……あなたにとって、『命』はどれほどの重さを持ちますか。







































「佳彦!! 佳彦ッ!!!」
 双原佳彦(ふたはら よしひこ)の遺体を前に、とある病院内の一室で、母親の祥子(しょうこ)が泣き叫んでいた。
 父親の則徒(のりただ)は悲しみを必死にこらえるように目頭を押さえ、沈痛な面持ちで遺体となった息子を見ていた。





















 夜のニュースはこう報じる。
「今日午前10時前後頃、××県OO町で少年が倒れているのが見つかりました。少年は重傷を負っていて、発見した人により通報されてすぐ病院に運ばれましたが、間も無く死亡しました。遺留品などから死亡した少年は双原佳彦さん16歳であるということが判明しました。少年の身体にはあちこちを何度も殴られたような痣があり、警察はこの少年が暴行を受けて死に至ったものと断定しました。警察は傷害致死による殺人事件と見て、捜査を進めています―――――」



 双原夫婦は呆然としつつ、そのニュースを見ていた。
「なんで……佳彦が……」
 祥子は涙目になりながら、微かな声でそう呟いた。
「……祥子。今、私たちに出来ることは、犯人が捕まる事を祈るだけだ。祈ろう」
 そう言いつつも、則徒はそれが空しい行為でしかない事を知っていた。それでも、彼らは祈るしかなかった。











 数日後。

 犯人逮捕のニュースが流れる。



「では、次のニュースです。□月△日に××県OO町で起きた、双原佳彦さん16歳が殺害された事件で、警察は今日、犯人と思われる3人の少年を逮捕しました。逮捕されたのは日隅武(ひずみ たけし)容疑者(17)と、阿賀野寛也(あがの ひろなり)容疑者(17)と、桑川仁(くわかわ ひとし)容疑者(17)の3人です。警察が現場周辺を捜査したところ指紋が見つかり、その指紋が容疑者のものと一致したため、これをもとに容疑者に詰め寄ったところ、犯行を認めたため、警察は今日、この3人を逮捕しました。なお、現在警察は日隅容疑者の取調べを進めていて、彼らは犯行の動機については、『被害者の顔を見たときになんとなく腹が立ったからやった』と供述しており、被害者とは何のつながりも無かったと供述しているということです。警察はしばらくは取調べを進める方針です……」







「何……だと…………・!?」
 報じられたニュースに、双原夫婦の怒りを激しく煽る部分があった。
 犯人が供述したとされる、犯行の動機である。

 『被害者の顔を見たときに何となく腹が立った』

「……そんな……そんな理由で佳彦は……」
 祥子は言葉を最後までつづる事が出来ず、その場で泣き崩れた。
 則徒はおそらく犯人にぶつけたいであろう激しい怒りを胸に、両手の拳を固く握りこんだ。

























 一方、犯人逮捕のニュースが流れた少し前、容疑者が取調べを受けている時。
 この事件にて容疑者の取調べを担当した刑事、笠畑盛一(かさはた せいいち)は、あまりに激しい胃の痛みに腹のあたりを押さえながら、取調べを続けていた。
 それというのも、取調べ相手の日隅容疑者の態度が、自分が人殺しをしたという自覚が全く感じられないほど悪いのである。
「なぁ、刑事さん。いつになったらこの殺風景な部屋から出してくれるワケ?」
「貴様……人1人殺しておいて、なんだその態度はッ!!!!!!」
 容疑者の発言に、笠畑は怒りで何度となく激しく叫んだが、日隅は意に介した様子は無かった。
「叫ぶなよ、うるせーから。質問には答えてやってんじゃねぇか」
「くっ……!!!」
 ひょっとすると取調べの最中に自分は胃痛で倒れるかもしれないと思いながら、なんとか怒りを静めて笠畑は取調べを続けた。
「質問を続ける。なぜ君は今回の犯行に及んだ?」
 冷静な口調だった。最もそれは笠畑にしてみれば表面上のことだったが。
「ケッ、随分と幼稚な事聞きやがる」
「……何だと!?」
 また笠畑の胃がズキリと痛んだ。
「アイツの顔見たら、なんかムカついたんだよ」
 笠畑にしてみれば衝撃的な答えを―――笠畑に限らず、普通の人間なら誰もが衝撃的に感じるであろう答えを―――日隅はさも答えるのが面倒とでも言うように答えた。
 これでも必死に怒りの感情を抑えていた笠畑だったが、とうとう爆発した。
「ふざけるな!!!! そんな理由でお前は人を殺したのかァ!!!!!!!!!!!!」
 笠畑は日隅に掴みかかっていたが、周りの刑事になだめられてどうにか落ち着きを取り戻した。―――最も、笠畑をなだめた周りの刑事達も、本心は笠畑と同じ気持ちであっただろうが。
 笠畑は後に思った。今日ほど気分を悪くさせられた日はこれまでにもこれからにもないだろう、と。





















