1.窮地
それはまさに絶望的な展開であった。一斉に攻撃を開始したサヴェッジ・プレダコンズ、そして数百体のスフィアドロイド軍団の前に、シティの外にいたゴーボッツとコンストラクションフォースは為す術も無く次々と撃ち倒され、踏みしだかれていった。オライオン達が侵入した際に、シティの自動防衛システムの大半が破壊されてしまったのも、彼らの接近を容易にしてしまっていた要因となっていた。
かろうじてシティの周りに張り巡らされたフォースフィールドも、ドロイド軍団の絶え間ない一斉射撃の前に、その効力を次第に失い、そしてついには消失してしまった。それを見計らったように、巨大な恐竜モードにトランスフォームしたサヴェッジ・プレダコンズが、山肌を雪崩のごとく一斉に駆け下りてきた。その指揮を執っているのは、プレダコンズ三将軍の一人、ヴォルカノックである。
「スペースブリッジとシティには傷をつけるな!オートボットとマクシマル共は皆殺しにしろ!」
シティへの侵入を防ぐため、オライオン達マクシマルズとオートボット・レヴォリューショナリーズのメンバーは外に出て応戦したが、それまでの戦いで傷つき、エネルギーも底をついた状態では、その勢いを押し留めることは不可能であった。
「貴様らのせいだぞ!こんなことになったのは!」
飛来する鳥形ドロイドをロケットランチャーとレーザーピストルで撃ち落しつつ、ターボレイサーがオライオン・プライマルに食って掛かった。彼とオプレス・プライマルによって、二度に渡って河に落とされたターボレイサー達がようやく戻って来た時、既にファイアストリームとエクストレイラーは倒れ、シティはプレダコンズとドロイド軍団によって包囲された後であったのだ。
「何言ってやがる!元はと言えば、お前らがこんな叛乱なんか起こしたせいだろうが!」
オライオンの横にいたアイスブレイカーが反論した。それには答えず、ターボレイサーは独り言のように呻いた。
「・・・・・・司令官には分かっていたんだ。奴らの正体がな。だからこそ、密かに奴らを出し抜く手を打っていたというのに、貴様達が邪魔をしたおかげで、この有様だ!」
「奴らを出し抜く手だと?どういうことだ!」
オライオンの質問に、ターボレイサーは首を振った。
「それを知っていたのは司令官とエクストレイラーだけさ。だがその二人がやられちまった以上、もうどうすることも出来ない。俺達は皆、ここで全滅するしかないんだ!」
そこまで言った途端、背中から銃撃を受け、ターボレイサーは地面に倒れ込んだ。サヴェッジ・プレダコンズで唯一飛行可能な始祖鳥にトランスフォームする空中爆撃兵エアダイバーが、左右の翼端に装備された速射型レーザーガンで機銃掃射をかけてきたのだ。
悠々と飛び去るエアダイバー目掛け、エスコートとヘビーアームが銃撃を行ったが、別方向から鉄球のような大型の球体がいくつも投下され、二人はまともにその直撃を受けて昏倒した。投下された球体はトランスフォームし、それぞれ人型と四足獣型のドロイドへと姿を変えた。
「こ、こいつら、トランスフォームまでするのかよ!」
ギャロップが叫んだ。鳥型、四足獣形、そして人型の三種類のスフィアドロイド達は、いずれも球形に変形し、自ら転がるか、あるいは鳥型ドロイドに運ばれるかして移動する。外堀からシティへ通じる橋は全て引き込まれており、地上からの敵の侵入は防げるが、飛行能力を持つ敵に対しては全く無防備であった。
「た、隊長、あれを!」
シャーピアーズの叫んだ方を振り向いたオライオンは、思わず我が目を疑った。正面ゲート側の対岸に球体となったドロイド軍団が磁石のように寄り集まり、一つの巨大な物体を形成しつつあったのだ。それは次第に細長い板状の形となって、崖の方からシティの方へと伸びていた。
「なるほど、橋になって味方を渡らせる訳か・・・・・・やるなあ」
見とれている様子のサンドクローラーを、アイスブレイカーが怒鳴りつけた。
「感心してる場合か、バカ野郎!このままじゃあの恐竜どもが乗り込んでくるぞ!」
「その通りだ、全員、正面ゲートに回れ!奴らを入れさせるな!」
オライオンの命令の下、アイスブレイカー達訓練生、そしてレヴォリューショナリーズで唯一健在なレイルライダーズはゲートの方へと走り出した。しかし、一足先に乗り込んできたドロイド軍団が立ち塞がり、容易には進めなかった。ドロイド一体一体の戦闘力はそれほど高いわけではない。しかし、それが数百体もいれば話は別である。一体を破壊している間に、他の数体が同時に襲ってくれば、手の打ちようがない。
「くそっ、東京の時より性質が悪いぜ!」
