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数学日記
生徒の質問でもないのに,質問日記に書き込むのは違うかな. 数学小話に書き込むのは手間がかかるし...

ということで,分けました.



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No11(2018.12.25) No10 に関連して,同僚が見つけてきたのがこれである. 不連続な和分と連続な積分が関係していて美しい.

\[ \sum_{k=1}^nk^m = S_m(n) \] とおくとき,$S_m(n)$は多項式関数$S_m(x)$に一意に拡張でき, \[ S_{m+1}(n) = (m+1)\int_0^nS_m(x)dx + B_{m+1}n\;(m\in\mathbb N) \] が成り立つ.ただし,$B_m$は$S_m(1)=1$から帰納的に決まる定数. ベルヌーイ数である.

$S_m(n)$を和分で表しておき, \[ k(k+1)\cdots(k+p)\cdot k \] \[ =k(k+1)\cdots(k+p+1-(p+1)) \] \[ =k(k+1)\cdots(k+p+1) - (p+1)k(k+1)\cdots(k+p) \] これらの和は,和分の一次結合となるので,$m+1$の多項式になる.

したがって,非負整数$m$に関する$m+1$次関数$S_m(x)$があり,$S_m(n)$の拡張になっている.

一般に,2つの多項式関数$f(x),g(x)$が無限に多くの値$x_1,x_2,\cdots$に対して$f(x_i)=g(x_i)$が成り立つとすると $n$次方程式$f(x)-g(x)=0$は無限に多くの解をもつことになり,方程式ではなく,恒等式となる.

このことに注意しよう. \[ S_{m+1}(n) - S_{m+1}(n-1) = n^{m+1} \] であるから, \[ S_{m+1}(x) - S_{m+1}(x-1) = x^{m+1}\cdots(1) \] 両辺を$x$で微分して \[ {S_{m+1}}'(x) - {S_{m+1}}'(x-1) = (m+1)x^m \] \[ \sum_{k=1}^n\{{S_{m+1}}'(k) - {S_{m+1}}'(k-1)\} = \sum_{k=1}^n(m+1)k^m \] \[ {S_{m+1}}'(n) - {S_{m+1}}'(0) = (m+1)S_m(n) \] \[ {S_{m+1}}'(x) - B_{m+1} = (m+1)S_m(x) \] \[ \int_0^n\{{S_{m+1}}'(x) - B_{m+1}\}\;dx = (m+1)\int_0^nS_m(x)\;dx \] \[ {S_{m+1}}(n) - {S_{m+1}}(0) - B_{m+1}n = (m+1)\int_0^nS_m(x)\;dx \] (1)より,$S_{m+1}(1) - S_{m+1}(0) = 1^{m+1}$であるから,$S_{m+1}(0) = 1 - 1 = 0$ \[ {S_{m+1}}(n) = B_{m+1}n + (m+1)\int_0^nS_m(x)\;dx \] $n=1$とすると, \[ B_{m+1} = S_{m+1}(1) - (m+1)\int_0^1S_m(x)\;dx =1 - (m+1)\int_0^1S_m(x)\;dx \] により,$B_{m+1}$が帰納的に定まる.

No10(2018.12.24) \[ \sum_{k=1}^n(k^5+k^7) \] を因数分解して表せ,という問題があって, 最初は \[ \sum_{k=1}^nk(k+1)\cdots(k+p) = \dfrac{1}{p+1}n(n+1)(n+2)\cdots(n+p+1) \] を使って計算していましたが,結果が分かると簡単にできることに気づきました.

\[ \sum_{k=1}^n(k^7+k^5) = \dfrac{n^4(n+1)^4}{8}\text{ を示せ.} \]

\[ k^4(k+1)^4 - (k-1)^4k^4 \] \[ =k^4\{(k^4+4k^3+6k^2+4k+1) - (k^4-4k^3+6k^2-4k+1)\} \] \[ =k^4\{8k^3+8k\} =8(k^7+k^5) \] $k=1,2,\cdots,n$として足すと, \[ \sum_{k=1}^n(k^5+k^7) = \dfrac{n^4(n+1)^4}{8} \] この主張は,$\sum k^3=(\sum k)^2$の拡張に見えるので, 他の拡張ができないか,考えてみましたが,綺麗なものはないようですね.