 犯人逮捕のニュースが流れた3日後。この日の夕方、笠畑刑事は双原家を訪れた。彼のこの行動は、容疑者の取調べを終えてすぐのことである。





 インターホンが鳴る。

「はい……?」
 玄関のドアを開けて、祥子が出てきた。彼女は笠畑の顔を見て首を傾げる。
「あの……どちらさまでしょうか?」
「こういう者です」
 笠畑はそう言って、祥子に自分の警察手帳を提示した。
「あなた達に、事件の容疑者の事でお話があるのです。私個人としては、あなた方の心境を聞きたいという意図もありますが」
 笠畑がそう言うと、祥子は、
「……わかりました。お入りください」
 笠畑刑事をリビングに通した。









「さて、話というのは、もちろん事件のことです。私は昨日、容疑者の取調べを終えたばかりです」
 笠畑刑事はそう言って話を切り出し、それから取り調べの様子を曇りなく語った。



「……そんな……」
 話を聞き終えた時、則徒、祥子の2人は、ともに呆然とした。
 取調べの現場を見ていない2人にも、笠畑刑事の話で容易に理解できたことが1つ。容疑者は犯行を認めてはいるものの、刑事が語ったあまりにも横柄な態度から、反省の色が全く見られなかった、ということ。
「……そんな奴に……佳彦は殺されたって言うんですか……!?」
 則徒はショックのあまりか、少ない気力を振り絞ったようなひどくかすれた声で、そう言った。
「私もね、今までに何人、何十人と、いろんな容疑者の取り調べを担当してきましたがね、今回ほど気分を悪くさせられるような例はなかったですよ。いえ、おそらくあれ以上のものは今後ありえません」
 笠畑は苦々しく言う。
「私でさえそうなのですから、あなた方の怒りは相当なものではないかと思ったのでね、このことはあなた方にも話しておくべきだと、私は思ったわけです」

「刑事さん。どうにか、犯人を極刑には……いえ、極刑なんて言い方も生ぬるい、犯人を死刑にはできないんですか!!?」
 則徒は叫んだ。彼の心の中にはもはや怒りという感情しかなく、話しながら笠畑刑事の肩を揺さぶっていた。
 笠畑はその則徒の手をゆっくりと下ろし、それから言う。
「お気持ちはわかります。しかし残念ですが、おそらくあの容疑者が犯人と断定され、裁判で有罪判決が下ったとしても、あなた方の望むような極刑は下る事はないでしょうな」
 刑事の言葉は、3度、双原夫婦をうちのめす。
「どうして!? 殺人を犯して反省の色も無いような連中に、どうして死刑宣告が出来ないんですか!!?」
 祥子が泣き叫ぶ。笠畑刑事はその姿に哀れみを覚えつつ――どうしても哀れまずに居られないほど、哀れな様子だった――言葉を続ける。

「今回の容疑者は未成年です。よって、『少年法』が適用されます。我々が極刑を与えたくとも、出来ないのですよ」







 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科し、
 無期刑をもつて処断すべきときは、十年以上十五年以下において、懲役又は禁錮を科する。
 ―――――少年法、第五十一条より。