ハンドランチャーを連射しつつ、アイスブレイカーが叫んだ。
「こんな時にあの優等生がいりゃあ、楽なのによ。どこで油売ってやがんだ?」
新宿駅でファニーボットの大群に囲まれたときのことを思い出し、シャーピアーズはぼやいた。無論、彼らは知りようが無い。中央コントロールルームへ向かおうとしていたロングヘッドとクロックワイズが、その途中で見えない敵に襲われ、倒されてしまったことを。
「もう駄目だ!僕らみんなここで全滅しちまうんだ!!」
数百ものドロイドに包囲され、フラットビルが涙声で叫んだ。
「こんなことになるなら、司令官に付いてくんじゃなかった!だから僕は本当は反対だったのに・・・」
そんな彼の横っ面を不意に殴りつけた者がいた。ラピッドゲイルである。
「今更泣き言を言うな!我々はオートボット全員を敵にまわす覚悟で事に臨んだのだ。これしきのドロイドどもが何だ!!・・・そんな暇があったら、目の前の敵を叩くことに集中しろ!!」
地面にへたり込んだフラットビルを横目で見ながら怒鳴りつけるラピッドゲイルの傍らで、シールド付きランチャーを発射しつつ、シルバーブリットがいつもの調子で軽口を叩いた。
「そう言うこった。せいぜい一匹でも多く道連れにしてやろうぜ」
しかしながら、彼もまた圧倒的不利な状況に、かすかに顔を曇らせ、小声で呟いた。
「せめて合体出来りゃあ、もう少し楽だったのにねえ・・・」
マクシマル訓練生達との戦いで、彼らレイルライダーズの合体ジョイントが破損したために、合体してトリプレックスになることが出来なくなってしまっていたのである。だからといって、ここで戦いを放棄するようなラピッドゲイルではなかった。
「立て!強行突破するぞ。12時の方向に火力を集中!!」
フラットビルの手をとって引き起こすと、指定の方向にいるドロイド数体を銃火器の一斉発射で吹き飛ばし、彼らは前進を開始した。その途中、ラピッドゲイルは心の中で一つの疑問を口にした。
「それにしても奴等、これだけのドロイドを一体どこから手に入れたのだ?見たところ地球製のようだが・・・」
ラピッドゲイルの推察通り、彼等スフィアドロイドはビーストウォーズの最中、地球人の手によって造られたものであった。名目上はオートボッツならびにマクシマルズの支援用に開発されたものであったが、実はその裏には、戦乱に紛れて自国の領土拡大と資源の独占を目論む中国政府の思惑が絡んでいた。しかもその技術には、あるプレダコンとの裏取引によって流出したものが使われていたのである。
しかし数週間前に先行型の大量生産が終了した直後、一夜にしてドロイド群は忽然と姿を消し、後には瓦礫の山と化した工場と、大量の失業者が残された。
国どころか地球そのものを売り渡すような行為への後ろめたさから、その事件が公にされることは無く、単なる爆発事故として公表され、今この時までドロイドの行方は分からずじまいになっていた。そして彼らが取引をしていた相手こそ、かのヘクサトロンだったのである。
オライオンはマクシマルズの先頭に立ち、スピニングシールドでドロイドの攻撃を防ぎつつ、ロケットランチャーとブレードで行く手のドロイドを破壊して突破口を開こうとしていた。だが、その背後の上空から接近しつつある影には気が付かなかった。
「た、隊長、後ろ後ろ!」
シャーピアーズが警告した時には既に遅く、オライオンの体は背後から舞い降りたその影に捕えられ、上空高く持ち上げられていた。鋭い爪が両肩に食い込み、苦痛に顔を歪ませながら、オライオンはその相手の方に振り返った。
「お前は・・・・・・ドラゴナス?」
彼を捕えていたのはドラゴン型のクリーチャーモードにトランスフォームしたドラゴナスであった。その両脚でオライオンを抱えたまま、ドラゴナスはシティ東側のフライトデッキの上まで来ると、オライオンの体を離した。
ビーストモードにトランスフォームして着地したオライオンの前で、ドラゴナスもまたデッキに降り立ち、ロボットモードにトランスフォームした。
「フン、それが今の貴様のビーストモードか」
そのドラゴナスに対して、再びロボットモードに戻りながらオライオンは言い返した。
「そう言うお前は、未だにアップグレードしていないようだな」
一見トランスメタル・プレダコンに見えるドラゴナスであるが、そのボディには生体部分は一切無い。彼は純粋なクリーチャータイプのディセプティコンなのである。
かつて彼はガンマUを支配下に置いていたディセプティコンズのリーダーであったが、オライオンとの一騎討ちに破れ、行方不明となっていたのであった。「フン、あんな生臭いビーストになど、誰がなるものか!アップグレードなどせずとも、貴様など一捻りにしてくれるわ!」