No9(2018.09.25) 下の問題を一度に証明する. 生徒の定期考査の解答にあったものです.

一般の自然数$n$についても一発で証明できます.

$x>0$のとき \[ e^x > 1+x+\dfrac x2+\dfrac{x^2}{3!} \] が成り立つことを示せ.

$f(x)=\log e^x - \log\left( 1+x+\dfrac{x^2}2 + \dfrac{x^3}{3!} \right)$とおく. \[ f'(x)=1 - \dfrac{1 - x - \dfrac{x^2}{2!}}{ 1+x+\dfrac{x^2}2 + \dfrac{x^3}{3!} } \] \[ =\dfrac{\dfrac{x^3}{3!}}{ 1+x+\dfrac{x^2}2 + \dfrac{x^3}{3!} } > 0 \] $f(x)$は$x\geq0$で連続であるから,$x\geq0$で$f(x)$は単調増加である.

$f(0)=0$であるから, \[ \log e^x > \log\left( 1+x+\dfrac{x^2}2 + \dfrac{x^3}{3!} \right) \] \[ e^x > 1+x+\dfrac{x^2}2 + \dfrac{x^3}{3!} \]

No8(2018.03.15) 教科書の中ではごまかしをされているので, 高校の範囲である程度証明できないかと,いつも思うのです.

\[ \lim_{x\to0}(1+x)^{\frac1x}=e \] なんですが,収束することを示したい.

30-1.$a_n=\left(1+\dfrac1n\right)^{n}$とおく.$\{a_n\}$は単調増加である.

$\because$二項定理から \[ \left(1+\dfrac1n\right)^n=1+_nC_1\dfrac1n+_nC_2\dfrac1{n^2}+_nC_3\dfrac1{n^3}+\cdots+_nC_n\dfrac1{n^n} \] \[ =1+\dfrac1{1!}+\dfrac{1}{2!}\left(1-\dfrac1n\right)+\dfrac{1}{3!}\left(1-\dfrac1n\right)\left(1-\dfrac2n\right)+\cdots+\dfrac{1}{n!}\left(1-\dfrac1n\right)\left(1-\dfrac2n\right)\cdots\left(1-\dfrac{(n-1)}n\right) \] $\left(1+\dfrac1{n+1}\right)^{n+1}$と$\left(1+\dfrac1n\right)^n$の第$k$項を比べると, \[ \dfrac{1}{(k-1)!}\left(1-\dfrac1{n+1}\right)\left(1-\dfrac2{n+1}\right)\cdots\left(1-\dfrac{k-2}{n+1}\right) > \dfrac{1}{(k-1)!}\left(1-\dfrac1n\right)\left(1-\dfrac2n\right)\cdots\left(1-\dfrac{k-2}n\right) \]

30-2.$\{a_n\}$は上に有界である.

$\because$ \[ a_n<1+\dfrac1{1!}+\dfrac1{2!}+\dfrac1{3!}+\cdots+\dfrac1{n!} <1+1+\dfrac12+\dfrac1{2^2}+\dfrac1{2^3}+\cdots+\dfrac1{2^{n-1}}<3 \]

30-3.上に有界な単調増加数列は収束する.(実数の連続性)

そこで,$\{a_n\}$の極限値を$e$で表す.

30-3.$n$を実数$t$に変えても同じ値に収束する.

$\because\quad n\leq t < n+1$のとき \[ (1+\dfrac1{n+1})^{n+1}\cdot(1+\dfrac1{n+1})^{-1}=(1+\dfrac1{n+1})^n<(1+\dfrac1t)^n<(1+\dfrac1t)^t \] \[ \quad < (1+\dfrac1t)^{n+1}<(1+\dfrac1n)^{n+1}=(1+\dfrac1n)^n\cdot(1+\dfrac1n) \]

30-4.$t\to+\infty$のときも同じ値に収束する.