 少年のとき懲役又は禁錮の言渡を受けた者には、次の期間を経過した後、仮出獄を許すことができる。
 一 無期刑については七年
 二 第五十一条の規定により言い渡した有期の刑については三年
 三 第五十二条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑については、その刑の短期の三分の一
 ―――――少年法、第五十八条より。









「……そんなもののせいで……」
「我々も、法には逆らえんのですよ。―――あなた方には申し訳ありませんが」
 笠畑は慰めの言葉をかけたが、それも虚しく、双原夫婦は力をなくしたように、ソファに身をうずめた。
 以後、笠畑は幾度か声をかけたが、2人からの返事はなかった。
「……私は、これで失礼します。容疑者の起訴が決まりましたら、お伝えにあがりますので」
 笠畑刑事は丁寧な辞儀をし、双原家を去った。



 意気消沈する双原夫婦の様子に、笠畑刑事はある不安を抱えていた。
「(……あの2人は精神バランスがかなり危ういものになっているな。おそらく犯人を殺してやると思っていても不思議ではないな)」
 そう思い、ため息を1つつく。
「(……だがもしあの2人がそう決意したとしたら、残念だが私には止められないだろうな。……今回の事件があまりにも理不尽なものだけに)」
 せめて思うだけにしてくれればよいのだが、と笠畑刑事は願った。







 ちなみにこの日の夜になって、双原夫婦はテレビ局から取材を受けたのだが、対応したのは則徒だけだった。
 祥子はショックのあまり、体調を崩してしまったらしい。
「息子さんが殺されたと知った時は、どう思いましたか?」
「……呆然としました。そして、犯人を憎みました」
「どういう息子さんだったんでしょうか?」
「……真面目で、思いやりのある子でした。あの子の気遣いに、私達夫婦も何度となく救われた覚えがあります」
「犯人逮捕のニュースについては……」
「最初は喜びました。しかし、供述したとされる動機を知った時には、再び怒りで胸が一杯になりました。……正直、殺してやりたいです」
 『殺してやりたい』というのは、則徒の、本当に真正直な気持ちだった。

 この時則徒は、取材を受ける直前に刑事と接触していた事は話さなかった。



























 拘置所にて。
「なぁ、いつんなったら出してくれるワケ?」
 日隅はけだるそうにぼやいた。
「……お前、自分のした事がわかっているのか?」
 見張りの刑事の声だけが返ってくる。日隅は拘置された部屋の奥で寝そべっているため、言葉を返した刑事が腹を押さえていることに気付かなかった。
「あーあー、うっせうっせ。俺の質問に答えろっての。なあ、いつんなったら出してくれんだよ?」
「お前は書類送検された後、おそらくは起訴されるだろうな。その後に有罪判決を受けて、お前は少年院行きだ」
 刑事の口調は、そうあることを確信しているようだった。が、日隅は意に介さない。
「んなこと聞いてねぇっての。質問にも答えらんねぇのかよ、バカじゃねぇの」
「…………!!」
 怒りに我を忘れそうになるが、刑事はそこをどうにかこらえていた。同時に自分の後ろにいる男を、その刑事は恐ろしくも感じた。
 なぜ、これほどまでに自身の犯した罪の重さを、自覚していないのか。それが、この17歳の少年が恐ろしく在る理由だったのかもしれない。







































 笠畑刑事が再び双原家を訪れたのは、最初の訪問から1週間後のことだった。刑事は、夫婦に2枚の傍聴券を渡しただけで、会話も無く去っていった。
「……あなた、どうするの?」
 祥子は、わかりきったことを、あえて夫に訊ねてみた。
「……行くに決まってるだろう。行って犯人に怒声の1つでも浴びせてやらなければ、佳彦に申し訳が立たない」
「・・・そうね。私も同じ気持ちよ」
 2人はもはや、一人息子を殺した犯人への憎悪に突き動かされているようなものだった。
 2人は、裁判の日を待った。