彼のように、ディセプティコンズにもビーストモードを忌み嫌う者も少なからず存在する。かつてのセカンドウォーの時にも、彼はプレダコンをその配下に加えることは無かった。
「ガンマUでもお前はそう言っていたな・・・・・・そして敗れ去った」
オライオンの言葉に、ドラゴナスは歯をむいて怒りを露にした。
「黙れい!今こそあの時の借りを返してくれる!」
そして彼は両肘に装備されたバトルアックスを引き抜き、構えた。
「まさかこの星に貴様が来ていたとはな。奴らと手を組んだ甲斐があったというものだ」
眼下でドロイド軍団相手に悪戦苦闘している訓練生達の姿を見、オライオンはドラゴナスに向き直った。
「お前の相手をしている暇など無い。彼らを援護せねばならんのだ!」
「いいや、相手をしてもらうぞ。ついでにこいつらともな」
「何?」
「出でよ、サイバービースト部隊!」
ドラゴナスの声と共に、オライオンの周囲に四つの影が現れた。一体は真下の河の中から、一体は上空から、そして残り二体は崖を駆け上ってやってきた。集まって来た四体のビーストはオライオンの周りを取り囲み、ぐるぐると回り出した。
「こいつら・・・・・・トランスメタル2か?」
彼ら四体のビーストは、その生体部分と機械部分が半分ずつ混ざり合ったボディを持っており、確かにその姿はトランスメタル2に似ていたが、彼らのように有機外皮の下から機械部分が露出しているのではなく、むしろ外皮の上に機械部品を不規則に貼り付けたように見える。
やがて彼らはオライオンを囲んだままロボットモードにトランスフォームした。その姿もまた、ビーストモード同様に機械類を全身に貼り付けたようなグロテスクなものであった。無論、オライオンが彼らを見るのは初めてであったが、そのスパークから発せられるエナジー・シグニチャーには覚えがあった。
「メイルストローム!グレイハウンド!スティンガー!それにラプチャーか!」
名前を言い当てられ、彼らサイバービーストはニヤニヤと笑いを浮かべた。その中で、メイルストロームと呼ばれた、サイバネティックシャークからトランスフォームしたプレダコンが機械的なエコーを帯びた声で答えた。
「ソノ通リ。貴様ヘノ復讐ノタメ、我々ハ蘇ッタノダ。サイバービーストトシテナ」
彼らサイバービーストは元々、ドラゴナス直属の航空部隊として活躍していたディセプティコンであった。セカンドウォーの際、オライオン配下のマクシマル部隊によって彼らは倒され、ドラゴナス共々崩壊する要塞と運命を共にしたものと思われていた。しかし、彼らの元のボディは破壊されたものの、そのスパークを収めたパーソナリティコンポーネントは無傷であり、密かに脱出したドラゴナスは彼らのコンポーネントを回収し、地球へと逃れていたのであった。
その地球では、メガトロンがトランスメタル2を生み出すにあたって、様々なプロトタイプを作り出していた。その一つがサイバービーストである。ロボットに生物のDNAを掛け合わせるのではなく、クローン生物にサイボーグ手術を施してロボットにするというコンセプトで誕生した彼らであったが、結局のところその試みは破棄され、そのボディも廃棄処分となっていた。
メガトロンが捕らえられ、地球を去ったのと入れ替わりに潜入したドラゴナスは、偶然その廃棄されたボディを見つけ、部下達のスパークを移植した上で再起動させたのであった。
「なるほど、新しいボディを手に入れて、プレダコンとなったわけか・・・・・・それにしても、随分と醜い姿になったものだな」
オライオンの言葉に、サイバービースト達の表情が一変した。彼ら自身も多少それを気にしていたようである。
「ダッ、黙レ!今度ハ貴様ガスクラップニナル番ダ!」
メイルストロームの、潜水艦のスクリューに似た形状の左腕から竜巻のような衝撃波が発射され、オライオンを直撃した。床に倒れた彼の頭上から、ドラゴナスの嘲り笑う声が覆いかぶさった。
「無様よのう、オライオン。だがすぐには殺さんぞ・・・・・・お前達、存分にいたぶってやれい!」
残忍な笑みを浮かべ、歓喜の声を上げながら、サイバービースト達は起き上がろうとするオライオンの四方から一斉に襲い掛かってきた。
一方、オプレス・プライマルはシティの反対側で、一人でドロイド軍団を相手にしていた。その全身から発射されるマイクロミサイルとプラズマキャノンによって、一度に数十体のドローンが破壊されるものの、一瞬後にはそれ以上の数のドロイド達が彼の周囲に集まってくるのである。スパークを持たない彼らには、当然恐怖心も無く、仲間がどれだけ破壊されようともお構いなしに前進してくるのみである。