$\because $ \[ (1+\dfrac1{-t})^{-t} = (1+\dfrac1{n-1})^{t-1}\cdot(1+\dfrac1{t-1}) \]

No7(2017.10.14) 同僚からの問題です.

\[ \Large\int_{0}^{\pi/2}\dfrac{\sin^2x\cos^2x}{(\sin^3x+\cos^3x)^2}\;dx \]

$\tan\frac x2=t$とおくと,必ず出来るはずなので, 計算してみたが,簡単ではありません.
式が対称形なので,そこに注意してばかりやっていましたが, \[ \int_0^{\pi/2}\dfrac{f(\tan x)}{\cos^2x}\;dx \] と変形することができて,計算できます.
ただし,対称性を使って,積分範囲を半分にしないと, 特異積分になってしまいますね.

No6(2017.09.18) 整数係数の方程式を解くとき,有理数解を一つ求めるために \[ \pm\dfrac{定数項の約数}{最高次の項の約数} \] をテストします.有理数解ならこの形しかないからです.

これを使って,次の証明が出来ませんか? と同僚が言っていました.

$\sqrt2$が無理数であることを示せ.

$\sqrt2$は,方程式$x^2-2=0$の解である. ここで,整数係数の有理数解は, \[ \pm\dfrac{2\text{の因数}}{x^2\text{の係数の因数}} \] と書けるので, \[ \sqrt2=\pm\dfrac{1}{1},\pm\dfrac21 \] となるが,これらは不成立なので,$\sqrt2$は有理数ではない.

認識していませんでしたが,無理数であることの別解です.

有理数解が最高次の係数と定数項の約数で書けるのは,よく使われますし, 証明することも簡単ですね.

No5(2017.05.15) 曲線は点を通ると決まる?(No74について)

放物線が,通る3点で決まることは, \[ y=ax^2+bx+c \] に$x$座標が異なる3点を通るとして, 係数が決まることから分かります.

拡張出来ないでしょうか?

2次曲線の一般形は \[ ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0 \] です. 係数の比が決まれば方程式が決まるので 自由になる係数は5個と考えられます. 点を通るごとに係数が作る線形空間の次元が1つずつ下がっていくので, 5点を通るような2次曲線は1つに決まります.

Cinderella や GeoGebra で二次曲線を描くとき5点を与えますよね.

円では,$a=c$, $b=0$ ですから,係数の次元は$4-1=3$次元なので, 3点を通る円は1つに決まります.ここでは,円が無限遠点を通るときも含みますから, 2直線になる場合も許容しています.

放物線となるのは,$D=b^2-4ac=0$のときです.

放物線を決めたいと思い,係数が作る空間の次元を0にするために, 4点を通るとした場合,2変数の2次式$D=0$と直線が交わりますが, これは重複を数えて2点で交わるので,傾いた放物線全体の中で4点を通る放物線を 求めると,2つ出てくることになります.

楕円や双曲線は係数空間の次元が下がらないので,5点必要で, したがって,曲線は1つしかありません.

No4(2017.05.13) 「放物線は3点で決まる」という常識ですが

4点を共有する放物線はあるか

当然曲げないといけませんよね.

\[ y=x^2-x-3\quad x=y^2-y-3 \] がともに4点 \[ (-1,-1)\ (3,3)\ (\sqrt3,-\sqrt3)\ (-\sqrt3,\sqrt3) \] を通ります.

No3(2017.05.13) 問題は次の通り

有理点を持たない有理数係数の2次曲線はあるか?

円$x^2+y^2=3$はどうでしょう

No2(2017.05.13) 問題は次の通り

有理数係数の2次曲線上に有理点は何個あるか

曲線上に有理点Pがあれば, Pを通る傾きが有理数の直線との交点は有理点になるから 無数に有理点がある.

No1(2017.05.13) 昔大学への数学に載っていたそうです.

円周上に3有理点があれば,無数に有理点があることを示せ.

3点が直線上になければ,この3点を通る円がただ1つ存在する. 円の一般形において,有理点の座標を代入することでできた 連立方程式から有理数係数の連立方程式が得られ, その解は有理数であるので,有理数係数の円の方程式が得られる. これから,円の中心は有理点,半径も有理数である.

中心を原点に,半径を1に変えても(平行移動と相似変換), 円周上の有理点の個数は変わらない.

単位円と有理数$t$を係数に持つ点$(-1,0)$を通る直線との交点は, 少し計算するとすべて有理点になることが分かるから (解の$x$座標の和が解と係数の関係から有理数なので交点の$x$座標も有理数) 円周上に無数の有理点が存在する.