 やがて、日隅武被告の初公判の日。
 傍聴席には、当然のように双原夫婦の姿があり、その傍らには笠畑刑事の姿もあった。
 傍聴人は双原夫婦のほかにも多数おり、法廷内はざわざわと騒がしい様子だった。

 やがて、後ろに2人ほどの見張りをつけられた状態で、日隅被告は法廷に入って来た。

 この時、双原夫婦は日隅被告の顔を、間近で、初めて見た。
 被告人の顔は、ひどくけだるそうで、ひどくつまらなさそうだった。『めんどくせぇよ、早く出してくれよ』と言いたそうにしている顔だった。
 この時双原夫婦の胸には怒りが込み上げたが、それを察した笠畑刑事は2人が叫びださんとする様を静かに制した。

「静粛に!」
 裁判官の声がかかる。

「これより、双原佳彦殺害事件における裁判を開廷する」

「被告人は何故、双原佳彦君を殺害したのか、その意図を述べよ」
 裁判官が問う。ソレに対して日隅被告は答える。
「顔を見たらうざったい感じがなんとなくしました」
 理由に関しては、わかっていたことだった。だが、日隅被告の質問の答える時の態度は、あまりにも横柄だった。これが、双原夫婦の怒りを煽る。
「お前、ふざけるな!!! ウチの大切な1人息子を軽々しく殺しておいて、何だその態度はッ!!!!!!」
「傍聴人は静粛に!」
 思わず則徒は怒鳴っていたが、裁判官に注意されて黙る。しかしその時、日隅被告は則徒をちらりと見た。この時の目が、夫婦には「うるさい」と言われたように思え、また耐えがたいものだった。
「では、検事側より、意見をどうぞ」
 裁判官が促し、検事が席を立つ。
「被告人は今回の事件において阿賀野寛也容疑者、桑川仁容疑者と共謀し、双原佳彦原告の殺害に及んだ。動機は本人たちも供述した通り、『被害者の顔を見て何となく腹が立った』などという、極めて不純なものであるため、被告人を有罪とし、極刑を課すべきである。以上です」
 検事は述べ終えて、着席する。
「では、弁護側より、意見をどうぞ」
 今度は弁護士が席を立つ。
「被告人はまだ未成年であるがゆえ、今回の犯行がどれだけ重罪であるかが認識できなかったものと見られる。とくに彼は、自らの危機管理の面が未熟であるがゆえに、このような犯行に及んでもほとんど自覚がないものとみられる。よって、更生の余地はあるものと見られる。以上です」
 弁護士は述べ終えて、着席する。
 弁護側が述べた意見というのが妙にちぐはぐに感じられる事に、この法廷内に居る全員が気付いていた。おそらく弁護側も、どういう弁護をすればいいものか、相当苦慮したものと見られる。
 ただ、日隅被告だけは、それを気にした様子はなかった。

「判決を下す」
 裁判官がそう口にした。廷内は静まり、異様な静寂に包まれる。
「日隅武被告に、無期懲役の有罪判決を下す」
 日隅被告には、与えうる限りの最高の刑が下された。だがこの様子にも、日隅被告は動じなかった。
 一方、双原夫婦は。
「なんで死刑にしてくれないんですか!!! 私達と佳彦の無念は、この男が死んでくれない限り晴らされやしません!!!!」
 判決が下された直後、叫びだしていた。
「傍聴人、静粛に!!! 静かにしないと退廷させますよ!!」
「抑えてください……無期懲役はあの被告に与えられる、最大の刑なのです……」
 裁判官に厳重注意され、笠畑刑事になだめられ、どうにか双原夫婦は落ち着いた。しかし、すすり泣きが止む事はなかった。
「では、これを以って閉廷とする」
 裁判官のその声で、裁判は終わりを告げた。