「くそっ、全くきりがねえぜ!」
バトルクラブで接近して来たドロイドを蹴散らしつつ、オプレスは歯噛みした。ワンロボットアーミーと呼ばれる自分ですら手こずっているのだから、オライオンや訓練生共は尚更だろうな・・・そう思ったその時、頭上から二発のミサイルが飛んできた。
咄嗟にジャンプして身をかわしたオプレスの下で爆発が起こり、数体のドロイドが巻き込まれて破壊されたが、オプレスも、当のドロイド達も一切気にはしていなかった。
オライオンのいる方とは反対側のフライトデッキに飛び移ったオプレスの前に、一人のプレダコンが待ち構えていた。
「てめえか、さっきのミサイルは!」
オプレスの問いかけに、そのプレダコンは左腕のシールドを掲げて見せた。その裏側に、先ほど発射されたものと同じミサイルが二発装備されている。反対側のデッキでドラゴナスと対峙しているオライオンの姿をチラリと見て、オプレスは続けた。
「確かヴォルカノックとか言ったな。てめえが俺の相手ってわけか」
ヴォルカノックと呼ばれたプレダコンはニヤリと笑って答えた。
「そうだ。貴様らネオマクシマルより、我々の作ったサヴェッジ・プレダコンズの方が優秀であることを証明してくれるわ!」
「サヴェッジ・プレダコンズねえ・・・・・・大昔の恐竜なんぞ蘇らせて、テーマパークでも作ろうってのかよ?」
自分自身のビーストモードも大昔の生物であることを棚に上げ、オプレスは軽口を叩いた。
「恐竜こそ、この地球で最強の生物。そのパワーと獰猛さを持った我々に比べれば、牙持たぬネオマクシマルズなど恐れるに足りぬわ!」
ヴォルカノックの言葉は、ある意味真実を付いていた。マンモスであるオプレスを除けば、ネオマクシマルズの面々はおよそ獰猛さという言葉とは程遠い動物達ばかりである。唯一猛毒のコブラとなるサンドクローラーも、その見かけとは裏腹に、性格は温厚そのものであった。
「まあそうかも知れんな・・・・・・だが、結局恐竜は滅び、哺乳類に取って代わられたんだぜ?」
「そんな運命まで共有するつもりは無い。今日ここで滅亡するのは貴様らだ!」
そしてヴォルカノックは剣を構えた。
「面白え。タイマン勝負に負けたことは一度も・・・・・・ぐっ!」
言いかけて、オプレスは急によろめいた。エクスストリームとの戦いで受けたダメージがまだ回復していなかったのである。破損した箇所から火花が散り、思わず片膝を付いてしまっていた。
「大分調子が悪そうだな。だが容赦はせんぞ!」
剣を構えるヴォルカノックに対し、再び立ち上がりながらオプレスもまたバトルクラブを構えた。
「ヘッ、てめえら相手にゃ、これぐらいが丁度いいハンデってもんだ!」
「その減らず口、今すぐ利けなくしてくれる!」
言うが早いか、ヴォルカノックは剣を大上段に振りかざして迫ってきた。その一撃を左のクラブで防ぎ、素早くオプレスは右のクラブを突き込んだ。しかしその攻撃もまた、ヴォルカノックのシールドに防がれてしまった。
そのシールドの先端に取り付けられたクローが展開し、オプレスの首を引きちぎろうと迫ってきた。オプレスは身をかがめてそれをかわし、がら空きになったボディに再びバトルクラブを突き立てた。
「もらった!」
しかし、ヴォルカノックの胸に突き刺さったかに見えたクラブは、完全に押さえ込まれ、押すことも引くことも出来なかった。彼の胸部中央にある翼竜の頭部が口を開き、クラブに噛み付いていたのである。
「この野郎、離しやがれ!」
残った左のクラブを振り下ろすよりも先に、ヴォルカノックの蹴りがボディにヒットし、オプレスは弾き飛ばされてしまった。全身の痛みをこらえつつ立ち上がったオプレスであったが、右腕のクラブは根元から折られてしまっていた。
「・・・・・・やるじゃねえか。だったらこれならどうだ!」
オプレスはマンモスにトランスフォームし、ヴォルカノックへと突進した。両方の牙は折れたままであったが、そのボディの重量とスピードをもってすれば、相手のボディを粉砕するのは可能なはずであった。だが相手は避ける素振りも防ぐ様子も見せず、ただ棒立ちのままでオプレスの突進を待ち構えていた。
「なめやがって、食らえ!」
オプレスの巨体がヴォルカノックに激突し、彼のボディはばらばらになって砕け散った・・・かに見えた。だが、その手ごたえは無く、激突する直前にヴォルカノックは自ら分解してしまっていた。
