久しぶりに仕事を忘れ、厳寒の陸越に行って来ました。
ビジネスに明け暮れ、生活に追いまくられた15年の間に、何時の間にか 趣味の対象であった者共はその姿を変えていました。

それでもそれはそこにありました。それはそれでよしです。



fig.1 村上駅


平成15年01月01日。
村上から陸越西線に入って寒河江を目指す事とします。「えっさい線(地 元、特に山形県では陸羽西線と区別する為にこう称しています)」の殆どの列 車は701系の亜流車で運転されていますが、僅かに越後朝日までの区間列車に キハ40系や58系を使用しており、バラエティを添えています。

fig.2 村上駅


平成15年01月01日。
不思議なことにキハ40系は殆ど乗車した記憶がありません。何故ならば、 旧型客車が走っていればそれがファーストコール、50系客車であればそれがセ カンドコール、気動車しか走っていなくても、編成中に55系や58系が連結され ていれば、それがサードコールになっていたからです。
40系は思いの他静かで、平坦線では素晴らしい加速を見せてくれました。 今更ですけど。

fig.3 村上駅


平成15年01月01日。
越西線キハ47の車内から、羽越線のキハ110を見る。
キハ110の評価は、これまで乗車する機会が無かっただけに未知数でした。 しかしこの後乗って見た感じでは、車内は明るく綺麗で、随所に気遣いが感じ られる造作になっていたのが印象に残ります。開放的な運転台周りも、昔の気 動車を彷彿とさせて良し。一度乗って好きになる車両は滅 多にありませんが、意外に良い車両だと思いました。今更ですけど。
ただタバコが吸えねぇのが…(だから止めろっつってんだろ)。

fig.4 寒河江駅


平成15年01月01日。
越西線と寒河江線のジャンクション、寒河江。山形−左沢を結ぶ「寒河江 線」も奇妙な路線で、山形−羽前高松は交流電化され越西線村上方面へ直通し ています。寒河江−左沢間は非電化のまま残され、山形のキハ110が単行で往復 しています。この110は越西線村山−寒河江間(「もがみロマンチックライン」 と「愛称」されてるんだってよ!)と共通運用で、小牛田区の「芭蕉ライン色」 の111等と手を組んで小牛田まで顔を出すこともあるようです。対向の701はこ れまで乗ってきた「快速山形行き」。

fig.5 一瞬の名画


平成15年01月01日。
これはカラーです、とお断りしないと白黒写真と間違いそうな、モノトー ンの冬景色。その「もがみ何とかライン」の中で、最も優れた車窓風景です。 かつて隙間風の差し込むオハ61の車窓から眺めた冬景色と同じ、胸 に迫る眺望でした。変ってしまうのは人の営為。この眺めはちょっとだけ昔、 毛皮を身に纏ったビジネスマン達がこの川原に集合して鹿の肉や団栗と魚や貝 を交換していた時代から変わる事はないのでしょう。

fig.6 村山(旧楯岡)


平成15年01月01日。
山形新幹線の延伸に伴ってなのかどうか判らないのですが、かつての「楯 岡」は「村山」と名前を変えていました。真中に標軌の奥羽線が横切っている 為に陸越東線(これも地元では陸羽東線と区別する「えっとう線」と称してい る。「田園と森のふれあいライン」と言う愛称もある。ケッ)の発着ホームが 本屋側から反対側に移され、3、4番線が越西線と共用されています。
以前、越東線、越西線のC58やC11が躯を休めていた矩形庫の主は、その後 キハ17からキハ58、40と変化し、今や110が気持ち良さそうにのたくっていま す。

fig.7 加美宮崎駅


平成15年01月01日。
殆どの列車が交換する越東線の要衝、加美宮崎。かつては農産物や木材の 積み出しの為に幾本もの留置線や積降線が存在し、早朝には仙台へ直通するD E牽引の客車列車も設定されていたのですが、現在では島式ホームに上下線の みの寂しい線路配置。無人駅と化しています。

fig.8 対向列車接近


平成15年01月01日。
まぁ、世間的には非常に良い事なんでしょう。うん、そうだ良い事に決ま っている。そんな訳で交換待ちの三分の間に列車から飛び降り、タバコの一気 吸い。目が回る感覚。指先に回って行くヤニ。一瞬の至福。白髪頭のシ ニア鉄も下車してライターをカチカチ。目が合う。苦笑い。
「お互い暮しにくい世の中に…」
「なりましたねぇ」

fig.9 薬莱駅


平成15年01月01日。
越東線のサミット、鍋越峠の裾、薬莱。付近に人家は見えず、当然無人駅 でした。昔鍋越を行くDE重連の貨物列車を撮ろうと何度か下車した覚えがあ ります。その頃から薄ら寂しい駅でしたが、今ではヨ5000の待合室すら姿を消 し、サバサバして却って気持ち良い位何もない駅と化していました。

fig.10 鍋越に挑む


平成15年01月01日。
良く晴れた麗らかな正月の空。風もないのでコートも不要。暖かさすら覚 える上天気。晴れ晴れした気分で列車を待ちます。勾配を駆け上って来るキハ の早いの何の。こっちは昔のキハ23や40の積もりで構えている訳ですから、シ ャッターがとても追いつかない。マゴマゴしているとキハにホーンを鳴らされ ちまったよ。

fig.11 早い、早い


平成15年01月01日。
どうもローカル線に対する認識を改めなければならないようです。私の中 のローカル線とは、キハがせいぜい3〜40キロでズリズリ走っていく行くイメ ージだったのですが…。
それにしても、良い絵が撮れました。

fig.12 行っちゃった


平成15年01月01日。
走り去る。
一陣の風が山から吹き下ろして来て飛雪を巻き上げました。げにや静謐な 元日の山間。良い正月でした。