日本(インチキ)風俗大系 -6-
座間のケンカ神輿
(日本ニュース第1058*61号、昭和38年12月1日封切「座間のケンカ神輿」より)
神奈川県中央部に位置する高座郡座間町。
-相模原台地から相模平野の俯瞰。背景には青澄んだ丹沢の山々。
相模原台地と相模平野とに跨る、人口2万5千人余りの静かな農村です。
水に乏しい相模原台地の上では養蚕が盛んで
-汗を拭きながら手際よく桑の葉を収穫する農家の娘さん達。
一方の相模平野では水が豊富な事から肥沃な水田地帯となっています。
-「くるり棒」や「唐箕」を用いて明るく笑いながら脱穀作業をする農民達。
ここ座間では、毎年11月3日に奇祭「ケンカ神輿」と言う行事が毎年行われています。
-鬱蒼とした杉林に三方を囲まれた古い神社。
この祭りは、ここ「座間神宮」において執り行われます。台地の村を「上の段」、平野の村を「下の段」と分け、各々40挺の神輿を用意し
-小さな樽神輿。
村々から選ばれた若者がこれを担いで激しく争う行事です。祭りの当日、神社の境内に集合した若者達は
-境内で水垢離を取る若者。一人の娘が手拭を差し出す。照れながら受け取る若者。
このように水垢離を取って身を清めると、上の段の若者は赤い羽織、下の段の若者は緑色の羽織を身に着けます。
-一同本殿の前で頭を垂れる。後姿の神主が祝詞を奉じている。
神主さんの祝詞、次いで神楽が奉納されると、いよいよ競技開始です。一同は世話人に引率されて
-畑の脇の小径を一列に辿る一同。周囲は林と畑ばかり。
「合戦平」と呼ばれている競技場へやって来ます。
-1メートル四方位の四角い砂の城を作る若者達。
競技場の隅に、両チーム共このような砂の城を作ります。この城は競技中に触れる事が許されません。
-「おーし、行くぞー」と言っている担ぎ手の若者達。周囲では応援に駆け付けた家族や村の人々。誰も彼も楽しそう。
神輿は一挺を4人で担ぐ大きさで、何処にも壊れる所がありません。この神輿のどこかが地面に付くと、その神輿は「倒された」事になり、競技場を離脱する決まりになっています。
-広い野原で向き合う「両軍」の若者達。その間に「両軍」の代表者が中央に進み出て、丁重に挨拶を交わす。
こうして代表者の挨拶が済むと競技開始。世話人の号令で両チームは一斉に競技を開始します。
-眼鏡を掛けた細身の老人が旗を振り降ろす。背後で大太鼓が二度鳴る。一斉に相手に突撃する神輿。早くも尻餅を突いている神輿もある。湧く観衆。
開戦早々に倒されて、場外から味方に声援を送る人も出て来ました。ちょっとした怪我なら心配無用です。今日は街のお医者様も休診。会場に駆け付けて衛生係りを受け持っています。
-大兵肥満の先生に突き指の手当てをしてもらっている若者。
この日は村中総出で応援に駆け付けています。自分のチームの神輿が相手を倒すとこの通り。
-大喜びで応援する麦藁帽や農協帽や姉さん被り。一方倒された若者達は頭を掻いたり照れ笑いをしながら場外へ退いて行く。
今年は上の段、詰り赤チームが優勢のようです。
-崩れかかる緑チームの神輿。嵩に掛って追撃する赤チーム。歓声は一段と大きくなる。世話人の旗が高く上がって赤チームに振り下ろされる。再び大太鼓。
赤チームが勝ちました。負けた緑チームの「砂の城」は勝った赤チームによって徹底的に破壊され、鋤や鍬で平らに均された後、塩を撒いて清められます。
-塩を撒く若者。負けた一人が勝った一人を軽く小突いて「来年は見とけよ」等と笑い掛けている様子。炎上する大神殿。女の悲鳴。
今年の競技はこれで終了です。
-胴上げをしたり万歳をして喜ぶ赤チームの人々。負けた緑チームは「やれやれ仕方ないな」と言いたげに苦笑いをしたりしている。
競技は済みました。世話人の先導で神社の境内へ戻って来ると、神主さんは再び祝詞を奉じます。
-境内。一同整列して頭を垂れ、神主が祓串を手に祝詞を奉ずる。「…カシコミカシコミ、オソレヲロガミテマオスー…」
今年の競技が無事終了した事、今年は赤チームが勝った事を神前に報告する為です。
-突進する象の恐ろしげな姿。
今から2千2百年前、この座間の地で戦い、命を落とした戦士達の御霊を慰め、続いて彼らを統率していた、ローマの英雄、スキピオ・アフリカヌス
-真紅の軍装に身を包んだローマ重装歩兵達の、厳しく情け容赦無い表情。
そしてカルタゴの名将、ハンニバルの功績を讃える為に
-ヌミディア騎兵の攻撃で壊乱するカルタゴ歩兵団。ハンニバルの悲愴な表情。
祝詞はラテン語とフェニキア語で二度、繰り返されます。
-炎上するカルタゴ。煙に巻かれて倒れるカルタゴ市民。ローマ兵に引き出されて連行されるカルタゴ市民。丘の上から燃えるカルタゴを見詰めて涙するスキピオ。
字幕 「何時かローマも滅亡する日が来るであろう。それを思って泣いているのだ」
-再び鬱蒼とした神社の境内。
祝詞が終わると全員にお神酒が配られて境内は一変、今や「敵味方」もなく和やかな賑わいに包まれます。
-握り飯を頬張り、持ち寄りの煮しめに顔をほころばせる人々。程好く酔ったのか歌い踊る男達、手拍子を打って笑い崩れる女達。
こうして平和な農村の晴れの一日は幕を閉じるのです。
-錦秋の山裾を走る2輌編成の気動車。
「日本ニュース・完」