「何い?どうなってやがる?」
うろたえるオプレスの目前で、ばらばらになったヴォルカノックのボディは形を変え、三体の古代ビーストとなって現れた。
「てめえ、コンバイナーか?」
オプレスの問いに、三体の内、ケツァルコアトルス型の翼竜、イジェクタが答えた。
「それは少し違うな。我々は元々一つの存在なのだ」
かつて、彼は三種類のビーストで構成されたフューザーであり、プレダコンズにおいてあまり重要視されることの無いポジション―科学者として働いていた。メガトロンが誕生させたトランスメタル2の存在を知った彼は、奇しくもサイバートロン評議会がネオマクシマルズを作り出したのと同じ意図で、サヴェッジ・プレダコンズを創造した。
そして自らもまた最強のサヴェッジ・プレダコンにならんとして、メガトロンが溶岩に落ちてドラゴンへと生まれ変わったことに倣い、改造処置を施した自分自身のボディを火山の噴火口へと投げ入れた。その結果、彼のボディは大幅な変化を遂げ、より強く、より大型化したボディを得ることに成功したのである。その時彼のビーストモードのみならず、スパークもまた三つに分裂し、一つの体に三つの意志を持つこととなった。
以来、自らの名をヴォルカノックと改めた彼は、メガトロンに代わって地球を支配せんと、その野望を剥き出しにし始めたのであった。
「そうか・・・デュオコンならぬ、トリオコンってわけか。それで一人称が『我々』って訳か」
今度はギガノトザウルス型の恐竜、アースクエイクが答えた。
「そうだ。我々は一人で三体。三体で一つの存在。故に死角は存在せぬ!」
続いてエラスモサウルス型の海竜、ラヴァが口を開いた。
「貴様は一対一と言ったが、実際は三対一というわけだ。満身傷付き、エネルギーも底をついた貴様など、敵ではない!」
「ああ、そうかよ!」
ロボットモードに戻り、オプレスは問いかけた。
「じゃあ聞くが、てめえらの中で一番強いのはどいつだ?まずそいつから片付けてやる!」
その問いに、三体のビーストはほぼ同時に答えた。
「我だ!」
「我だ!」
「我だ!」
一瞬の気まずい沈黙の後、三体は言い争いを始めた。
「馬鹿を言うな!空を飛べる我が一番に決まっておろうが!」
「何を言うか!パワーでは我が上だ!そんなちっぽけななりで何が出来る!」
「ふざけるな!我のスピードこそ一番だ!」
「水中でしか力を発揮できぬ貴様など何ほどのものか!引っ込んでおれ!」
この時彼らは完全にオプレスの存在を忘れていた。そしてその隙を見逃す彼ではなかった。
「くだらねえ喧嘩してんじゃねえ!」
横合いから回し蹴りを食らい、三体は将棋倒しになって転がった。
「自分自身でさえ仲良く出来ねえとは、ホントにどうしようもねえ奴らだぜ」
しかし、オプレスのその言葉は、彼らの怒りを再び自分自身に向ける結果となった。
「なめた真似をしおって!その体、喰いちぎってくれる!」
「粉々に噛み砕いてやるわ!」
「いや、絞め殺してやる!」
三体のビーストが一斉に襲い掛かり、オプレスの体に食いついた。イジェクタが彼の腕に、アースクエイクが胴体に噛み付き、そしてラヴァの長い首が首に巻きついて締め上げた。
「うおおおお!」
オプレスが苦悶の声を上げた。軽口を叩いてはみたものの、実際には彼の全身はひどく傷つき、その攻撃を振りほどく力は残されていなかったのである。
「さっきまでの威勢はどうした?早く振りほどかんと、バラバラになるぞ!」
首を締め付けるラヴァの声が頭に響き、次第にオプレスの意識が薄れていった。
オライオンとオプレスが苦戦を強いられている間に、スフィアドロイドの群れによって作られた橋は完成し、恐竜モードのサヴェッジ・プレダコンズがなだれ込んできた。その先頭にいるのは、トリケラトプスにトランスフォームする突撃兵ホーンヘッドである。
「奴らを一匹残らず踏み潰せ!」
野太い声で怒鳴りつつ、ホーンヘッドは正面ゲートのスロープ目指して一直線に突進してきた。それを迎え撃とうと、ようやくドロイド軍団を突破してきたマクシマル訓練生達とレイルライダーズが彼らの前に躍り出た。
「奴らを中に入れるなよ!撃てー!」
「マクシマル共に後れをとるな!攻撃開始!」
ギャロップとラピッドゲイルの号令とともに、彼らの銃火器が一斉に火を噴いた。しかし、サヴェッジ・プレダコンズの重装甲化された外皮はそれをことごとくはじき返し、その巨体による突進を押し留めることは出来なかった。
そして今までの戦いで疲れ、傷付き、更に強力なリーダーを欠いた彼らに、サヴェッジ・プレダコンズに抵抗する力は残されていなかった。もはやそれは戦闘ではなく、一方的な虐殺と言うべき状況へとなっていた・・・・・・
