出会いの地名にありそうです。

手順2-1:ここで漢字交換した名前の読み方を更に工夫して見ます。湯田叉→ゆださ、ゆだしゃ・・・

手順2-2:2-1で出て来た名前に、読み優先で更に他の漢字を充てて見ます。ゆださ→油多沙・・・

手順2-3:2-1で出て来た名前を前後倒置して見ます。さゆだ→白湯田、佐柚田・・・



例では「委全」と言う二文字の漢字から、「今江」「前衣」「真栄郷」「湯田俣」「白湯田」などと言った地名らしいものが出て来ました。



これを一巡したら、Bの用紙を一文字下へずらします。

① 委    
  ━━━
② 任 全  にんぜん、にんまた、まかぜん、まかまた
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③ 状 生  じょうせい、じょういき、じょうき、じょうなま
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④ 代 太  だいた、だいふと、しろた、しろふと
  ━━━
⑤ 理 陽  りよう、りひ、さとよう、さとひ
  ━━━
⑥ 人 注  じんちゅう、にんちゅう、じんそそ、にんそそ、ひとちゅう、ひとそそ
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⑦ 欄 聖  らんせい、らんひじ
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⑧ 空 母  くうぼ、くうはは、そらぼ、ほらはは
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⑨ 欄 愛  らんあい、らんまな
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⑩ 場 同  ばどう、ばおな、じょうどう、じょうおな
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⑪ 合 時  ごうじ、あうじ、ごうとき、あうとき
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⑫ 無 彼  むかれ、ないかれ、むひ、ないひ
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⑬ 効 女  こうじょ、こうおんな、きくじょ、きくおんな
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⑭ 該 唯  がいゆい、がいただ
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⑮ 当 一  とういち、とうひと、あたいち、あたひと
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⑯ 者 無  ものむ、ものなし、しゃむ、しゃなし



ここでは、一見これは使えないな、と思うような例を検証して見ましょう。⑬の効女を例に採ります。「こうおんな」をどう地名っぽくするか?

手順1:この読みがなと同じ読みの他の漢字を充てて、地名らしくなるかどうか考察する。「こうおんな」を鴻女、小尾奈。何となく「字」らしいのが出て来ました。

裏技1:ここで「おんな」を「な」と読んでみます。すると、「こうな」→幸菜、神名、鴻奈、高南、講納。

裏技2:同じく「おんな」を「つま」と読んでみます。すると、「こうつま」→香端、功爪、孝妻。地名らしくなりました。

手順2-1:例えば前出の「高南」の読み方を更に工夫して見ます。高南→こうなん、たかなみ・・・
或いは、香端→こうばた、きょうばた、かばた・・・

手順2-2:2-1で出て来た名前に、読み優先で更に他の漢字を充てて見ます。たかなみ→隆南、こうばた→鴻旗・・・

手順2-3:2-1で出て来た名前を前後倒置して見ます。たかなみ→並鷹、こうばた→幡香・・・



⑧で出て来た、もう全っ然使えそうにない「空母」も捻りようで何とでもなりそうです。

裏技3:駒峰と置き換えてみましょう。これで一旦「くうぼ」と読ませます。これを更に読み替えて、駒峰→こまみね、くがみね・・・

倒置して、駒峰→みねく→峰久→みねひさ・・・



ここで重要なヒント。文字の置き換えや読み替えの際に、佳字を無理にでも宛てましょう。元の漢字を何に置き換えても良いとは言っても、「くうぼ」を苦墓としては地名になりませんし、こうばたを降旗としては具合が悪い。
佳字を宛てて行くと、そのまま大都市や県庁所在地に相応しい地名が現れて来ます。

「隆神電鉄は県庁所在地の隆南市を起点として、香端で白湯田温泉、峰久口への支線を分岐し、神名市まで40㎞を結んでいます」



スキタラ法の意図する所は、このように漢字→よみがな→漢字、等と変換を重ね、文字の前後置き換えや無理やりな読み方を宛てる事で地名のような単語をシステマチックに出現させる事です。

これらを別のメモ用紙に書き留めて置くのですが、その際、「大都市用」「地方用」とファイルを分けておくと便利です。県庁所在地クラスの地名となると、中々一杯にはなりません。