「機械画報」昭和15年正月特別号附録図解より抜粋






讀者の皆様、新年明けましてお目出度うござゐますトハ、もう耳にタコが出來る計り聞いてゐるでせうから、此処では御挨拶抜きで參りませう。
幸ひにして毎年皆様より御好評賜つてゐる処の、新年號特別附録圖解を本年も御届出來る次第とは相成マシタ。

昨年新年號附録の世界の戰車縦覧に引續き、本年御届致しますのは、我國の輸送を一手に引受け、日夜鐡路を驀進し續ける蒸気機關車の縦覧でありマス。模型店にでも行つた積りで御覧下さい。

讀者諸兄に於かれましては、どれ丈の形式名が御判りになるでせうか。
チヨツト試して御覧なさい。(答へは下欄)




最上段左カラ

九六〇〇形式:此れを見掛け無い地方はマズ無いと謂つて宜しかろうと思います。我國初の國産貨物用量産機です。
C五一形式:我國の大型旅客機關車の礎を為した優秀機です。嘗ては特別急行「燕」を牽引して東海道を上下してゐました。
一九九五〇形式:D五〇形式の設計を本にして造られた急勾配線用貨物機關車です。走行装置を二組持ってゐます。此れをマレイ型と称します。



二段目左カラ

D五一形式(芋虫型):D五〇形式の後継として現在も生産されて居り、全國至る処で目に出來ます。
八六二〇形式:上の九六〇〇形式と共に記念すべき我國初の國産旅客用量産機關車です。
C五三形式:C五一形式に變つて東海道に顕れた大型旅客機關車です。普通はニ気筒ですが、この機關車は三組の気筒を持ってゐますから力があります。



三段目左カラ

C五五形式:C五一形式の後継機として製造された中型旅客用機關車です。登場時は流線型カヴアを附けていました。
C六〇形式:C五三形式の後継機として製造された大型旅客用機關車です。獨特な流線型カヴアは米国の著名デザイナー、ロウイ氏の設計です。
C一一形式:制式タンク機關車のホオプ。都市近郊の省線で快速列車を牽いて活躍してゐます。



四段目左カラ

C五六形式:C一二形式の兄さんとも謂うべき機關車です。C一二形式がタンク式機關車であるのに對してこれは炭水車を繋げてゐますから、線路の弱い長距離路線で活躍してゐます。
C五四形式:C五一形式の改良型です。落着いた日本の蒸氣機關車らしいデザインは、本形式から始まりました。東北線で急行を牽いてゐます。
C五九形式:小型旅客用旅客用蒸氣機關車。八六二〇形式の後を継いで全國の地方線で活躍してゐます。



五段目左カラ

一九二〇〇形式:九六〇〇形式の兄さんに当り、動輪が五軸もあるデカポツト型の機關車は我國唯一のものです。大變力がありますから主に北海道で石炭列車を牽いてゐます。
C五七形式:幹線用の輕量旅客用機關車です。現在では地方の重要線で急行等を牽引してゐます。
D五〇形式:九六〇〇形式の跡継ぎとして製造された強力な貨物用機關車です。現在でも全國至る処で活躍してゐます。



六段目左カラ

C五八形式:九六〇〇形式と八六二〇形式の長所を併せ持つ万能選手。都會の近郊で區間列車を牽いてゐます。
四一一〇形式:奥羽線の急勾配で使用する為に製造された大型タンク機關車です。太いボイラや低い煙突等は、正に力強い恰好です。
D五二形式:D五一形式よりヤヤ小振の貨物用機關車です。小型なので地方の小さな轉車臺にも載せる事が出來ます。各地の準幹線や地方線で主に貨物列車を牽いてゐます。
C一二形式:C五六形式の弟に当たる小さなタンク機關車です。軽い機關車ですから地方の簡易線までも入って行く事が出來ます。