凄惨な殺戮の場と化したオートボットシティを高台から見下ろし、満足げに微笑む者がいた。三将軍の一人、ヘクサトロンである。
「素晴らしい!かつてこれほどまでに美しいシンフォニーを聴いたことが今まであっただろうか!」
その人差し指をオーケストラの指揮者が持つタクトのように振りながら、ヘクサトロンは恍惚の笑みを浮かべていた。
「恐怖・・・絶望・・・苦痛・・・そして断末魔の叫び・・・これほど全ての調べが完璧な調和をもって混然一体となった音楽は無い。これこそ私が長年待ち望んだ瞬間なのだ・・・・・・」
そしてヘクサトロンは、エクスストリームが沈んでいった河を見下ろした。
「我が宿敵ファイアストリームよ。お前の志はこの私が継いでやろう・・・・・・もっとも、私が作り上げるのは、プレダコンズのみが存在を許される世界だがな。冷たい水の底から、この世の行く末を見届けるが良い!」
高笑いを上げ、ヘクサトロンは次に上空を見上げた。
「さて・・・・・・あと一時間足らずでサイバートロンが軌道に乗る。その前に、シティのコントロールを手中にしておかねばな」
そう言うと、ヘクサトロンは背中の翼を広げ、シティの中央タワーへと飛び立った。
オライオンは、地に倒れることすら出来なかった。彼の前後左右から、四人のサイバービーストが交互に攻撃を仕掛けてくるためであった。
「コノ程度デ俺達ノ気ガ済ムト思ウナヨ!」
サイバネティックドッグにトランスフォームするグレイハウンドが、シールドに装備されたピンチャークローをオライオンのボディに突き立てた。
「俺達ノ味ワッタ苦痛、何倍ニモシテ返シテヤル!」
サイバネティックビーのスティンガーが、両翼のジャイロからソニックブラストを発し、彼の金属外皮に亀裂を入れた。
「タップリ苦シンデ死ニヤガレ!」
サイバネティックラプターであるラプチャーのロータリーブレードが、ひび割れた装甲板を剥ぎ取っていった。
そしてメイルストロームのソードが背中を切りつけ、その痛みにオライオンは仰け反った。
攻撃を受け、倒れそうになる度に、その方向にいるサイバービーストが攻撃をし、彼が地面に倒れることを許さなかった。残った片方のクローも既に折られ、ロケットランチャーも全て破壊されており、オライオンには反撃する武器も手段も無かった。
「ようし、もういいだろう」
それまで離れて見ていたドラゴナスが声を上げ、サイバービースト達は攻撃の手を止めた。彼らから解放され、その場に力無く膝を付いたオライオンの前に、ドラゴナスが進み出た。
「何てざまだ、オライオン・プライマル・・・・・・これがかつて我々を苦しめた奴の姿とはな」
そう言いながら、ドラゴナスは片手でオライオンの首を掴み、その体を高々と持ち上げた。
「だが真の地獄はこれからだ。この日のために、俺は屈辱に耐え、あのいけ好かないヘクサトロンやヴォルカノック達プレダコン共の中で暮らしてきたのだからな・・・・・・だが、貴様さえ始末すれば、奴らも用済み。この俺がサイバートロンを支配してやる!」
それまで一言も発せずにいたオライオンが、急に口を開いた。
「・・・・・・奴らにとっては、むしろお前の方が用済みじゃないのか?」
「何だとぉ!」
逆上し、彼の首を締め上げようとしたドラゴナスの顔が苦痛に歪んだ。辛うじて動いたオライオンのスピニングシールドが、回転鋸となってドラゴナスの胸板を切り裂いたのだった。その痛みに思わず手を離してしまい、オライオンの体は地面に落ちた。
「おのれ、悪あがきしおって!」
怒りを全身に漲らせ、ドラゴナスはもう一つの形態―ドリルタンクモードにトランスフォームした。そのボディの半分近くを占める巨大なドリルが唸りを上げて高速回転し、その矛先をオライオンへと向けた。
「死ねい!」
キャタピラが火花を散らし、ドリルタンクモードのドラゴナスが急発進した。しかしオライオンはビーストモードになり、そのドリルを寸前でかわした。そのまま彼はドラゴナスの横をすり抜け、フライトデッキの奥にある格納庫へと走り出した。
「者ども!奴を逃がすな!」
ドラゴナスの怒声で、それまで呆気にとられて事態を見ていたサイバービースト達は我に返り、慌ててビーストモードにトランスフォームしてオライオンの後を追った。
「野郎、逃ガスカ!」
「無駄ナ抵抗ハ止セ!」
口々に叫びながら、サイバービースト達はオライオンの背後から銃火器を乱射した。ふらつく足取りできわどくそれらをかわしつつ、オライオンは一段高いデッキに駆け上り、一番奥の防護壁の前で立ち止まった。