 その日の夜、双原家にて。
 則徒も祥子も、酷く肩を落としていた。
「……あなた方には、やはり無情だったようですな」
 笠畑刑事が声をかけた。彼は付き添いとして今この双原家に居る。
「……刑事さんの前でこういうことを言うのも、大いに問題があると思うのですが」
「……なんですかな?」
 笠畑は聞いてみた。が、則徒がこれからなにを言おうとしているかは、容易に想像がついた。
「私は、あの男が許せません。私達の息子の命を軽々しく奪い、反省の色も無くのうのうと生きていこうとしているあの男が、許せません」
「……それで?」
「……あの男が出所して来て、そして道端ですれ違いでもした時……私は、あの男を殺すでしょう」
 やはり、と笠畑は思った。同じ立場ならおそらく自分もそう思っているだろうと、笠畑は思った。
「……忠告をしておきます」
 笠畑は『忠告』をしようと思った。おそらく自分にこの夫婦の憎悪を止める事はできないだろうと思った。ゆえに彼は忠告するだけにとどめた。
「もしあなた方が殺人を犯せば、我々警察はあなた方を逮捕しなければなりません。……その覚悟はおありですね?」
「……はい。息子の仇を討てるなら、地獄に落ちても構いません」
 則徒の言葉に、笠畑刑事はこの夫婦の決意の固さを知った。
「……私はこれで失礼します。あなた方の発言は私の心の中にのみとどめておきますので」
 そう言い、笠畑刑事はソファからゆっくりと立ち上がった。
「……申し訳ありません」
「なに、あなた方の気持ちは私もわからなくはないのでね。では」
 笠畑刑事は双原家を後にした。











































「……憎悪が巡る……悲しい事だな」
 笠畑刑事はそう呟き、ため息を洩らした。





































































 それから7年後。
 少年法に従い、日隅武が仮出獄を果たしたころ。
 彼は、自分が犯した罪を忘れていた。仮出獄も、「あーやっと外に出られたなー」程度にしか考えていなかった。
 彼は、ようやく束縛から逃れた、と思っていた。



































 その日隅の様子を見て、憎悪を燃やす男がいた。
 男はこの7年、毎日日隅を待ち伏せていた。
 男は日隅の顔を少しも忘れなかった。
 男は身元を悟られないよう、黒いズボンに黒いジャケット、黒い帽子に黒いサングラス、そして白いマスクで、全身を覆っていた。
 そのような身なりで、男はこの7年、春夏秋冬、雨の日も風の日も、太陽が照りつける日も、日隅を待ち伏せつづけた。
 それほど、男の憎悪は激しく燃えていた。



















 男は、7年前から狂ってしまっていた。







































「ん〜〜〜〜〜…………」
 日隅が、7年のけだるさを振り払うかのように背伸びをした、その時。







「ウアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
 包丁を持った男が、日隅の死角から跳び出した。

 日隅が気付いた時には、もう遅かった。











「が……あぁぁ……・」
 男にとって息子の仇以外の何者でもない男、日隅武は、胸の部分を真っ赤に染め、あっけなく倒れた。
 男は日隅を刺した包丁を握った血みどろの両手を見つめ、動かなかった。













































「今日午前6時前後頃、××県OO町にある少年院の入口付近で、仮出獄を果たしたばかりの男性が刺殺されるという事件がありました。刺されたのは日隅武さん(24)で、少年院の警備員により通報されてすぐに病院に運ばれましたが、間も無く死亡しました。日隅さん殺害の容疑で逮捕されたのは、双原則徒容疑者(51)で、同じく警備員の通報により駆けつけた警察によって逮捕されました。殺害された日隅さんは7年前、双原容疑者の息子を暴行して殺害したとして無期懲役の有罪判決が下されており、警察はこの事件との容疑者の動機の関連性を追及して捜査する方針です――――」





















































 罪がある。





 罪は、ある者に憎悪を与える。





 その者は憎悪を以って、罪に罰を与える。





 罰を与えし者にも、罪が舞い降りる。







































 そうして、罪が巡り、憎悪が巡り、罰が巡り、そしてまた罪が巡り―――。













 繰り返される。





















 …………どこかでそのループが終わりを告げても、またどこかで始まる。





























 ……なくならない。終わらない。










































 注)文中にて述べられている少年法は、改正前のものです。

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