「手間取ラセヤガッテ!」
「往生際ガ悪イゾ、オライオン!」
しかし、迫り来るサイバービースト達を無視するように、オライオンは壁のパネルを開き、何かを操作した。その様子を部下達の後方から見ていたドラゴナスが、突然何かに気付き、叫んだ。
「い、いかん!お前達、戻れ!すぐそこから離れろ!」
「ハア?」
思いがけない命令にサイバービースト達が戸惑っている間に、オライオンは防護壁を飛び越え、奥へと逃れた。ともかくその場を離れようとしたメイルストローム達であったが、突然足が動かなくなった。
「ナ、何ダ?足ガ離レナイ?」
「オ、俺モダ。ドウナッテンダ?」
離れないのは足だけではなかった。足元から発生した磁力が更に強くなり、その大部分が機械化されている四人のサイバービーストの体は完全に床に張り付いてしまった。
「ウ、動ケナイ・・・・・・」
そして彼らを張り付かせたまま、デッキが動き出し、高速で滑り出した。彼らが立っていたのは宇宙船用のカタパルトで、オライオンが操作していたのは船体固定用の磁力固定装置だったのである。
ドラゴンモードで跳び上がったドラゴナスの足元をかすめ、四人を乗せたカタパルトは猛スピードでスライドしていった。そして終端に来た瞬間、磁力はカットされ、サイバービースト達は一気にシティの外へ放り出された。
シティを包囲するドロイド軍団の頭上を跳び越し、戒厳令以来遠巻きにシティを包囲していた地球人の軍隊とマスコミの取材陣をも飛び越え、サイバービースト達の姿ははるか遠くの空に消えていった。
「ぬうう、不甲斐無い奴らめ!」
フライトデッキに取り残され、歯軋りするドラゴナスの後ろから、オライオンが声をかけた。
「相変わらず、部下には恵まれないようだな」
「オライオン、貴様ァ!」
「奴らが戻ってくるには時間がかかりそうだぞ。どうする?」
皮肉っぽい口調に怒りが頂点に達したかに見えたドラゴナスであったが、突然その顔に笑みが浮かんだ。
「それで有利になったつもりか?奴らなどおらずとも、貴様に止めを刺すなど、造作もないことよ!」
そしてドラゴンの口から、猛烈な炎が噴き出した。炎はオライオンの足元をよぎり、彼の周囲に炎の壁を作り出した。
「くっ、スピニングシールド!」
スピニングシールドを回転させて炎を吹き飛ばそうとしたが、先程の攻撃で故障したのか、シールドは全く動こうとしなかった。焦るオライオンを嘲笑うように、ドラゴナスの声が響いてきた。
「どうだ、地獄の業火は。熱かろう?」
両手で炎を防ぎつつ、オライオンは言い返した。
「この程度の炎が地獄なものか!ましてお前の攻撃など!」
「ぬかしおったな!」
炎の中からドラゴンモードのドラゴナスが現れ、その牙をオライオンに突き立てようと迫ってきた。かろうじてそれをかわしたものの、すかさず尻尾が鞭のようにしなり、オライオンの体を横殴りに吹き飛ばした。
再びフライトデッキの終端部まで飛ばされ、オライオンの体は甲板上を転がった。身を起こし、ふとデッキの淵から中央ゲートの方を見下ろしたオライオンは、その眼下の光景に息を呑んだ。
「そ・・・・・・そんな・・・・・・お前達!」
ゲートに至るスロープの前の広場は、惨たらしい有様となっていた。ビーストモードとなったサヴェッジ・プレダコンズの足元で、訓練生達とレヴォリューショナリーズが一人残らず大破した姿で横たわっていたのである。
鋭い角に貫かれ、鉤爪に引き裂かれ、そして強靭な足に踏みしだかれ、彼らは全て、戦闘はおろか身動きすらできないほどに痛めつけられていた。それでもまだ飽き足りないのか、サヴェッジ・プレダコンズは倒れている彼らの体を尚も尻尾で鞭打ち、前足で蹴り続けていた。
「やめろー!これ以上は許さ・・・・・・!」
彼らの元に飛び降りようとしたオライオンの背中を激痛が襲った。背後からドラゴナスの投げたアックスが突き刺さったのである。
「こらこら、どこへ行く気だ?貴様の相手はこの俺様だと言っただろう?」
この上も無く残忍な笑みを浮かべ、ドラゴナスはゆっくりとオライオンの方へ歩いてきた。
「心配するな。貴様もすぐに、可愛い教え子たちの所へ送ってやるわ!」
「グオオッ!」
反対側のデッキで苦悶の声が上がった。しかし声の主はオプレスではなかった。彼の腰に備え付けられたガトリングガンが火を噴き、彼の胴体にかじりついていたアースクエイクに直撃したのである。奇妙なことに、全くダメージを受けていないはずのラヴァとイジェクタまでもが、同様に苦痛に悶え、同時に彼の体から離れていった。
(あぁ?どうなってんだ?)
意識を失う寸前にようやく反撃に成功したオプレスは、彼らの反応に気がついた。訝しげな表情のオプレスの前で、三体は寄り集まった。
「くっ、無駄な足掻きをしおって!」
「ならば、我らのもう一つの姿、見せてくれる!」
口々に言うと、三体は再びトランスフォームし、合体し始めた。しかしその姿はロボットのそれではなかった。
「な、何だこりゃあ?」
思わず漏らしたオプレスの前に現れたのは、三体のビーストが合わさったフューザーモンスターであった。ヴォルカノックのビーストモードとも言うべき姿である。
「驚いたか!我らの姿に!」
我に返って、オプレスは身構えた。
「ああ、あまりの不細工加減にな!」
「ほざくな!」
ヴォルカノックの口が開き、火山弾のようなエネルギー弾が発射された。至近距離から直撃を受け、たまらずオプレスは床に倒れた。
「くっ・・・・・・今のは効いたぜ」
そう言いながらも、起き上がりざまにプラズマキャノンを放とうとしたオプレスであったが、目の前にいたはずのヴォルカノックの姿は忽然と消えていた。
「野郎、どこ行きやがった?」
辺りを見回すオプレスの頭上から、声が響いた。
「こっちだ、愚か者め!」
見上げると、背中の翼を羽ばたかせ、巨体を舞い上がらせたヴォルカノックがまっすぐ降下してくるところであった。その四本の足で蹴りつけられ、オプレスの体が宙を舞った。だが、その体が地に落ちる寸前、ビーストモードの尻尾となっていた海竜の首が再びその首に巻きつき、彼はヴォルカノックに引き摺られる形でフライトデッキの上を滑った。
「こ、この・・・・・・放しやがれ!」
全身を擦られ、火花を散らしながらオプレスの体はデッキの上を引き摺り回され、やがて正面ゲートの前に放り出された。体中から煙を上げつつ、オプレスは上半身を起こし、周囲を見渡した。
「こ、これは・・・・・・!」
彼の目の前には、半ば無残な残骸と化したマクシマル訓練生達とレヴォリューショナリーズ、そして彼らに執拗な攻撃を続けているサヴェッジ・プレダコンズの姿であった。新しい獲物が投げ込まれたのに気付いたプレダコンズが一斉にこちらを向き、舌なめずりをしながら近寄ってきた。
「てめえら・・・・・・よくもやってくれやがったな・・・・・・」
オプレスの全身を怒りが駆け巡った。しかし、体中に受けたダメージのために、もはやプラズマキャノンを持ち上げる力すら無かった。
(オライオンは?あいつはどうなったんだ?)
オプレスが、自分のいたのと反対側のフライトデッキを見上げたまさにその時、そのデッキからオライオンが弾き飛ばされるのが見えた。
「オライオン!」
満身創痍となり、おびただしい量の破片と部品を撒き散らしながら、オライオンの体はゆっくりと宙を舞い、そして地面に落ちて転がった。
満足に動かない足を引き摺るように、オプレスは倒れたまま動かないオライオンの元へ急いだ。ファイアストリームに敗れたときと同じか、それ以上に痛めつけられたオライオンの姿は正視に耐えうるものではなかったが、生命機能まではまだ失われてはいなかった。
「よ、よう・・・・・・お互いこっぴどくやられたもんだなあ・・・・・・」
呼びかけるオプレスの姿に気付き、オライオンは苦しい息をつきながらも苦笑して見せた。
「や・・・・・・やはりお前の言った通りだったな・・・・・・私は指揮官失格だ・・・・・・部下達を守り切れず・・・・・・お前のことも・・・・・・」
「な、何言ってやがる!まだ終わったと決まったわけじゃねえ!」
自分と同様に傷だらけの姿でもなお、オプレスの目に絶望の色は無かった。この状況でなおそう言い切れる彼を、オライオンは羨ましいとさえ思った。
「相変わらず、自信過剰だな・・・・・・それがお前の長所でもあり、短所でもあるんだが・・・・・・」
「そうじゃねえ!まだ奥の手は残っている!・・・・・・一か八かの賭けだがな」
その言葉に、消えかけていたオライオンの目の光が再び灯った。
「奥の手だと・・・・・・一体、どういう意味だ?」
その問いに、オプレスは自分の胸のスパーククリスタルを指差した。
「俺があいつらと同じ、ネオマクシマルとやらだってことは知ってるだろ?よくは知らねえが、俺達にゃ特別なパワーがあるって話じゃねえか」
「ああ、聞いている・・・・・・だが、まだそれがどんなものかは実証されてはいないんだぞ・・・・・・」
アイスブレイカー達の訓練をしていた間、オライオンは彼らのボディに秘められていると言われるパワーが発現するか調べていた。しかし、トランスメタルズやメガビースト級に与えられているのと同じ第三形態を持っている以外に、彼らに際立った能力が見られることは無かった。
「だったら今ここで実証してやろうじゃねえか。まあ見てな・・・・・・」
オライオン達が話している間に、サヴェッジ・プレダコンズは彼らの間近まで迫っていた。彼らだけではなく、ドラゴナスとヴォルカノックもまた、彼らを追って降りてきていた。
「別れの挨拶は済んだか、オライオン・プライマル?」
ドラゴナスに続いて、ロボットモードに再合体したヴォルカノックが部下達に命令を下した。
「最後の仕上げだ。そいつらを喰らい尽くせ!」
その命令を待ちわびていたかのように、サヴェッジ・プレダコンズは大口を開け、一斉に二人に飛び掛った。その様は、獲物に喰らいつくピラニアの群れにも似ていた。そして二人の姿は瞬く間に恐竜達に覆い尽くされ、見えなくなっていった。